古代の黒翅

 ちょっと聞いてくれ。さっき衝撃的な出来事があったんだ。

 俺の家に、ついにゴキブリが出現しちまった…。俺なら大丈夫って思ってたのによ…。

 その話を聞いてナオンのホムラは余裕ブッコいてたけど、いざ俺の家に上がり込んで部屋片づけを始めたら、

「い、い、いやああああああああああああああああああああああっ!」

 悲鳴だけはホムラも美人だな。そしてどうやらまた出現したらしいな。

 しかし人間、どうしてゴキブリを見るとこんなに恐怖するんだろうか?

 頭が切られても1カ月は生きていられる圧倒的な生命力。

 例え核戦争が始まっても生き残るであろう桁違いの環境適応力。

 1匹いたら100匹いるという、古代より受け継いだ並外れた繁殖能力。

 他にもあると思うが、ホムラが泣くだけなのでやめておこう。

 そんなゴキブリについてだが、こんな話がある。

 古代において、ゴキブリは1メートルを超える大きさで、人類の先祖を食べていた。今の人間がゴキブリを怖がるのはその時の名残だという。

 要はゴキブリに対する恐怖心が染色体に刻まれてるってことだ。そりゃあ、勝てないさ。


 そんな話があるワケないだろ! でも解説しよう。

 確かに太古の虫って、デカい。1番大きいのはアースロプレウラ。3メートル越えの正真正銘化け物ムカデ。次にデカいのはメガネウラ。翅を広げると70センチもあるトンボだ。オニヤンマが可愛くみえるぜ。3番目にアプソロブラッティナっていうゴキブリがランクイン。50センチあったらしい。

 海に目をやると、ウミサソリがデカい。2メートル50センチだ。

 ここまで言えばわかるだろう? ゴキブリが一メートルを超えたことはない。しかもアプソロブラッティナ、古生代の終わり頃のペルム紀に生息していたんだと。

アースロプレウラとメガネウラは石炭紀。今よりも酸素濃度が高かった時代だな。だから虫も巨大化できたんだ。

 早い話が、巨大な虫の時代は古生代で終わり。ちなみに、人類の先祖であろう原始的なホ乳類が地球上に出現したのは、三畳紀。中生代の最初だ。サルに絞れば、ティラノサウルスが歩いていた中生代の白亜紀の終わり頃。

 じゃあ50センチのアプソロブラッティナとすら出会わねえじゃん!

 蛇足だが、よく人類が滅んだらゴキブリが世界の覇権を握ると言われているが、そんな事はないよ。

 人類の滅亡プランは多めにあるけど、大きく3つに分けて紹介。

 まず、人類滅亡が環境破壊による場合。実はゴキブリの多くは森の中で暮らしている。その環境を破壊されては、生きてはいけない。都市部にいるゴキブリはどうなるか? 奴らは俺たちが出すゴミなどで暮らしているんだ。嫌でも人類と運命を共にする! こっちに来るな!

 次に、核戦争で滅亡した場合。確かにゴキブリは放射能に強い。だがな、ゴキブリよりも放射能に強い生物はいくらでもいる。よって覇権は握れないだろうな。

 最後に、火山噴火や隕石で滅亡した場合。コレ、考える必要あるか? 確かにゴキブリは生きた化石と言われるぐらい、姿を大きく変えずに地球で生活してるけど、ゴキブリが他の生物を差し置いてまで栄えた時代が存在しない時点である程度察せる。

 おまけだが、地球上で1番人を殺している生物は蚊。ウィルスを媒介する都合上そうなるんだってよ。じゃあウィルスじゃないかだと? 生物じゃないって言ったよな俺?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る