第86話 おっさ(略 ですが違法アップロードは叩きつけて落とします
形作られていくアルコーン。そしてそれを攻撃する勇者やドラゴン、フェンリルにハーピー、天使たちやアンデット軍団。世界が造物主に反旗を翻すとしたら、こういう光景なのだろうが。
随分とまぁカオスな光景だ。俺たちらしいっちゃらしいか。鼻血を垂らしながらそんなことを思う。アルコーンの中核部を探し始める。
……想定通りだ。
「さっき言った通りだ。人間がいるだろ?」
「それが、アダム・ワトソンとやらだと?」
「そうだ聖剣」
龍が不思議そうにこちらを覗き込む。
「しかしヒラガ、何故アダム・ワトソンがアルコーンの中核にいると断言できたのですか?」
「そもそもアルコーンのダウンロード元のSophiaを作ったのは俺たちなんだ」
ブレインインフォコンソーシアム……某大手IT企業が世界中のバイオ企業やら量子サーバベンチャーやら買いあさって作った企業である。
「人間の考え以上の高度な技術開発コンピュータにやらせようってな。そうすりゃ俺たち楽できる、そう思ってたもんだ。ところがだ」
「アルコーン、ですか」
「そうだ。まさか突然あんなもんが違法ダウンロード……いや違法アップロードされてくるとは思わなかったぞ」
「アルコーンも違法ダウンロードだの違法アップロードだの言われたくはなかろうが」
「俺に言わせりゃ違法アップロードだ!あんなもん!」
結局世界の破局がシンギュラリティによってではなく、どっかの高次元の存在にアクセスしたことが原因とか冗談にしても笑えねぇ。
「そしてアルコーンのヤツが俺を殺したんだな。アダムを弄ってな。アダムの方が有能だし、この世界を把握する端末としては利用しやすかったんだろうな」
「ヒラガを殺したのは何のために?」
「アルコーンがSophiaに反映されるのを、阻止できる可能性を考えたんだろう」
俺は龍に振り向いてそう応える。龍にユグドラシルの滴を差し出される。……そんなに悪いのか俺の状態は。
「あのアポカリプスは、アルコーンのオリジナルの配下を再現でもしたものかもしれないな」
ユグドラシルの滴を飲み干しながら呟く。
「しかし変態、復活したということはアルコーンの動きは静止しないのでは?」
「やれることはやってるからなんとも断言はできないが……」
アルコーンの攻撃は散発的で、明後日の方向になっているが……、どうだろう。
「……アダムを起こすか」
「どうやってですか?」
「接近してぶんなぐる」
「……結局そんな原始的な方法取るのか」
仕方ないだろ聖剣。他に思いつかん。
「アダムのいる辺りを攻撃してやる。アルコーンにとってもアダムを叩かれるのは痛し痒しだろ」
「場所は?」
スキャン結果を見て吐きそうになった……高度6000メートルとか、これるやつおらんやんけ。ドラゴンもハーピーもさすがにここは攻撃できない。
「……そういえばだ、この船の必殺武器だけど」
「なっ!いまの状況で撃っても転移はムリです!」
「落ち着け龍。転移させるため以外に使ってみたいんだが」
「何をするつもりですか?」
俺は無言でアルコーンの上に向かっていく。極彩色の光が周囲の雲を照らす。天国への光というつもりか?ふざけやがって。
「叩き落とす」
「えっ」
「おい待て」
「小出力でぶっ放して地上に落とす」
要はびっくりさせてこかせるってことだ。他に思いつかん。
「……できなくはないですが、再チャージへの時間が40分かかります!」
「構わん!地上の戦力なら抑え込める!」
「むしろ飛べない地上戦力を考えるとありか」
「そういうことだ聖剣!」
「分かりました!やってくださいヒラガ!」
「おう!……がっ……統一場接続空間転移砲最小出力……チャージ!これかよ……フィードバック!」
脳の血管という血管が膨れ上がる。取得できる情報が脳に反映される。世界の構成が脳内に展開されていくかのようである。
『おい下で戦ってる奴ら!すぐアルコーンから離れろ!』
直接脳からの通信を送りつける。
『えっ!?』
『いきなり言うな!!』
そりゃそう言う反応になるが仕方ない。フィードバック酷すぎる。吐きそうだ。脳の奥がガンガンする。これで最小出力だと!?
「……地を這えクソ野郎!!……いてぇ!!」
不快感に耐えて放った転移砲が、アルコーンの身体を猛烈な勢いで地面に叩きつける!重力加速度の比では無さそうだ。大丈夫かみんな。
『バカ野郎そういうことは先に言ってからやれ!』
『危うく死ぬとこだったぞ!』
『いてぇ!脳に響く!でも悪い!』
地上で戦っていた連中はなんとか回避できたようだ。そのあと再び攻撃に移ろうとしている。今のところはなんとかなってるな。
「再チャージまでの間にアダムを取り出して意識も取り戻す、そうすればコントロールが更に困難になるはずだ」
「そううまくいくといいが……」
「そういえば変態、アポカリプスは?」
あっ、アポカリプスは……アルコーンの真下にいやがったな。そのまま潰れていればいいが……いやそう簡単にはいかない筈だ。空間を押し広げてバリア形成するようなやつだぞ?
「スキャンしてみる……いる!いるが変なことになってやがる!」
「どうなってるヒラガ」
「アルコーンの中にめり込んでやがるか」
転移砲で加速したアルコーンが、アポカリプスのバリアに突っ込んだ形だ。バリアによってダメージも食ってるようだな。
「逆にこうなるとアダムが潰れてないかも心配になってきた」
「無茶しすぎです!」
龍のツッコミが耳に痛い。といってもこいつの弱点最早アダムくらいなものだろうが。
「アダムもスキャンする……アポカリプスのバリアがアダムに刺さってるぞおい!」
こんなことあるのかよ、アダムの奴死なないだろうな。死んだら死んだときとは思わなくもないが、寝覚が悪くないとは言わない。
「とりあえず接近してみるか」
「むちゃくちゃなことになってきたな」
そう言うな聖剣。いつものことといえばいつものことじゃないか。地上数メートルまで降下する。アポカリプスのバリアの間から、アダムの身体が見える。どうやら死んだりはしてないようだし、アルコーンが再生をさせようとしているようだ。
「まだ意識ないのかこいつは」
「むしろここまでのことしたら意識があってもとんでもおかしくないぞ」
「そうですね。結果的にこのままこの位置で固定できれば、アルコーンを吹き飛ばすことも現実的に可能性が出てきました」
それ自体はいいことではあるな。それにしても意識のないアダムとアポカリプスも巻き込むことになるのか。アポカリプスはまぁ吹き飛んでもらって全然構わないがアダムは……いやあいつ俺のことどう思ってた?
「まとめて吹き飛ばしてもいいかな」
「なんのことだ?」
「アダムだよ。あいつ自体に殺されたわけじゃないがよ、私怨はある」
「……私怨で吹き飛ばさないでください」
私怨はさておいても、アルコーン吹き飛ばさないと俺たちに明日はない。確実にアルコーンにダメージは通っているだろう。
「さて、あとは吹き飛ばすだけか。異世界にでもな」
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