第16話 おっさ(略 ですがアンデッドでも死ぬまで殺します



 アンデッド軍団を悶絶させることに成功したが、ノーライフロードに怪訝な顔で見られている。


『あの爆弾……おまえ、何かを仕込んでいるな!?』

「ああ。俺発案でクリスが夜なべして作ってくれた電子爆弾だ」

ばくだん!?おまえらまた作ったのかよ!やめろぉ!世界が!世界がぁぁぁっ!!」


 落ち着けアラン。今回使ったのは原爆じゃないっての。魔王城吹き飛ばしたのがトラウマになってんのか?メンタル弱いんじゃなかろうか。


「違う違う。原爆じゃない。今回は電気……こっちの世界では魔法か、を爆発で引き起こし、巨大な電磁波……魔力の波みたいなもんだ、を発生させたんだ」

「爆弾の中に金属の輪っかみたいなのが入っているんですよね。それで魔力の波を起こすらしいです」

「で、でもなんでそれでアンデッドが苦しんでるんだ?」

「アンデッドに限らず、この世界の魔法的な存在を動かす仕組をぶち壊すシロモノだからな」


 電子爆弾で、EMPにより電子……魔力の回路を破壊することで、魔法がうまく流れないようにして動作を不調にさせたり、そもそも回路を破壊して動作しなくさせる。こちらの世界でもうまく行ったようだ。相手の親玉、何かを叫びながら暴れてやがる。


 叫び声と同時に、アンデッド達が動作を取り戻し始める。どうやらこいつ、アンデッドの復元を行なっているようだ。つまりこいつを始末しない限り、アンデッド軍団は再生し続ける可能性が高いな。


「しつこいですね!」

「簡単に倒せるわけはないと思ったが!」


 クリスと聖剣がアンデッドをなぎ倒しているが、疲労の色は薄くない。


「二人とも下がれ!ヤツに直接EMP弾頭をぶち込む!」

「でも!」

「それに至近距離だと、渡してるアンチEMPマントの効力にも限界があるかもしれん!サージ仕切れないぞ!」

「クリス!引くぞ!」

「くっ……はいっ!」


 そう、クリスも聖剣も魔力的な制御が様々に行われている精密機器なので、EMPなんぞブチこまれたらその能力が(良くて一時的に)使えなくなる。そこで対EMPマントとして金属を糸に絡めたマントを用意した。これに包まればEMPの電磁波をサージできるというわけである。それにしたって完全なわけでもない。


 アンデッドの親玉が俺の方を睨みつけてくる。何かをぶつぶつ呟いている。魔法の詠唱か?詠唱途中で潰してやる。照準レティクルにヤツを収め、射出機ランチャーの引金を引く。弾頭がヤツにまっすぐ飛んで行く……ヤツが左腕で弾頭を掴みやがった。掴んで防いだと思ったのか、口元に笑みが見える。


「甘いっ!」


 左腕の弾頭が炸裂した。ザマァない、時限弾頭だからな。弾頭を持っていた左腕が崩れ落ちる。一瞬だが、不死のはずのそいつがギョっとしたのを、俺は見逃さなかった。復元を始めた左腕に銅線を投げ込む。


 銅線が腕に取り込まれていく。アンデッドの親玉にパニックを引き起こすことに成功したようだ。慌てて腕から銅線を引き抜こうとするヤツを前にして、俺はさらに叫ぶ。


「アランっ!クリスっ!雷撃魔法を!」

「おおおおおっ!ライトニング・ランサーっっっ!!!」

「行きます!ダブルプラズマ・ボルトおおおおおっ!!!」


 避雷針のような電極に向けて、二人の放った高圧電流が放電される。いずれも大気ごと貫通するレベルの雷撃魔法だ。その電圧は推定10億ボルト。復元を始めた部分が黒焦げになっている。


「もぉいっちょおおおぉっ!!」


 黒焦げの部分以外にさらにEMP弾頭をもう1発叩き込む。繰り返される勇者たちの電撃魔法と、EMP弾頭の攻撃を前にして、ヤツの回復力も限界に達したのだろうか?グズグズと崩れ落ち始めるヤツの身体。


「やったか!?」


 おいバカやめろ!誰だよいまフラグ立てたの!?周囲のアンデッドたちが崩れはじめているが、逆にヤツは回復しはじめた。


『どうやら周囲のアンデッドを切り捨てるつもりか。自分の回復を優先させているのか』


 ノーライフロードの見立て通り、ヤツの回復力が高まりはじめている。周囲に供給していたエネルギーのパスを切ったな。それはそれで死亡フラグだな、悪役の。ヤツが何かを呟きながらこちらを睨んでやがる。


「取り込むねぇ……そうだな。そんなに取り込むのがお望みなら……テリオス、ちょっと耳かせ」

「えー……いや、やれなくはないが……」

「嫌ならアランに頼むしかないが」

「そういうとこだぞ」


 なんだよ藪から棒に。どういうとこだよテリオス。


「お前そんなんだから追い出されたんだぞ。アランはお前追い出すの渋い顔してたが」

「仕方ないだろ、俺は俺なんだから」

「とにかく、やるにはやってやるよ」


 そういうと、テリオスがアンデッドのウィザードのようなヤツを投げ飛ばして地面に転がし、両手両脚を刎ね飛ばす。ダルマになったアンデッドウィザードを、テリオスがこちらに投げつけてきた。


「よし!シオン!次はこいつに魔力をそそげるだけそそぐぞ。他のメンバーから魔力を渡す、トランスファー・マナだったな」

「そんなことをしたら危険です!魔力による爆発が!」

「その直前まで頼む。だいたい爆発したってこいつだぞ」


 俺はアンデッドの頭を叩く。アンデッドが憎しみの目で俺を見るが、俺は気にしない。呪えるものなら呪ってみろ。倍返し(物理)だ。


「うう……これだから追い出したはずなのに……」

「んじゃ他にいい手でも?」

「ええいもうわかりましたよ!やります!」


 シオンが周囲の魔法使いたちから、魔力を十二分にアンデッドの身体に充電……充魔力していく。魔力が蓄えられているうちに、アンデッドが光り始めた。俺はその間に他のメンバーに作戦を伝える。よしあとはこいつが!俺はアンデッドから手を離した。アンデッドの身体が親玉の方に引き寄せられていく。


「よし!みんな!あのとんでったアンデッドを吹き飛ばすぞ!吸収される直前に爆発させろぉ!!」

「……まだだ……うおおおおおおお!」

「吹き飛べぇ!」


 魔法と弓矢と、そして俺のランチャーが同時に手足なしのアンデッドに飛んで行き……一炸裂した!魔力の塊が爆発し、さしものアンデッドの親玉もついに力尽きたようだ。そのままアンデッド達が完全に崩れ落ちて行く。魔力が尽きたんだな。


「……勝ったな」

「……さすがに、疲れました」

「みんなよくやったな」


 背後から兵士たちの歓声があがる。集落をいくつも崩壊させかねないアンデッド達だ。被害という被害が出なかったのは僥倖というべきだろうか。



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今回の研究テーマはakita_komachiさんの「不死者をどこまで切り刻んでも生き返るのか。どういう復活の仕方をするのか」と南部さんの「異世界人がどれだけ魔力を溜めれるか死ぬまで魔力を溜めさせる」アイデアを参考にさせていただきました。ありがとうございます。

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