2-7 スモー大会

今日はダイワクビレッジにおける年間最大の(というか唯一の)ビッグイベント『スモー祭り』が行われる日だ。

 スモーというのはこの地方に伝わる伝統格闘技で、対戦相手をドヒョウと言われる円の外側に出すか、地面に転ばせれば勝ちというシンプルなルールで親しまれている。また上半身は裸に、下半身はフンドシと言われるおけつ丸出しのランジェリーという露出度の高い格好でも知られていた。

「それでは決勝戦を開始します!」

 土俵の上では肉つきのよい巨漢の選手と、スラっとした細身の選手が向かい合っていた。

「はっけよーい! ――――――――――――のこった!」

「うおおおお!」

「どっせえええええええええ!」

『ギョージ』と言われる審判の合図と共に、両選手はドヒョウの中心に向かって突進。

「そおい!」

 先手を取ったのは太い方だった。細い方の腰に手を回し強引に押す。細い方もなかなかのパワーで押し返すがさすがに体重の掛け合いでは太い方に分があるらしい。瞬く間に土俵際に追い詰める。観客たち、特に太い方が勝つ方に賭けたヤツから大歓声が上がる。だが。

「舐めるなァ!」

 細い方! 顔を茹蛸のように赤くしつつ太い方の腰に両腕を回す!

「うおおおお! ドスコーーーーーイ!」

 そして強引に持ち上げた!

 客席からはどよめき!

「これでフィニッシュでゴワス!」

 細い方はその状態のまま一メートルほども跳び上がり、太い方を土俵のど真ん中に思いっきり叩きつけた!

 ギョージがグンパイと言われる扇のようなものを掲げて宣言する。

「勝者―マリシアー! マリシア―!」

 客席からは大歓声と拍手。ジルの「いいいいいいいやったあああああー!!!!」などという歓喜の声もよく聞こえる。

 マリシアは土俵の中央、両手を上げて興奮を露わにしていた。

「アハハハハ……」

 その様子を苦笑いしながら見ている男が一人。

 マリシアはそれに気づき赤面。アタマを抱えてその場にしゃがみ込んだ。

 男が土俵に近づいてくる。

「なんと申しますか……だいぶんこの村に融け込まれましたね」

 マリシアは立ち上がり「うるさーい!」と可愛らしい声で叫んだ。

「なに見てるんですか! こんな人の恥ずかしいところをこっそり覗いてアナタ!」

「フンドシはされてないんですね。上もシャツを着ているし」

「当たり前でしょ! そんな露出狂じゃないんだから!」

 これがいわゆるテレギレである。ジルもその様子をニヤニヤしながら眺めている。

「ラルフさん! 仕事してるんじゃなかったんですか!?」

「仕事は完了しました」

「へっ?」

「遅くなってしまいましたが、本日ようやくマリシアさんのための防具が完成しました」

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