4-9 ドスケベVSドラゴン最終決戦⑧
「ラルフさん……! まずい! 早く回復魔法で治療を――!」
マリシアはラルフを抱え上げようとするが腕に力が入らない。
「くっ……! せっかく助かったのにこんな……!」
――そのとき。
幻聴だろうか。上空からラルフとマリシアの名を呼ぶ声が聞こえてきた。
「この声は……!」
空を見上げると。グルグル回転しながら跳んでくる亀と、その上で透明なキャミソールを着てあぐらをかいているピンク髪幼女の姿があった。
マリシアは自分が上半身裸であることも忘れ、全力で二人に手を振った。
「おーい!」
「ええええ!? これどういう状況!?」
さすがのジルもブラジャーをして気絶するラルフ、パンツしか履いてないから恥ずかしくないマリシア、そして少女のバラバラ死体を見て目を剥いた。
「ジルちゃん! むちゃくちゃを言って申し訳ないのですが今は気にしないでください!」
「うん分かった! 頑張れば全然気にならない!」
「さすがの適応力! さあ早くラルフさんを乗せて帰りましょう!」
「いやちょっと待て」
レッセパッセが仰向けのラルフの胸に耳を置いた。
「心臓が止まりかけている。このままでは十分とモタない」
「「ええっ!?」」
マリシアとジルが同時に驚きの声を上げる。
「そんな……!」
「ウソでしょ……ラル兄!」
「落ちつけ二人とも。ひとつだけ手がある」
二人はレッセパッセを振り返った。
「ドスケベミズギにはもうひとつだけ機能がある。と言っても通常の機能の延長、むしろ欠陥に近いのだがな」
ゴクリとツバを飲み込む音。
「こいつを三つ以上重ねて身に着けるとな。火焔耐性、というか氷結の力が強くなりすぎて、身に着けた者は冷凍睡眠状態になってしまう」
「ということは……」
「ああ。私が着ている『スケルトンキャミソール』ジルたんが来ている『タートルヘッド』そしてマリシアが着ているそれを重ねて着せる。そしてその状態で回復魔法が使えるものの所に持ち込めば。もしかしたら助かるかもしれん」
「もしかしたら……か」
「確率はわからない。だがやってみるしかあるまい」
三人は目合わせ頷き合うと準備を開始する。
「――よしこれでパンツはOK!」
「マリ姉綺麗なハダカ~。羨ましい~。いつもハダカでもいいんじゃないの?」
「そんなこと言ってる場合じゃないよ! 早く亀さん脱いで! ……って! なんでその下なんにも着てないの!?」
「少しでも涼しいほうがいいと思って」
「あとはこれを着せて……よし! OKのようだ! なんとかなりそうだ!」
「おお! これが冷凍睡眠状態! ホントにカチンコチンだ!」
「それにしてもすごい絵面――あれ!? でも待ってください! 亀さんを着せちゃったら乗り物が!」
「大丈夫! フライングダッチマンがあるから!」
「アレ嫌いなんですよねー」
「好きになって! ほら早く空気入れないと!」
――そして。
「行ってしまいましたか」
四人が去ったあとのダイワクボルケオ山頂は静寂に包まれていた。
「随分と騒がしい方たちでしたね」
ヒュウと風が吹き白い砂をラヴァの体に被せた。
「それにしても。今日だけで随分たくさんのお宝を見せて頂きました。マリシアという女が着ていたフンドシ、ラルフさんが履いていたパンツ、それにあの真っ赤な鞭。透明なキャミソールや亀みたいな鎧も美しかった。それからフライングダッチマンですか」
ラヴァの顔はククク……と弱々しく笑った。
「まだまだ。死んでしまってはもったいないですね。ラルフさん。お互いに頑張りましょう」
この祈りが届いたのかそうでもないのかはさだかではないが。
ラルフは一命を取り止め、数日後にはピンピンとその辺をほっつき歩いていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます