3-11 決戦前夜

 ダイワク火山は本日とみに機嫌が悪いらしく、火口からものすごい轟音をひびかせながらマグマを噴出させていた。山頂から赤黒い急流が麓に向かって流れている。

「今日は荒れてますねえ。ま、元気そうでなによりですが」

 その流れに逆らって山頂に向かっていく巨大な生き物が一体。

 巨獣は恐るべきスピードであっというまに山頂に到達した。

「ではいただきます」

 火口に首を突っ込むと、あふれでる赤いジュースをゴクゴクと喉を鳴らしながら飲み込んでゆく。噴出するマグマはあっという間に枯渇し、あたりはすっかり静かになってしまった。

 巨獣は一度大きくゲップをすると、

「いよいよ明日ですか。正装でお出迎えしないといけませんね」

 巨体に似合わぬ透き通った声でつぶやいた。

「彼を篭絡する作戦も考えつきましたし。まったく楽しみだ」

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