許されざる婚姻
高校時代に日本史の時間で、先生から聞いた話だ。
「先生の知人が結婚する時、親に猛反対されたんだよ」
聞いてもないのに話始めたぞ…。でもつまらない授業聞くよりはいいか。
「知人の女性Xがいてな、恋人Yがいた。2人はとても仲が良く、大学を卒業してすぐに結婚しようってなった。最初のうちはお互いの両親も賛成してくれていたのだ」
ならさっさと挙式すればいいじゃねえか?
「そうはいかなかったのさ」
この先生、読心術でも会得してるのか…? ならば変に考えるのは止そう。
「ところが、あるとこがわかると両親は結婚に猛反対したのだ。何かわかるかな?」
「わかりません」
どうせ心読まれるんだし、俺は口で答えた。
「Xの両親は山口県出身で、Yの両親は福島県出身だったのだよ」
それだけじゃわかりませんけど…。
「ならば、もっと詳しく解説しよう。両県は、とても仲が悪いのだ。というのも明治の初めに戦争があった」
「戊辰戦争ですね?」
「そうだ。まあ早い話、福島県は山口県にボッコボコにされて負けた。そのことを福島県民は根に持っているんだよ」
積年の恨みってヤツか。
「その通り。だから君たちも気を付けないといかんな。交際相手が山口か鹿児島出身だったら、XとYのように駆け落ちすることをお勧めしよう」
両県が戦争をしていたのは、もう150年ぐらい前の話で、歴史の教科書にも記載されている事実だ。
そんな大げさなって思うかもしれないが、ご高齢の方は意外と気にしている。
福島県と言えば会津藩の白虎隊が有名だろう。修学旅行に行くと木刀買うアレ。ここが発祥らしい。
白虎隊は青年が集められた戦闘部隊で、本来なら出動予定はなかった予備隊だったらしい。しかし困り果てた会津藩は出撃を決める。そして無念の自刃を遂げた。
さらに、白虎隊の遺体を埋葬することも当初は禁じられていたのだから、そりゃあ福島県民も怒って当たり前だ。
先祖を大切に思うことはわかる。だが、次世代にまで持ち込むのはやめてもらいたい。
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