第5話ピンクドレス

 次の日、『おおおお』とドクター・ジェシカの研究所から雄叫びが聞こえて来たので、ハンチング帽にフォントルロイスーツというチグハグな純粋ボーイ、ギアは彼女がまた帝国兵の嫌がらせを受けていると思い、ぶっぱしってハンチングを落とすほどスピードをあげた。

 しかし、研究所に、かけこんで見ると、思わずギアも『おおおお』と叫んだ。

 あの謎の少女ナナが綺麗なピンク色のドレスを着ている、しかも今流行りの半分パニエ(鯨の骨などで作られたドレスの形を膨らませる道具)を着ていた。鯨の骨組みが見えるこれが流行っているのだ。

 そしてナナは死人も出したとまことしなやかに噂される恐怖のギュウギュウオサレ道具、コルセットをしている、ドクター・ジェシカはそれを見て蒸気機関車のような、動きをしてポッポッーと天井に向かってブレスをはいている。



 数時間前の事である。

 ギアがまだこの研究所に来る前の時間にこんな会話がなされていた。

 ドクター・ジェシカの研究所に住む事になったナナは、メイドのスチームロイドのマリアとふざけあう姿を不思議そうに眺めていた。

 マリアが一人になった所を見計らってトトトとマリアに歩みよった。

 「あなたは機械なのにどうして人間の方と気軽にお話できるのですか?」

 ちょっと失礼な言い方だがなにしろずっと閉じ込められていたナナはこのような言い方しかできずにいた。

 マリアはナナから話しかけられたのは初めてなのでびっくりした。

 くりくりの右目をむけて首を傾げる。

 マリアはニコリと笑った。

 「ジェシカが私を人間の友達のように接してくれる、私もそんなジェシカが好きだから友達として接しています」

 ナナはホーと息をはいた。

 そしてある事を思い出し、マリアに打ち明ける。

 「私も、あの……あの男の子とあんな風に接してみたいです」

 「ギアさんの事ですか?」

 突然の発言にビックリの連続のマリア。

 「どうしてギアさんなのですか? ジェシカではなく」

 えっと自分でも何故にギアと仲良くしたいか分からなくなり下を向いた。

 コトリっと音がしたのでそちらに目をやるとこっそり立ち聞きしていたドクター・ジェシカであった。

 あのピンクのドレス、マリアに着させて楽しもうとしていたドレスを持ってニヤニヤを浮かべていた。ニヤニヤ。

 それに着替えたナナを見て、『おおおお』っと声をあげタイミングよく現れたのがギアだった。


  ★

 「そっそれでナナをどうするんですか?」

 ギアがそう言うと、ジェシカは当たり前だというように「お主とナナのでぇとに決まっておるではないか」



 

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