第8話:決戦!バルバトス!

(前回のあらすじ:中学2年の少年、那須は、デジナースとしてアンドロマリウスと共に悪魔のUSBメモリを集めていた。そんなある日、ライバルであるデジポリスの正体を知ってしまう。なんと、デジポリスの正体は親友の堀巣だったのだ。


デジポリスのことが気になって、堀巣とまともに話ができないまま夏休みに入ったある日、デジポリスから『正体をバラす』という脅し突きの挑戦が届く。デジナースとアンドロマリウスはその挑戦を受け、デジポリスと戦うも、それは悪魔のUSBメモリ、ロノウェが化けた偽物だった。


デジナースはロノウェに問い詰めようとするが、ロノウェはデジナースたちに助けを求めた。どうやら、デジポリスに力を与えている悪魔のUSBメモリ、バルバトスが、何やら良からぬことを考えているというのだ。


アンドロマリウスと那須は、一旦ロノウェの話を聞くことにした。一方、バルバトスの方も、いよいよ本気でデジナース達を倒そうと動き出すのだった。)


――――――――――


「それじゃあ、さっきの続きだ。話してくれるか、ロノウェ」

サイバースペースから戻ってきた那須は、改めて画面内のロノウェに呼びかける。


「もちろんや。ワイも助けてもろたしな」

ロノウェは、今回の計画のこと、そしてバルバトスとデジポリスのことを話し始めた。

「バルバトスの兄さんは、堀巣っちゅー少年に力を貸しとります。せやけど、ただで力を貸すような悪魔やおまへんのや。自分の軍団を持とうとしとりますのや」


「自分の軍団やて!?」

アンドロマリウスは驚く。

「なんなんだよ、その、『自分の軍団』って?」

那須は何がなんだかわからない。


「まあ、これは説明せなアカンな」

アンドロマリウスが画面内にブラウザを立ち上げ、ソロモン72柱の悪魔について検索し、情報を展開する。


「ええか。ワイらはソロモンによって作られたアプリケーションなわけやけど、元々は72柱の悪魔なんや。ほんで、それぞれ自分の軍団を持っとったんや」

アンドロマリウスは画面内を移動し、イラストエディタを立ち上げる。


「例えばバルバトスのやつなら30以上の軍団を持っとったし、もっとぎょーさん軍団を従えとった悪魔もおったで」

アンドロマリウスはイラストエディタに、それぞれの悪魔が軍団を持っている図を描く。ほぼすべての悪魔が、20から60ほどの軍団を持っている。


「せやけど、アプリケーションにされるときに、従えとった軍団も切り離されてしもたんや。容量が足りひんかったんか、あるいは他の理由かそれはわからんけどな」

イラストエディタ上から軍団が削除され、残された悪魔たちは72本のUSBメモリに収められていく。


「ふーん。それで、その自分の軍団ってのを取り戻そうとしてるってことか?」

「せや。だけど、もとの軍団を取り戻そうってわけやないんやろ?」

アンドロマリウスはロノウェの方を見る。


「そのとおりです。バルバトスの兄さんは、他の悪魔のUSBメモリを自分の部下にして、軍団にしようとしてはりますんや」

「そんなことできるのか?悪魔のUSBメモリは、みんな同じくらいの力を持っているんだろ?」


那須の疑問はもっともだ。人間から見れば、悪魔のUSBメモリの力は、どれも『同じくらい強い力』に見える。

「それも説明するわ」

アンドロマリウスが再びイラストエディタを立ち上げる。


「まず、72柱の悪魔には、序列があるんや。ほんで、基本的には序列が上の方が強いんや。ちなみにワイは最下位の72位。……いや、だからって一番弱いわけやないで。いやスマン、話がそれたわ。とにかく、序列が上の悪魔なら、他の悪魔を支配下に置くことも不可能やないんや」


イラストエディタ上には72本のUSBメモリが上から順番に並べられ、一番下にアンドロマリウスの名前が表示される。

「バルバトスの序列は第8位、ワイらが回収した悪魔のUSBメモリを差し引いても、軍団を作るには十分な数や」

イラストエディタ上に、これまでアンドロマリウスとデジナースが回収した悪魔のUSBメモリの名前が刻まされていく。


第64位フラウロス、第42位ウェパル、第57位オセ、第41位フォカロル、第11位グシオン、第27位ロノウェ、そして第72位アンドロマリウス。合計7本が、デジナースたちが持っている悪魔のUSBメモリだ。これらを除外しても、バルバトスより序列が低い悪魔のUSBメモリは、57本もある。


「もしも残りが全部バルバトスの手下になったら、ヤバイのか?」

「ヤバイなんてもんやあらへんで。ワイは確かに『他の71柱の抑止力』として力を持っとる。せやけど、相手が束になってかかってきたらもう敵わへん」


イラストエディタ上に、57本の悪魔のUSBメモリを従えたバルバトスにコテンパンにされるアンドロマリウスとデジナースのイラストが、デフォルメされたわかりやすい絵柄で描かれる。


「それに、ワテらも、喜んでバルバトスの兄さんに従っとるわけや無いんです。脅されて無理やり従わされとるんですわ。堀巣っちゅー少年も同じようなもんですわ」

「堀巣が?」


「さようです。ここんところ、堀巣はんはバルバトスの兄さんに急かされて、無理して悪魔のUSBメモリを集めてます。このままじゃ倒れるのも時間の問題やと……」

その時だ。那須のスマホに着信が来た。相手は友達だ。


「もしもし……え!堀巣が!……ああ、わかった。……うん、それじゃ明日……うん、それじゃ」

那須は短い通話を終える。

「堀巣がどうかしたんか?」


「……入院したって。明日、お見舞いに行くよ」


――――――――――


「堀巣、大丈夫か?」

明くる日の午前中、那須はいつもよく遊ぶ友だち2人と病院にやってきた。

「うん、ありがとう。ただの夏バテだから大丈夫だよ……」

ベッドの上で上半身を起こす堀巣はそう言うが、明らかに疲労の色が見える。


「ずいぶん顔色が悪いみたいだけど、本当に大丈夫なのか?」

「うん、入院って言っても、安静にしておいて念のために入院ってだけだから、今日の午後には退院だよ。でも、しばらくは自宅で安静って言われたけどね」


「まあ、最近暑いしな」

「昨日なんて40度もあったし、倒れちまったのも無理はねえよな」

堀巣の体調がそこまでひどいわけではないとわかって、お見舞いに来た友だちは少し安心したようだ。……那須以外は。


「なあ……」

話を切り出そうとして、那須は思いとどまった。この話は、2人だけで話さなければならない。今は、その時ではない。


「ん?どうしたの、那須くん?」

「い、いや、また元気になったら一緒に遊ぼうぜ!」

那須はどうにか笑う。

「うん」

堀巣も笑顔を返したが、その顔はどこか物悲しさすら感じた。


……それから少しの間、ゲームの話なんかをして、3人は帰る時間となった。

「それじゃあ、そろそろ帰らないとな」


「あ、待って」

堀巣は1つの封筒を取り出して、那須に渡した。

「なんだこれ?」


「サイバー係の宿題のことでいろいろ考えてて、話そうと思ってたことをまとめておいたんだ。帰ってから確認してくれるかな」

那須は、堀巣の目を見る。その目は、助けを求める目に見えた。

「……ああ、わかった。必ず確認する」


「うん、頼んだよ。那須くん」


――――――――――


自分の部屋に帰ってきた那須は、早速手紙を読んだ。そこには、こう書いてあった。


『デジナースへ。悪魔たちを助けてあげてくれ。バルバトスは強いけど、必ず他の悪魔と一緒で、弱点があるはずだ。だけど、真命を知られてしまった僕はもう逆らえない。絶対に、名前を知られてはいけない。お願いだ。悪魔たちを助けてあげてくれ。デジポリスより』


「これで間違いないな。デジポリスは堀巣だ」

「まあ、すでにわかっとったことやけどな」

画面の中のアンドロマリウスが答える。


「そりゃそうなんだけど、なんつーか、こう、改めて言われると、俺も覚悟を決めないといけないっつーかさ……」

那須は一呼吸置いて、更に続けた。


「俺が、堀巣を助けなきゃって思ってさ」

「せや!そのイキやで!」

アンドロマリウスの後押し。


「ワテからもお願いします。ワテだけやのうて、他の悪魔のUSBメモリたちも、救ってやってくれまへんやろか」

「あまり前だろ!みんな助けて、俺たちの仲間になってもらうんだ」

那須は、ロノウェの問に間髪入れずに答えた。


「よっしゃ、そうと決まれば急がなアカンで。バルバトスが堀巣の力を使えない、今がチャンスや!」

「おう!」


那須はパソコンに向うと、”Andromalius.goe”のアイコンにマウスカーソルを合わせ、起動した!



<CYBER DIVE!!>



「……よっと!」

一瞬の光に目を閉じた那須が、ゆっくりと目を開くと、そこは、いつものサイバー空間だった。どこまでも続くようなダークブルーの床に、グリッド線。ふわふわしたマスコットのアンドロマリウスが、那須を迎え入れる。


那須は慣れた手付きで変身呪文コードを実行する。

封印解除アンジップ権能開放ジー・オー・イー!アンドロマリウス!」


『パパラ~♪パパラパッパラ~♪』

謎のBGMが鳴り響く!那須の身体が謎の光に包まれ、変身バンクだ!


全身が光のシルエットになり、服が弾け飛ぶ!代わりに装着されるのは、ゲームのキャラクターそのままのような、デフォルメされたミニスカートのナース服!


ボサボサだった髪の毛はナースキャップで纏められる!足元には純白のオーバーニーソックスと、ちょびっとだけかかとが高い靴が装着される!


そして小さなポシェットが襷掛され、最後に巨大な万能検診ステッキが、その手に握られた!


『パパラパ~♪パパン♪』

BGM終了!変身完了コードサクセス!那須は魔法少女装少年デジナースとなった!


デジナースのアバターによって那須の身体能力は飛躍的に上昇する。だが、これ以上の布面積はデータ量が大きすぎて、本体の那須がフリーズしてしまうのだ。だいぶミニスカードではあるが、これでも限界まで詰め込んでるのである。


「行き先は堀巣のパソコンだよな?」

「ああ、バルバトスのUSBメモリは刺さりっぱなしやと考えるのが自然や」

「よし、行くぞ!」

「よっしゃ!」


デジナースとアンドロマリウスは光となって、サイバーグリッド空間上空に飛び上がり、堀巣のパソコンのアドレスに向かって飛び出した!


――――――――――


「よっと……久しぶりだな……」

デジナースは周りを見渡す。道路や建物の形は、現実空間のそれに近い。ここは堀巣の家の前だ。だが、色は全体的に青く、ときおり光の筋が世界を通る。


一番最初にフラウロスを回収したのも、このアドレスだった。あの時はフラウロスの権能で巨大な炎の壁ファイアーウォールに囲まれていたが、今はそれもなく、異常は見られない。


デジナースは堀巣の家の玄関を開け、中に入る。

「気いつけえや。バルバトスのやつがただぼんやり待っとるはず無いで」

「ああ……」

アンドロマリウスとデジナースはあたりの気配を探りながら、慎重に歩を進めていく(ロノウェはUSBメモリに格納してポシェットの中にしまいこんだ)。


現実空間では何度も遊びに来たことがある家だ。デジナースたちは迷うことなく堀巣の部屋へと進んだ。

「あれだ」


デジナースは、机の上に置かれたデスクトップPCを見る。USBポートには、光り輝くUSBメモリが刺さっている。サイバースペースにおいて、光とは情報の伝達であり、情報量そのものでもある。これほどの光となれば、悪魔のUSBメモリであることに疑いの余地はない。


デジナースはUSBメモリに手を伸ばす。悪魔のUSBメモリをアンドロマリウスの力で封印するためには、デジナースが直接手で握って呪文コード唱え実行しなければならない。


「待った。罠かもしれへんで」

アンドロマリウスが止める。

「だけど、このまま待ってても堀巣が帰ってくるだけだ。罠だってわかってても、やるしかない」

デジナースは深呼吸して、光り輝くUSBメモリを掴んだ。


「うわあ!」

USBメモリの光が強くなり、デジナースの司会を光で埋め尽くす!



<ZONE OF BARBATOS!!>


「……何が起こったんだ?」

光が晴れ、デジナースは周囲を見る。そこは、先程までいた空間とはまた別の空間だった。そこは堀巣の部屋ではなく、鹿やリスが好んで住みそうな林になっていた。さらに、世界の色は全体的に赤く、禍々しい。


「これは……バルバトスの空間や!」

「そのとおりです。ようこそ、ワテの世界へ」

アンドロマリウスの声に答えるように、どこからともなくバルバトスの声がする。


「くそ!どこだ!」

デジナースは声のする方を見る。とは言っても、どこから声が聞こえてくるのかすら曖昧な空間だ。やたらと周囲を見渡すしか方法がなく、当然だが見つからない。


「無駄ですわ。ここはワテの領域。ワテの決めた法則が支配する世界や。せいぜい、あがいてみてください。ま、無駄やと思いますけどな」

バルバトスの声が消こえなくなると、あたりに風が吹き始めた。


デジナースは風上の方を見る。生ぬるい風が頬をなで、足元で草がざわめく。足元を見ると、風上の方から電子リスの群れが走っていくのが見えた。まるで、なにかから逃げるように。

「なんだなんだ?」


何が何だか分からないデジナース。一方、アンドロマリウスは2人に襲いかかる驚異に気がついた!

「アカン!風下に向かって走れ!木の陰に隠れるんや!」


デジナースがアンドロマリウスの声に気がついたとき、1本の矢が、デジナースの顔をかすめた。

「え?」


「とにかく走れ!次が来るで!」

アンドロマリウスが言うが早いか、大量の矢が雨となって上空を覆い隠さんとする勢いで降り注ごうとしていた!


「うわあああ!!」

デジナースはとっさに風下の方に逃げる!全力で走り、倒木に隠れるようにしゃがみ込み、頭を抱えて目を閉じる!


次の瞬間、無数の矢が倒木に刺さる音が聞こえた。

「はぁ……はぁ……」

デジナースが目を開くと、あたり一面に矢が刺さっていた。


次の矢を警戒して、隠れたまま空を見上げるデジナース。……だが、しばらく待っても、矢の姿はおろか音すら聞こえてこなかった。矢を運んでくる風も、やんでしまった。


「安心してよさそうやで。どうやら連発はできへんようやからな」

浮かび上がって周囲を見渡したアンドロマリウスは予想のように言うが、その表情は確信に近かった。そうでなければ、堂々と体を晒すはずがない。


「あの雨みたいな攻撃を連発できないからって、そんなに目立って大丈夫なのかよ?」

「ああ。大丈夫や。連発できへんっちゅーのは、大量の攻撃やなくて、攻撃そのものや」

「攻撃そのもの?」

アンドロマリウスの言葉に、デジナースは首をかしげる。


「ええか。バルバトスは『ワテの決めた法則が支配する世界』って言うとったやろ?ワイらは元々は悪魔やけど、アプリケーションにされとる。せやから、バルバトスが決めた言うとった法則っちゅーのも、バルバトスの権能に関係あるはずや」


アンドロマリウスは更に説明を続ける。

「バルバトスの権能は『有能な軍隊と探索力』や。その力は『攻撃プログラムへのカウンターハック』としてアプリケーションに組み込まれとる。つまり、ワイらが攻撃を仕掛ければ自動的に反撃してくるっちゅーわけや」


アンドロマリウスの権能は正義を司る千里眼であり、そのアプリケーションとしての機能は『他の71柱の抑止力』だ。他の他の71柱が持っている権能や機能も、ある程度は知っている。


「ってことは、俺たちが動かなければバルバトスの矢は飛んでこないってことか?」

「おそらくやけどな。最初に大量に飛んできた矢は、ワイらがこの空間に侵入したことに対しての攻撃だと考えると、もう攻撃が飛んでこないっちゅーのもうなずけるやろ」


「うーん、でも、普通はそういう攻撃って、侵入者をやっつけるまで続くだろ?なんで攻撃が来ないんだ?」

デジナースの言う通り、例えば、不正な侵入を完治したファイアーウォールは、同じアクセスが二度と来ないようにブロックするし、ウィルスセキュリティー・ソフトウェアは、ウィルスを感知すると、即座に削除か隔離をする。基本的に打ち漏らしはないはずだ。


「そら、ワイらが同じ『悪魔のUSBメモリの力』を持っとるからやな。悪魔のUSBメモリのアプリケーションは、普通のプログラムに対しては圧倒的に強い。ほんまもんの魔法やさかいな。せやけど、魔法対魔法なら、そうはいかへん。その上、ワイらにとって都合よく動いとるみたいやしな」


「俺たちにとって都合よく?バルバトスの攻撃がか?」

「ああ、せや。バルバトスのカウンターハックは、普通の攻撃プログラムなら、どんなもんでも一発でカウンターハックを決められる。せやから、たぶん、『同じ攻撃に2発目以上を打ち込む』っちゅープログラムがされていないんや」


本来、自動的に動くプログラムは、万が一失敗したときに再び起動するようなプログラムを組む。特に、通信系のプログラムは失敗時の複数回起動がほぼ必須となっている。電波状況の悪化や通信相手の状況などによって失敗する可能性があるため、プログラムにミスがなくとも実行が失敗する場合があるからだ。


だが、バルバトスは悪魔をベースにした魔法のプログラムであり、たとえどんな状況でも、相手が魔法でなければ一発で仕留める。故に、失敗は存在せず、失敗時の複数回起動ももちろん搭載されていない。というよりも、容量や負荷の問題で、搭載できなかったといったほうがいいかもしれない。魔法は、アプリケーションに収めるには大きすぎたのだ。


「それじゃあ、俺たちが攻撃してこない限り、バルバトスも攻撃してこないってことか?」

「そういうことや。それに、バルバトスをなんとかするには、どのみちこの空間を脱出せなアカン。そのために、まずやらなアカンことがある」


「何をすればいいんだ?」

「この空間を作っとるのは、バルバトスだけやないはずや。こんなごっつい空間、個人のパソコンで動かすんは、相当に無理しとるはずや。せやから、その無理をサポートしとる『バルバトス以外の悪魔』を探して先に封印するんや」


「なるほどな……。相手が狩人なら、こっちも狩人っていうわけか」

デジナースは立ち上がり、改めてあたりを見渡す。だが、目につく範囲に、これと言って変わったものはない。


「とにかく、なんか怪しいもんがあったら、よーく調べて見るんやで。ここはバルバトスの世界や。今までみたいに戦って倒す力押しは通用せえへんと思ったほうがええ」

「ああ」

デジナースはうなずくと、林のさらに奥に向かって歩き出した。


――――――――――


……しばらく歩くと、デジナースたちは開けた場所にたどり着いた。そこには、古ぼけた小屋が立っている。

「いかにも怪しい場所やな」

「いかにもって感じがしすぎて、逆に怪しいと思うけど」


「いや、ここでええ。ここ以外はみーんな自然やったのに、ここだけ人工物になっとるっちゅーのは、世界が違てるわけや。ほれ、地面を見てみい」

アンドロマリウスが小屋の地面を指差す。デジナースがそこを見ると、奇妙な区切りがあった。周りの地面は土なのだが、古ぼけた小屋が立っている地面は、石畳になっている。しかも、その石畳は、古ぼけた小屋を囲むように、きれいな円を描いているのだ。


「あ!もしかしてこれって!」

デジナースは、最初にフラウロスを封印したときのことを思い出した。あの時、フラウロスは円形の魔法陣に陣取っていた。あの時も、サイバースペースの中に狭い空間を維持する方法として、魔法陣が使われていた。

「せや。魔法陣の一種や」


「そうと決まれば早速……」

デジナースが古ぼけた小屋に近付こうとすると、突然、小屋を囲むように板の壁が現れた。


「こりゃあ、やっかいやな」

アンドロマリウスは突破法を考えようとするが、デジナースはそんなことお構いなしと言った様子で万能診断ステッキを構える。


「お、おい、まさか」

「こんな板切れ、ぶち破って進んでやる!おりゃあ!」

デジナースは生け垣に向かってステッキを振り下ろす!

「アカン!」

アンドロマリウスの静止も間に合わず、ステッキは板壁に振り下ろされた!


ガガァン!


一撃では破れなかったが、デジナースには確かな手応えがあった。だが、その時だ。ざわりと、生暖かい風が吹いた。


「あー!やってもうた!」

生ぬるい風がデジナースの頬をなで、足元で草がざわめく。足元を見ると、風上の方から電子リスの群れが走っていくのが見えた。まるで、なにかから逃げるように。


「これも攻撃になるのかよ!」

「そらそうやで!プログラムの破壊なんか攻撃の定番や!」

もたもたしていれば矢が飛んでくる。だが、ここは開けた場所だ。隠れられる場所はない。小屋の裏側に回り込もうにも、小屋が大きすぎて間に合わない。


「こうなったらとにかく早く壁を破るんや!急げ!」

「ちくしょう!やってやる!」

デジナースはステッキを再び構え、板壁に叩きつける!


ガガァン!


まだ破れない!1本の矢がデジナースの頬をかすめる!

「くそ!おりゃあ!」

デジナースはステッキを再び構え、板壁に叩きつける!


ガガァン!


まだ破れない!大量の矢が雨となって上空を覆い隠さんとする!

「もう一発!!」

デジナースはステッキを再び構え、板壁に叩きつける!


バキャアアン!


板壁が破れた!

「飛び込むんや!」

「ええい!」

アンドロマリウスとデジナースは板壁の内側に転がり込む!


次の瞬間、無数の矢が板壁に刺さる音が聞こえた。

「はぁ……はぁ……」

デジナースが壁の外側を恐る恐る見ると、あたり一面に矢が刺さっていた。そして、矢を運んでくる風もやんだ。


「けっきょく力技でよかったんじゃないか」

「いやいやいや!ホンマは安全な抜け道を探したりせなアカンのやったんや!今回はなんとなったみたいやけど、もう二度とこんな危ない手は使いとうない」

「そりゃあ、確かにそうだな」


デジナースは立ち上がり、小屋に入る。ざっと見た感じ、なにもない。

「ここならなんか壊してもうても矢は飛んで来ないやろ。隠し扉かなんかあるはずや」

小屋の中、つまり魔法陣の中には、バルバトスは手を出せない。管理している悪魔が違うからだ。故に、ここではうっかり何かを壊しても攻撃が飛んでくることはない。


「そういうことなら、手当たり次第だ」

デジナースは棚を動かしたり机の引き出しを開けたりと、手当たり次第に調べていく。そして、カーペットをめくった時に、それは見つかった。


「ん、地下室があるのか」

デジナースは床に扉を見つける。その奥には、地下に繋がる階段があった。デジナースの持つステッキがぼんやりと光り、地下を照らす。

「よっしゃ、どんどん行こか!」


地下室に進むと、そこは置くまで続く一本道だった。

「なんか気味が悪いな……」

デジナースは怯えながらゆっくり遠くに進む。奥に進むにつれて、鎖がこすれるジャラジャラとした音が聞こえてきた。


「お、おい、アンドロ。なんだよこの音は」

たまらずデジナースは歩みを止める。

「何や言われても、わからへん。せやけど前に進むしか無いんや。ほら行くで!」

「や、やめろ!押すなよ!」

デジナースはアンドロマリウスに背中を押されておずおずと歩く。


奥に進むにつれて、鎖がこすれるジャラジャラとした音が大きくなってくる。そして、ついにその音源にたどり着いた。

「よう来なすったな」

鎖に繋がれた悪魔は、デジナースたちを見てボソリとつぶやいた。


「あんたはいったい、誰なんだ?」

「さて、なんだと思う?残念ながら、ワシは自分の名を明かすことはできへんのや。バルバトスの支配下に置かれてるさかいな」


デジナースは鎖に繋がれた悪魔に近づき、よく見る。その姿は犬のそれに近く、だが、首が3つある。その姿には、見覚えがる気がした。

「三首の犬……もしかしてケルベロス?」


「ケルベロス?そんな名前の悪魔、72柱におらんで?」

アンドロマリウスは首をかしげる。

「……いや、待てよ!お前もしかしてナベリウスか!」


「ナベリウス?」

こんどはデジナースが首をかしげる。

「ワイら72柱の悪魔にはな、別名を持つやつがおるんや。せや、思い出したで!ナベリウス!ネビロス!ケルベロス!3つの名前を持つ悪魔や!」


ソロモン72柱のUSBメモリ第24位、ナベリウス!その力は、複数の名と高い魔力!ソロモンはこの力を持って、『低負荷同時処理システム』を作り出したのだ!


那須の個人パソコンでバルバトスが領域を作れたのは、ナベリウスの力を利用したからだ。『低負荷同時処理システム』が、カウンターハックと空間の維持、2つの処置を同時に行うことを可能にしたのだ。


「ようやく思い出しおったか。手間かけさせおってからに」

鎖に繋がれた悪魔、ナベリウスは、真ん中の顔の牙を見せて笑う。

「さあ、ワシをどうするつもりや?とっ捕まえてバルバトスみたいにこき使うつもりか?」


「いや、そんなことはしねえ。俺達の仲間になってほしいんだ」

デジナースは否定する。

「ふん、口でだったらなんぼでも言えるわ。お前らかて、結局ワシを捕まえるために来たんとちゃうんか?」


「そんなことより今は大事なことがあるんだよ」

「大事なこと?言うてみいや小娘が」

ナベリウスがデジナースを睨む。


「俺は、友だちを助けに来た。そのためには、バルバトスをやっつけなきゃいけねえんだ」

デジナースもナベリウスを睨み返す。


「友だち、ああ、あの堀巣とかいう小僧か。……まあ、たしかに筋は通っとるな。バルバトスが本気を出せるんは、堀巣の精神力を使うてるからや。せやけど、このままやったら使い潰されるんがオチやっちゅーのは、ワシも見えとる」


「それじゃあ……」

「ま、ワシもバルバトスのやり方は気に食わんし、その話、乗ったるわ」

「やったぜ!よろしくな!」

デジナースは笑顔で答えた。


「せやけど、ワシは鎖で繋がれたまんまや。どないして手助けすればええんや?」

「ああ、その事やったら心配あらへんで」

アンドロマリウスが言うと、デジナースのステッキが光を放ち、巨大な注射器へと変化する。

「名前がわかればワクチンの用意はあっという間や。一発で終わるさかい、安心してな」


「おい、まさか……!」

「ちょっと痛いかもしれないけど、我慢してくれよな」

デジナースは注射器を構えてナベリウスに刺す。


「キュア・アンド・コンパーション!」

巨大な注射がナベリウスに突き刺さり、プログラムが書き換えられていく!そして!

「ナーーーーーッ!」

ナベリウスは爆発!


爆発したナベリウスからUSBメモリが飛び出し、デジナースの手元に転がってきた。あとは所有者をデジナースにするだけだ。


デジナースは左手にナベリウスのUSBメモリを握り、所有者変更呪文コードを実行!

「偉大なる魔術師ソロモンよ!正義の悪魔アンドロマリウスの名において、今ひととき、その力を我に授け給え!封印されし悪魔を我が配下に!一時的超越権限スー・ドゥ所有者変更チェンジオーナー!デジナース!」


デジナースが呪文を唱えると、ナベリウスのUSBメモリに『デジナース』の名前が刻まれた。

「ワシの心の準備とか、させてもろても良かったんとちゃうか!?」

USBメモリからナベリウスの声がする。


「まあまあ、何にせよ脱出できたやないか。それに、話を聞いたほうが怖かったかもしれへんで?」

「べ、別に怖かったんとちゃうわい!」


「えっと、いきなりやったのは謝るよ。ごめん。ただ、時間がないんだ。堀巣が帰ってくる前に決着をつけないと」

「まあ、せやな」

デジナースの言葉に、ナベリウスは渋々納得したようだ。


「ところでアンドロ、ナベリウスを仲間にしたはいいけど、これからどうすりゃいいんだ?出口が見つかったわけでもないし」

デジナースの言う通り、ナベリウスをUSBメモリに封印したが、バルバトスの空間が崩壊したわけではない。まだ、この空間は維持されている。


「それやったらもう心配あらへん。せやけど、時間がない。いそいで外に出て暴れまわるんや!」

「せやな。ワシも急いだほうがええと思うで」

「え?どういうこと?」

アンドロマリウスの言葉にうなずくナベリウス、またもやわけも分からずきょとんとするデジナース。


「話は移動しながらや!ナベリウスがこっちの味方になったいうんがバレへんうちに、もう一回攻撃させるんや!行くで!」

「お、おう!」

デジナースは、地下室の出口に向かって飛び出すアンドロマリウスの後を追いかけた!


――――――――――


デジナースたちが小屋から飛び出す!

「結局どういう事かよくわかんなかったけど、とにかくぶっ壊せばいいんだな!」

「あー!せや!とにかくやったれ!」

デジナースは林を駆け抜け、林を囲う柵にたどり着いた。


「あれでいいからぶっ叩いたれ!」

「おう!」

デジナースはステッキを両手で握り、力いっぱい柵に叩きつけた!音を立てて柵が折れる!


その時だ。ざわりと、生暖かい風が吹いた。

「ようやく動いたと思ったら、なんやヤケッパチでっか。ほんなら望み通り、ハチの巣にしたります」

どこからともなくバルバトスの声がする。


デジナースは風上の方を見る。生ぬるい風が頬をなで、足元で草がざわめく。足元を見ると、風上の方から電子リスの群れが走っていくのが見えた。まるで、なにかから逃げるように。


「やれるもんならやってみろ!」

啖呵を切るデジナースの頬を、1本の矢がかすめた。だが、デジナースは一歩も動かない。


「覚悟は、ええようやな」

バルバトスの声とともに、大量の矢が上空を覆い隠す。


「これで終わりや」

矢が、雨となって、……降り注がなかった。


「な、なんや?な に がお こっ て」

バルバトスの声がとぎれとぎれになり、ついには完全に固まってしまった。

「やったで!処理落ち作戦成功や!」


バルバトスの空間維持と攻撃は、ナベリウスの『低負荷同時処理システム』あってのことだった。ナベリウスが機能しなくなったこのパソコンでは、空間維持だけで精一杯だったのだ。


だが、バルバトスは自動的にカウンターを行うプログラムだ。仮にそのことを知っていたとしても、攻撃は止められなかった。結果、パソコンの処理能力を超える負荷がかかり、フリーズしてしまったのだ。


では、フリーズしたパソコンに更に負荷をかければどうなるか?


「うおおおりゃあ!!」

デジナースが柵にさらなる攻撃!柵は崩れ、空間維持プログラムの演算が積み重なり、パソコンの排熱は限界を超え、世界は暗転した!


</ZONE OF BARBATOS!!>


「……は!」

デジナースが気がつくと、そこはブルーのサイバー空間内の堀巣の部屋だ。手には、バルバトスのUSBメモリが握られている。


「バルバトスを捕まえたんだね」

デジナースは、背後からの声に振り返る。

「デジポリス!」


デジポリスと呼ばれたその魔法少女装少年は、コスプレ衣装のような光沢のあるミニスカート婦警魔法少女服を着ている。頬には星マークのペイントがあり、腰には取っ手付き警棒トンファーと拳銃、そして手錠が装備されている。


「どうしてここに?」

「パソコンが熱暴走でシャットダウンしていたから、部屋のエアコンをつけてから再起動したんだ」


「そういうことか……」

バルバトスの世界が暗転した時、熱暴走によりパソコンがシャットダウンされていた。その後、パソコンの再起動によって、強制的にバルバトスの空間を脱出できたのだ。


「それにしても、無茶するよね。ボクが帰ってくるまで、ボクのパソコンに閉じ込められっぱなしなんだよ?」

「へへ、お前なら絶対に助けてくれると信じてたからな」

デジナースは笑った。

「……フフ」

デジポリスも、笑った。


「あー、感動のシーンやけど、ひとまずバルバトスをちゃっちゃっと封印するで」

「あ、ああ!そうだな!」

デジナースのステッキが注射器に変わろうとした、その時だ!


「そうはさせへん……。最後の命令コマンドや。堀巣恵ほりす けい!ワテを撃て!」

バルバトスのUSBメモリがデジナースの手から飛び出し、真命を持って命じた!


「ぐっ……!」

デジポリスは命令に抗おうとするが、目のハイライトが消えて逆らうことができない!腰の拳銃を抜き、バルバトスのUSBメモリに狙いを定める!


「狩人の悪魔バルバトスの名において、攻撃者を狩り仕留める。一時的超越権限スー・ドゥ強制終了キルナイン!」

攻撃呪文コードと共にデジポリスの拳銃から弾丸が放たれ、USBメモリを直撃!


「バーーーーーッ!」

バルバトスのUSBメモリは悲鳴を上げ、バラバラになった!


「な、なんちゅうこと考えたんやバルバトスのやつ……!」

「アンドロ、死んじまったのか?」

「ああ、一時的にはそうや。けど、これで強引に逃げられてしもた……」


「逃げられた?」

「さっきの呪文コードはプログラムの強制終了、一時的な死や。バルバトスが行きとったら、仮死終了した悪魔はバルバトスに回収される。それがアイツの能力やからな。せやけど、自分自身に使った場合は、どっかに霧散してしまうんや」


「それじゃあ……」

「ああ、もうバルバトスはここにはおらん。一旦バラバラになって、どっかでまた復活しよる」

「また襲いかかってくる可能性もあるわけか」

デジナースは落胆する。


「う……」

デジポリスに目のハイライトが戻る。

「デジポリス!大丈夫か!?」


「うん。でも、ごめん。ボクのせいで結局バルバトスを逃しちゃって……」

「いいんだよ。お前は助かったんだし、また後で捕まえ直せばいいさ」

「せやな。バルバトスが復活するまで時間はあるやろうし、それに、バルバトス以外の悪魔のUSBメモリは、まだデジポリスが持ってることになっとるみたいやしな」


アンドロマリウスの言う通り、バルバトスが一時的にでも消滅したことで、バルバトスとデジポリスが持っていた悪魔のUSBメモリの所有権は、デジポリスに移っていた。


「……なあ、堀巣。これからも一緒に遊んでくれるか?その、色々気まずかったと思うけど……」

デジナースが、いや、那須が言った。

「もちろんだよ、那須くん」

デジポリスが、いや、那須が答えた。


「ありがとな!」

「お礼を言うのはこっちの方だよ」

2人は笑って握手した。


「ほな、一旦帰ろうか」

「うん。それじゃあな!」

デジナースとバルバトスは光となって、サイバー空間から消えていった。



</CYBER DIVE!!>



「……はっ!」

那須が目を開くと、そこは自分の部屋だ。サイバー空間から元の世界に戻ってきたのだ。画面内には、アンドロマリウスとナベリウスが浮かんでいる。


「どうなることかと思ったけど、なんとかなったな」

「なんとかなったはなんとかなったけどな……。バルバトス、ほんまに厄介な相手やで……」

アンドロマリウスは画面内をふわふわと浮かび腕を組んで考える。


「疲れてる時に考えても仕方あらへん、アンドロマリウスはん。これからの作戦を立てるためにも、まずは休んで、また明日にでも考えましょ」

「まあ、せやな!」

ナベリウスの提案に従い、アンドロマリウスはデスクトップの壁紙を3Dの南国ビーチに切り替える。サングラスとアロハシャツに着替えてピーチパラソルの下に寝そべり、トロピカルドリンクを飲みだした。


「やれやれ、気楽なもんだよな」

「お前も今日は休んだらええ。いろいろあったし、堀巣と話すにしても、今日はやめといたほうがええやろ。アイツも疲れてるはずやさかいな」

「そうか……確かに、そうだよな!」

アンドロマリウスの提案に従い、ベッドに寝そべり漫画を取り出した。


しばしの休息が訪れたのだ。


◆アンドロマリウスの『教えて!サイバーセキュリティ!』のコーナー◆


どーも、アンドロマリウスや!バルバトスのやつには逃げられてしもたけど、堀巣は助かったし御の字やろ!それじゃ今日も張り切ってこのコーナー行くで!今回のテーマはこれや!


『熱暴走に気をつけよう!』


今回はセキュリティとはちょっと違うけど、パソコンを使う上で重要なことやさかい、覚えといてな。


バルバトスは相当無茶してパソコンが熱暴走してしもうたけど、注意せな普通のパソコンでも起こりうることなんや。


例えば、動画を見ながら絵を書くとか、ゲームをしながらビデオ通話するとか、ブラウザのタブを画面ビッチリに開くとか、そういうことで処理落ちすることだってあるんやからな。


それから、部屋の気温も重要やで。暑いの平気やからって扇風機で過ごしてると、先にパソコンのほうが熱にやられてしまうこともあるんや。


せやから、パソコンには無理させず、エアコンも使ってやったってな。もちろん、熱中症にならんようにするためにも、室温は重要やで!ほなな!


『サイバーセキュリティ魔法少女装少年デジナース』

第8話:決戦!バルバトス!

おわり

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サイバーセキュリティ魔法少女装少年デジナース デバスズメ @debasuzume

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