第62話 おっさ(略 です、残念ですがここから先に通すわけにはいきません
ヒロシです。
黙示録の四騎士と四天王、多分国ごとに扱い的におんなじような感じだと思います。
ヒロシです。
これからこんなバケモノと戦うどころか、更に強いのと戦わないといけないとです。俺はいつ、のんびり研究生活できるとですか!?
ヒロシです、ヒロシです、ヒロシです……
「ちょっとヒロシ、大丈夫ですか?」
クリスにツンツンと頬を突かれて意識を回復できた。
「あ、あぁ」
「ちっ、こんな惚けた奴のせいで暗殺騎士を剥奪されたのか俺は」
「はいそこイチャイチャしなーい」
「そうですよ、ダメですよ」
「えっと、あの、そんなつもりはですね」
暗殺騎士チームにクリスがイジられている。この子はどこ行ってもイジられるね。イジラレとかそういう属性でも付与されているんじゃないのか、遺伝子操作で。
「ともかく公国の宮殿に向かおう」
「そうだな」
皇太子に連れられ、俺たちは無人の教会を後にしようとした時だ。
「……殿下」
「やはりか」
「えっと、えっ!?こ、これは?」
おいお前ら、俺を置いて話を進めるんじゃない。何か違和感を感じたのかみんな。ぶっちゃけ何にも感じないんだけどな俺。
「おい、何か来たのか?」
「気がつかないのか?こちらにバケモノどもが来るぞ、それも10体はくだらん!」
「……ヒロシ、これは……厳しそうですね」
それにしても、いくらなんでもこれだけの数をここに投入してくるってどういうことだ?
「殿下、やはり狙いは」
「反乱分子どもめ、四騎士を解き放つのが狙いか」
「そのようですね」
そういうことなのか?何考えてやがるんだ!俺ののんびり研究生活を返せよクソども。
「おい、俺の知識はサビついて固まってるから間違ってるかもしれんが、四騎士って、白騎士が攻撃兵器、黒騎士が農業破壊、紅騎士が戦乱、蒼騎士が疫病とか司ってるやつだよな」
「よく知っておるな……我が国でも一部しか知らぬ内容だぞそれは」
そうなのか殿下。だとするとそんなもん解き放とうとする反乱分子とやらはテロリストってレベルじゃ済まないだろうが。
「……ということは」
「この戦力でここで食い止めないといけないってことだ」
むちゃくちゃ言いやがる!!こうなったらバケモノどもを倒すしかないってことか?
「暗殺騎士よぉ、ロンギヌスぶち込んだら終わりなんじゃ?」
「弾切れだ。あれはそう乱射できるものじゃない。再装填一発に半月かかる。月の満ち引きの関係上な」
「撃ったのかよ」
「仕方ないだろ!王宮や人民救うためだったんだ!」
そりゃしょうがないな。ならロンギヌス分ここでキリキリ働いてもらうしかないか。
「ヒロシ、行けますか?」
「クリスは何体やれる?……怪我とかせずに」
俺の言の裏をクリスは気づいたようだ。ほっとくと死ぬまで戦いかねないからなこの子は。最小限の消耗で済ます。でないと今後の戦いに響く。
「……三体です。全力でいけば全滅も」
「それじゃ意味がない。勝ててもクリスを失うんじゃ全くな」
「でも」
「なら俺も二体は潰すか。暗殺騎士たちは?」
「……三体かな」
無理だな、これは。ならここはだ。
「よしわかった。みんな、逆に持ちこたえるだけならどのくらい持つ?」
「えっと、4時間は持ちこたえてみせます」
「……俺たちはもう少し短いか」
「平地での話か?ここ使えばどれくらい持つ?」
俺は教会を指差した。
「おいヒラガ!教会を潰す気か!」
「どのみち俺たちが全滅したら教会潰れるだろ聖剣」
「やるしかなさそうだな、何が狙いだ?」
暗殺騎士もやる気になってくれたようだ。
「俺とクリスで、ここに立てこもる。暗殺騎士たちは遊撃して撹乱してくれ。余裕があるなら敵を暗殺するなりしても構わない」
「わかった」
「殿下は王宮を目指してくれ。途中まで暗殺騎士たちに護衛してもらってくれ」
「うむ」
とんでもないことになってきたな。生きて帰って研究生活したいんだが。遠ざかっていく皇太子たちを双眼鏡で確認した後、俺は持ち物を確認し始めた。
「この中だと使えそうなのは……これしかないな」
「この前使ったやつですね」
「そうだ。こいつを、奴らの脳天に叩き込む。 弾はそれなりに用意できてるが……クリス、どうしようもなくなったら……一人で突破して、救援を呼んでくれ」
「えっ……それって」
「あくまで呼んでくるんだぞ。俺は生き延びるから」
そう言っておこう。そうでないと……こんなところでおっさんと二人で討ち死にとか嫌だろ?俺が嫌だ。死ぬなら、一人がいい。
「でも、出来るだけ、減らします」
「わかった。……さぁ、始めようか」
亜音速にまで速度を下げた、サブソニック・コイルガンにより、群がりくるバケモノどもの頭をクリスが狙撃してゆく。
「ヒット」
「はい」
双眼鏡で俺も戦果を確認しながら、少しずつバケモノを攻撃する。一体、また一体……戦闘が始まってから数分しか経っていないというのに、息苦しさを感じる。相手が人間でないからまだマシだがな。
バケモノどもこちらに気づいたのだろうか、三体の怪物が教会めがけて走りこんできた。
「くそっ、俺もランチャーで!」
「待ってください!いまっ!」
クリスがかなりの速度で先行していた一体を狙い撃つ。ひっくり返ったそいつに、後続のバケモノが引っかかる。二発目の弾丸が倒れ込んだ後続のバケモノの頭を貫いた。遅かったバケモノに、俺がランチャーの砲弾を叩き込む。爆発音と共に、三体目の首が吹き飛んだ。
「……終わり、ましたか?」
「ひとまずはな」
二人ともへたり込んでしまった。教会にあったビスケットと水で腹を満たす。まだ周囲に数体のバケモノがいやがる。夕暮れに紛れて狙撃を繰り返し、しばらくは安全を確保できるようになった。
「これで、終わりでしょうか?」
「そうとも思えないな」
「いつまで……続ければ……」
「クリス、少し休め」
「えっ、でも」
「俺なら徹夜は得意だからな。近づいてきたら起こしてやる」
「わかり、ました……」
俺の膝を枕にクリスが寝息を立て始めた。疲れているんだろう。かわいそうに。髪の毛もボサボサだ。目の下にクマもいる。
「ちっ……なんで……」
クリスを巻き込んでしまった自分に腹を立てている。おそらく彼女がいなかったら、今頃自分は生きてはいまい。それが、なお腹立たしい。
警戒センサーを教会につけているため、いざという時は俺でも奴らの存在は感知できるし、双眼鏡もある。奴らが視覚以外で感知できたらまずいが、幸いなことに怪我などもしていない。匂いは大丈夫だろう。
「さて。あとはどちらが先に来るかだな」
ここに篭城しているのは、奴らの狙いを叩き潰すのが目的だけではない。そう。どこかにいるというのがいいのだ。
翌朝。目覚めたクリスと簡単な朝飯を取り、俺はそのまま寝ることにした。今度はクリスが膝枕をしてくれている。ありがとう。
夕方目を覚ましたが、敵の姿は見えないという。このまま来ないようだったら逃げ出そうか、そんなことを思い始めている。
「明日来なかったら、ここから逃げよう」
「そうします、か?」
再びクリスを寝かせ、見張りを再開する。明日には脱出できそうかな、そう思っているとだ……朝靄と共に数十体の怪物と、そして人間の兵隊たちが現れた。反乱分子か?
「クリス……すまん。ここまでだ」
「えっ?ヒロシ?」
「約束どおり逃げ切ってくれ。頼む」
「イヤです!ヒロシも逃げるんです!」
「……無理だ、兵隊までいる」
「イヤだ!なんで!」
無理矢理クリスを追い出そうとしていると、突然クリスがおとなしくなった。行ってくれるか。……何故かクリスは空を指差している。
『まだ生きてるか!?死体なら回収するぞ!』
『何言ってんだこのアンデッドは……』
空からノーライフロードと、ドラゴンがやってきたではないか。なんだよお前ら……!来てくれたか……。
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