3-8 ついに完成最もドスケベミズギ!②
そして食事の後。
「マリシアさーん。着替えは済みましたか?」
ラルフは、トイレで着替えを行うマリシアとそれを手伝うジルを今か今かと待つ。
「もうすぐ終わるー!」
「ちょっ! 冗談でしょ! ひどすぎる! どうなってるのこれ!」
「大丈夫! かわいいって! たぶん!」
「たぶんって言った!」
例によって散々だだをこねたのち、ジルにムリヤリ連れられて姿を現した。
「おおおおおう! これは!」
レッセパッセが衝撃の声を上げた。
「なんと勇ましい。そして。男らしい……」
マリシアの格好。まず上半身は裸。一糸たりとも纏ってはいなかった。手ブラが辛うじて乳首を隠匿するのみ。そしてなにより特徴的なのはその下半身。
「これは……! そうかスモーか! どおりて男らしいわけだ……!」
腰に一本の太い布を回し、それと交差させるようにして、股を覆い隠すもう一本の布。色は情熱の赤。
「古代文明の時代から存在している伝統的戦闘装備。いわゆる『フンドシ』ですね」
太腿はもちろんのこと、おしりも丸出しになっている。
「あえて男らしさを強調することでこの娘が内在する女性的魅力を何倍にも高めた! そういうわけだなラルフ!」
「その通りです!」
「バカ師弟―――――!!」
マリシアが超音波のような叫び声を発した。
「こんなの男らしいとか女性的魅力とかそんなんじゃないです! ただの変態です! どこの世界に上半身裸におしり丸出しでほっつきあるく女の子がいるんですかーーーーー!」
久しぶりに大規模なテレギレが発生した。
「うーむ。じゃあジルはどう思う?」
ジルはどこか演技臭い感じに、両目を閉じてアゴに手を当てながら発言した。
「私もこれは素晴らしいと思うな。ふんどしの男臭さがマリ姉のメス臭さをよく強調している。そう。スイカにかけた塩がスイカの甘さをより強調するがごとくね」
「ジルちゃんなんかキャラおかしくない!?」
「いいじゃん! マリ姉スモー好きでしょ?」
「好きだけども!」
レッセパッセが「ジルたんいい目利き。好き」などと頭を撫でた。
「それでは師匠。この装備は」
「うむ! 合か――むぐぐぐぐ!」
「ちょっと待ったぁ!」
マリシアがレッセパッセの口を左手で覆いかくす。ちなみに右手では胸を隠していた。
「せめておっぱいは隠させて下さい! ねえ! お願い! 女性としての価値がゼロになってお嫁に行けなくなる!」
三人はおよそ見たことがない、凄まじくイヤそうな顔、苦虫の丸焼きを一気食いしたようなツラである。
「し、しかたないですねえ……」
ラルフは実に緩慢な手つきで、その辺に落ちていた細長い白布をマリシアの胸に『さらし』のごとく巻き付けた。
「むぅ……!」
「これは――!」
マリシアのそのさらし姿を見て、ラルフ、レッセパッセ、ジルの三人は全く同時に手をポンと打った。
「むしろいい――!」
「胸に布を巻くことで大工さんとか漁師さんっぽさが出たね!」
「大工や漁師とは、一言で言ってしまえば要するに男の中の男。ますらお。すなわち!」
「より男臭くなった!」
「そうだ! ねえねえ! じゃあこんなのもどうかな」
ジルはその辺に落ちていた、生地のぶ厚い、雑巾のような布をグリグリとねじってマリシアのアタマに巻いた。
「おお! ネジリハチマキとは! 男! まさに男! いいぞジル! 天才かおまえ!」
「ジルたん好き。だっこしたい」
今度はマリシアが苦虫のソテーを皿ごといったような顔。
「ありがとうございますマリシアさん! こうなることを見越して、先ほどは恥ずかしいとかなんとか世迷いごとをおホザキになられてたのですよね!」
「あの……そろそろマジで嫌いになりますよ?」
「師匠! そんなわけで! 改めてこれが完成形です! 合否は!?」
「超合格! もともと合格だったのにさらによくなったから超合格!」
ラルフとジルはガッツポースで歓声を上げた。
マリシアは酢を飲んだような顔でうなだれている。
「マジすか……他のにはならないんですか……」
「どうしてもお気に召さなければステルスシルクワームの糸から作ったスケルトンキャミソールもありますが」
「それ捨ててって言ったでしょ!」
しばらく喚き散らしたのち、マリシアはすべてを諦めた顔でフンドシを着ることを了承した。
三人はハイタッチを行いながら歓声を上げる。
「いやーよかった。ヤツとの約束の日に間に合って。あと三日。ギリギリでした……!」
「じゃあ今夜は宴だね! こんなこともあろうかとお酒持ってきてるの! ほらマリ姉! 硫黄エールあるから機嫌直して!」
「えージルたん。わたしアレ苦いから嫌い……」
「大丈夫だよレッセちゃん。ダイワクカルーアもありますー!」
「ジルたん好きすぎる。ちゅっちゅしよ」
四人とも酒癖が悪いため、とんでもない乱痴気騒ぎになったとか。
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