第61話 おっさ(略 ですが神を暗殺するとか世も末です
四騎士……という単語を聞いて、俺は転生する前のあの大企業たちのことを思い出していた。ああいうとこに就職したかったなぁ……(なお就職できても首切りも早い模様)
クリスが皇太子と暗殺者チームを見比べている。
「えっと、殿下。四騎士ってどういう存在ですか?」
「アイオーンが従えている破壊と滅亡を司る存在だ。黒騎士、白騎士、紅騎士、そして蒼騎士。それらが公国に封じられている」
そっちの四騎士かよ!?中二病罹患者が必ず通過するヨハネの黙示録(新約聖書では一時期、外典扱いしよーぜとも言われてたらしい。あんなんじゃそらそうなるわ)の。超級の危険物だろうが。
「もっとも危険度でいうなら、アポカリプスの方が遥かに上だがな」
「アポカリプス?」
また縁起でもない名前が出てきた。世も末だ。いや、アイオーン復活の時点でアイオーンの配下の何かが出てくるってのは想定の範囲内だが。
「破滅を司る存在だ。正体については分かってはおらぬが、一説には7つの頭を持つ獣とも言われておるな」
「大破壊ではこいつらのせいで世界は壊滅的な状況に陥った。しかし人類も諦めていたわけではない」
「そうなのか暗殺騎士」
「喋る剣よ、……元、だ」
聖剣は何やら唸っている。クリスは思案しながら暗殺チームに聞いている。
「えっ、でもそんな存在相手にとてもじゃないけど勝てませんよね?」
「神を暗殺するための兵器がありますの」
暗殺チームのロリ巨乳っぽい方が、微笑んで天を指差す。
「アーティファクト、ロンギヌスか」
「そうです殿下。我ら一族に伝えられている天の槍」
天の槍……待てよ、そういえば俺が魔王を核爆死させる前に、アランに小声で『ハカセ、空に気をつけろ』とぼそりと言われたことがあったな。しばらく何やらしきりと電波が送信されるので、試しに記録した電気信号送信したら、なんか空から隕石みたいなのが2つ衝突して近くの山に落ちたが。
「……そこのヒラガには上手く発射できなかった……何故だ!?」
「俺も発射したからだな、ロンギヌス」
「か、勝手に撃つなぁっ!!!」
撃つなっていうなら、ちゃんと二重三重のセフティロックかけとけよ。俺も撃ってビビったんだから。下手したら死んでたぞ。って待て。
「そういやお前、俺にロンギヌスブッパしたのか」
「……そうだ。魔王に匹敵する、いやそれ以上の危険人物だろうがお前は」
あっぶねぇよ殺す気か!?(暗殺する気満々)。しかもあれだとアランたちまで死んでだぞ下手したら。
「しかしそんなロンギヌスなんかあるんなら、魔王だって殺せるだろうが」
「……魔王城の位置がわからなかったからな。それに魔王城はさしものロンギヌスでも完全には破壊できなかっただろう」
「核爆弾なら余裕だったが」
「使うな!核爆弾使うな!!」
聖剣は核爆弾使うなというが、魔王退治にはちょうど良かったではないか。暗殺者が続ける。
「四騎士やアポカリプス、そしてアイオーン相手にどこまで通用するかはわからんがな。俺はこの帝国の混乱の元凶、アイオーン討伐で戦果を挙げ、帝国の暗殺騎士に復帰する」
「おう、頑張れよ」
「……お前のせいで暗殺騎士クビになったんだよ!わかれよ!!」
わかれよって言うけど分かりたくねえよ(死ぬし)。
「えっと、ひょっとして暗殺騎士さんはヒロシを暗殺する気、まだあります?」
「……正直ムカつくはムカつくが、色々と人々のために働いていると聞いて複雑だ。今殺すのに成功しても、多くの人にそれがいいことかはわからない」
「よかった……」
「おっ、ひょっとして勇者ちゃんはこの男に惚……」
暗殺チームのボーイッシュな方が変なことを言い出す。
「えー……趣味悪くないですか?」
「全くだな。勇者よ、俺も恋愛は自由だと思うが、こいつはやめておけと言いたい」
「そうだろ、な。分かっているな、暗殺騎士たちは」
暗殺チームの連中、むちゃくちゃ言いやがる。聖剣まで同意しやがって!!俺とクリスはそんなんじゃねぇし、だいたい俺が立場利用して強制するの、パワハラもいいとこだろうが。真っ赤になってクリスが手を横に振る。
「ちょ、そ、そんなんじゃ!?わたしはヒロシに烙印を!そ、それに変な人だけど雇用条件は考えてくれてま……」
「またまたぁ。あたしは別にいいと思うけど?まぁルインほどカッコよくないけど」
「えー、ティリーナさん、趣味悪くないですかそれ」
暗殺チームの連中……俺がこいつらの局部を痒くするため、薬剤に手をかけようかどうしようか考えていると。皇太子が両手を叩く。
「ふむ。仲良くなったようでなによりだが、おしゃべりはこの辺にして、四騎士を確認しに行こう。殺せるなら殺したいが」
確かにな。四騎士もアポカリプスも、そしてアイオーンも倒せるならそれに越したことはない。水爆くらいならやれるか?ツァーリ・ボンベ並みの水爆用意してぶち込むか。太陽並みの出力が出せるしなあれ。
「おい、いままた核爆弾作ろうと思ってないだろうな?」
「聖剣よ、お前俺のことなんだと思っているんだ?」
「魔王核爆殺犯」
「ひでぇ」
聖剣の俺に対する扱いも酷いんじゃないかと、ようやく最近気がついた。もっとも聖剣はクリスのもんだから、仕方ないといえば仕方ない。
さておき、俺たちは目的の公国教会にたどり着いた。周囲は無人になってるし、建物の一部は無残に破損しているときている。皇太子が何やら棒みたいなのを取り出した。クリスが顔をしかめ、聖剣は変に光る。おまけに受信機は変な音ガリガリ立ててうるさい。
「おい!そのうるさい音を出すのやめろ」
原因は皇太子の(多分)アーティファクトのせいだろうけど、暗殺者の言うとおりたしかにうるさい。スイッチを切ることにした。
「よし」
「……頭が、痛いです……」
「どうやら電……魔力の波を当てて扉を開ける仕組みだと見たが」
「ほう、判るか」
電波ガリガリ出してクリスの頭大丈夫だろうか?しかし俺がここに入るなら壁を一部ぶっ壊して回路繋ぐことにしてたろうから、皇太子が鍵持ってて助かった。
暗殺者たちがカンテラ片手に先導し、建物の中を歩いていく。人の気配はない。
「えっと……ヒロシ、すいません。わたし、風邪ぶりかえしたみたいです……寒気がします……」
「それは寒気じゃないぞクリス。……ここが寒いんだ」
「そのようだな」
皇太子も震えているが、そう、教会の地下にはおそらく氷漬けの何かがあると思われる。王国教会にあったアイオーンと一緒だ。
「殿下、ひょっとしてここにも氷漬けのやつがいるのか」
「そう、四騎士がいるはずだ」
そのまま冷気の強いところを探してみると、地下への階段への入り口を見つけた。入り口も凍ってやがる。凍った階段を滑らないように慎重に降りていく。そして、地下通路をしばらく進むと……巨大な四つの氷の塊があった。
「こいつらが四騎士か」
俺は騎士たちの身体を覆う氷を見ている。氷は非常に分厚く、とても溶かせそうにはない。溶かすと復活する、と言うことだろうか。
「いるのはわかっていたが、こんな連中をよく氷漬けに出来たな人類……」
暗殺者もそうぼやく。確かにな。どうやって凍らしたのやら。ロリ巨乳が四騎士を見ながら語り始める。
「私たちの伝承によると、人類は空を打ち据え地を凍らせ、そのまま騎士を氷漬けにしたと言われています」
「……やっぱ核使ったのかなぁ」
「すぐ核を使おうとするのやめろ」
聖剣はそういうけど、こんな人間よりはるかに巨大な人型の怪物、核で吹き飛ばせるなら吹き飛ばしたいだろうが。核の冬を引き起こして、それでそのまま氷漬けか。人工的に氷河期引き起こすようなもんだからな。被害半端ないけど、それ以上の被害が出そうならやむを得ない。
「核?あの魔王城を破壊したやつか。やめておけ」
暗殺者に呆れ顔で言われてしまった。理由がわからない。
「なんでだ」
「仮に凄まじい威力の攻撃を与えても、復元することがわかっている」
「ツァーリ・ボンベでもか?」
「なんだそれは」
「太陽と同出力の爆弾だ」
俺は空を指差していう。そいつなら吹き飛ばしたら復元もしない、そうあってほしいが。
「……威力の問題ではない。殺す方法がないからこうやって凍らせている」
「なるほどな」
殺せるものなら殺したい、か。ならこいつらがなんなのか調べるにこしたことはないな。早速いつも通りサンプルを採取するか。
「こいつらの身体の一部を取っていいか?」
「身体の一部!?」
一堂に何を言っているんだこいつ、という顔で見られる。だけど、こいつらが何か判れば、対処もできるというものである。
身体から離れた氷漬けの破片を一部採取し、すぐさまサンプルを各種溶液で抽出する。四騎士のDNA、ゲットだぜ!
「何をやってるんだかさっぱりわからん」
「奴らの設計図を奪う」
変なことやるのはともかく、理解してもらえるかどうかは結構大事だと思う。なので説明は限界までしたい。DNAが取れたということは、こいつらも生物の部分があるということだ。……おそらく、アイオーンの同類だろうな。エセ騎士どもを始末するにしても、中身が判るかどうかで対応も変わってくる。
「四騎士の討伐は今は無理か」
「はっ」
「ならばひとまずはここまでだ。公国政府と連携を模索したい。アーティファクトならかなり持ち出せた」
「で、殿下!?それは国宝の!?」
「構わん。こんなものより帝国臣民よ。だが……戦力は足らぬな」
俺たちはひとまず一度は王国に帰還し、ここまで得たデータを解析、弱点を周知したいところではある。公国に皇太子を届けたら一度帰還したい。
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