4-2 ドスケベVSドラゴン最終決戦②

 ――そして。

 二人はようやく辿り着いた。

 忘れもしない。この誰も見やしないのに無駄に美しく装飾された扉。

(どうしましょう? 奇襲攻撃を仕掛けますか?)

 マリシアがラルフに耳打ちする。

(いや。ヤツは前回、登って来る僕らの様子を見ていたと言っていました。今回なんか律儀に予定通り来てしまったし、見てないわけがありません。無駄でしょうから堂々と行きましょう)

 ラルフは「おはようございまーす!」などとシャウトしながらドアを蹴破った。

 二人は武器を構え部屋を見渡すが――。

「いない?」

 そこには気の狂ったような装飾の床や壁、天井の他にはなにもなかった。

「部屋間違えましたかね?」

 そんなわけないやろアホちゃいまっかと突っ込みつつ、マリシアは部屋をキョロキョロと見まわす。すると自分たちが入って来た以外にもう一つ扉があることを発見した。

「なんでしょう? この扉」

 扉を開くとそこには広大な空間。見渡す限りの宝箱が山と並べられていた。

 二人はゴクリと喉をならしつつ顔を見合わせる。そして。

「そっかー。ボルケオドラグーンはいないのかー。いないなら宝全部持って帰っちゃおうかなー。うわー。すごーい。いっぱいあるー。聖なる夜の秘宝もあったりするかなー」

 マリシアはエゲつないほどの棒読みでそのように述べた。

 なるほど。ヤツがこれを聞いているなら出てくるだろうというわけだ。

 ラルフも協力する。

「そうですねー。持てるだけ持ってかえってー。あとは全部ぶっ壊しちゃおうかなー。なんか今イライラムラムラしてるしなー」

 などと放言しながら財宝を掻きまわしてみせた。するとマリシアがラルフに耳打ちする。

(ちょっとラルフさん! ワザとらしいですよ! わたしみたいにもっとうまいこと演技してください!)

「そ、そんな! 僕だって頑張って……」

 おまえもヘタやろうがい! と言いたかったがそのような度胸もないので、床に置いてあったつづらを蹴飛ばして憂さを晴らした。

「ん?」

 すると床がズゴゴゴゴという音を立てながら震動し始めた。

「地震!? こんなときに!」

「マリシアさん。そうではないかもしれませんね」

 と先程蹴ったつづらを指さす。それには『大好きなラルフさん 僕を蹴って下さい』と書かれた羊皮紙が貼ってあった。

「罠ふんじゃった」

「ばかー」

 部屋の揺れはドンドン激しくなり、やがて凄まじい重力が二人の体にのしかかった。

「これ! もしかして!」

「上昇しているようです! 部屋そのものが!」

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