メンインブラック
あれは忘れもしない、高3の夏の出来事だ。
塾からの帰り道、夜空で何かが光ったんだ。
「流れ星か? 志望校合格志望校合格志望校合格…」
でもよく見たら、違うなあ…。燃え尽きる気配がない。
「UFO?」
光の挙動はまさにそれだ。飛行機やヘリコプターではない。間違いない。異星人とコンタクトする日がついに来たのか。
俺はガラケーで写真を何枚も撮影した。気付けば何枚も撮っていたよ。
今ここでその写真を見せることができないのが悔やまれる。
何故か? それは次の日の昼、駅前のファーストフード店に行った時のことだ。俺がいつもの席に座ろうとしたら、既に占拠されていた。仕方なく他の席にしようとしたら、呼び止められた。
「確かホネタニリュウトだったな?」
男は黒いスーツに身を包み、サングラスをかけ、黒いネクタイに靴…。ワイシャツは白だったが、それ以外全て黒。
こんなヤツ、知人にいないぞ? だが俺は一応、頭を下げてそうだと言った。
「君は見てはいけないものを見た」
「はぁ?」
何の話してるんだこの輩は?
「昨日午後10時22分。君は夜空を見上げたが、三日月しかみなかった。違うか?」
昨日の夜のことか…。思い当たることが一つだけあった。
「もしかして、ゆー…」
俺が途中で止めたのは、男が懐に手を突っ込んだからだ。そこから取り出すのは、ハンカチか拳銃か…?
「誰かにしゃべったかね?」
俺は首を横に振る。
「記録には残しただろう?」
逆らわない方が身のためだと俺は直感した。
俺はガラケーをポケットから取り出して、男の目の前で昨日撮った写真を全部削除してみせた。
「よろしい」
男の口が微かに笑った。最後に男はポケットから五百円玉を出して、
「ここのハンバーガーはデリシャス。これで食べると良い」
と言った。俺は受け取ったが、
「いりません」
と言って返却した。
「じゃあ、さらば」
男はそう言って去った。
メンインブラックは、ウィル・スミス氏が主演の映画があるから知っている人も多いと思う。実際にあそこまでハチャメチャに面白い職業かどうかは別だが。
UFOやその他、宇宙人などを目撃した後に、他の人にそれを教えていないにも関わらず、どこからとなく当事者の目の前に現れる謎の男たち。多くのケースでは2人か3人だが、俺の時は人員不足なのか、1人だった。
男たちは「誰にも言わないように」と忠告する。それを無視した場合、「殺害する」と脅迫されるらしい。また、当て逃げ事故にも巻き込んでくることがあり、その場合警察に通報しても誰も来ないんだとか。来たとしても偽者で、身分証明書を見せてくれても警察からは「該当する人物がいません」と言われるらしい。
また男たちの身に付けているものは、ワイシャツ以外は全て黒い。乗り物に乗っていることもあるが、真っ黒らしい。夏は暑くないのか…?
正体についてはよくわかってないな。アメリカの某機関、宇宙人…。流石は奥を見せない黒さだ。
映画で知った人は、記憶を消す装置が印象に残ってるかもしれないが、それを男たちが使ったという記録は実は、あまりない。アレはフィクションかもな。
それとも実在したりして…。俺も使われたけど記憶を消されたのかもね。もしかしたら、みんなも既に出会ってたりとか?
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