2-9 夢

ダイワクボルケオに向かう前夜。マリシアは夢を見た。

 彼女が旅に出たその日の夢。


「それじゃあ行ってくるからね」

「お嬢様……」

 草木も眠る丑三つ時。ある『城門』の前で二人は別れを惜しんでいた。

「大丈夫。宝を取り戻したらすぐに帰って来るから」

 マリシアはメイドの格好をした幼い少女のアタマを優しく撫でる。

「なにもお嬢様みずから行かなくとも……」

「大丈夫だよ。この城、いやこの国全体でも。私が一番腕が立つの知ってるでしょ?」

「でも……」

 少女は大粒の涙を流した。

「ごめんね」

「ねえ、どうしてそこまでして宝を取り戻さなくてはならないの?」

 マリシアは少女をそっと抱きしめてこう答えた。

「あなたにもいつかわかるわ。もっとオトナになればね――」


 そこで目が覚めた。まだ窓の外はまっくらで物音ひとつしない。

「ちゃんと寝ないと」

 マリシアは再び目を閉じる。

「いよいよなんだな。私が私の人生を手に入れる。そのための闘い……」

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