第2話 今までの高校生活

 家に帰ってきた勇太は、まっすぐ自分の部屋に行った。

 誰もいない家。

 勇太の階段を駆け上がる足音だけが、鳴り響く。

 まだ、午後2時だ。

 当然と言えば、当然だ。

 自分の部屋に入った勇太は、わずかに見える床だけを探して、つま先立ちでベッドに向かった。

 勇太の部屋は、かなり散らかっている。

 床が見えないくらいに、パソコンのパーツやら、本やら、麻雀の卓やらで、埋め尽くされていて、座れるのは、いつも、パソコンの前かベットの上だ。

 

 勇太は、ベッドに転がり、ふと、今までの学校生活に思いを更けていた。

 学校生活は、いたって普通だった。

 興味のある人たちだけで集まって、わいわいしている、平均的な普通の高校生だった。

 最近の学校での話題は、スマートフォンのゲームアプリの話だ。

 ただ、勇太の家は、あまりお金持ちではなく、スマートフォンは最新機種ではないし、電話会社も格安SIMだ。

 ゲームもほとんどが課金しないと、強くなれないゲームが多く、最新機種ではないので、動作が鈍く、容量も少ないので、興味を持ったら、インストールして、飽きたら、アンインストールするの繰り返しをしている。

 

 だが、話題作りのためと趣味に、3種類だけスマートフォンにインストールしているゲームアプリはある。

 そのゲームアプリとは「テキサスポーカー」と「麻雀熱闘倶楽部」、あと「ユニバーサル・ワールド・オンライン」だ。

 これらのゲームアプリを簡単に説明をすると……

 テキサスポーカーは、世界のポーカーでメジャーなテキサスホールデムのルールで、世界の人たちと対戦できるアプリである。

 麻雀熱闘倶楽部は、文字通り、麻雀をオンラインで対戦できるアプリである。

 ユニバーサル・ワールド・オンラインは、いわゆるMMOのRPGだ。

 どれも、一人ではない誰かが必ずいるゲームである。


 友達との会話は、もっぱらユニバーサル・ワールド・オンラインだ。

 いくら課金したとか、レアアイテムを手に入れたとか、こんなところに行ったとか、今度の冒険の話とか、そんな感じだ。


 ポーカーと麻雀は、昔からやっているので、その名残だ。

 特に麻雀は、正月になると、母方の祖父の家に行き、麻雀大会を毎年やっているくらいだし、放課後、たまに友達を誘って、家で麻雀していたりしている。

 もちろん、今は、賭けはしない。

 賭けをして、金銭が絡むと、大抵、人間関係が壊れるのを知っている。

 1年前、賭けのマージャンをして、お金を受け渡しを行った際、勇太が独り勝ちをした時、友人2人はきっちりお金を支払ったのに、残りの友人1人は、今は、お金がないと言い、結局支払われなかった。

 それから、関係がぎくしゃくして、校内で、見かけても、挨拶すらしない。

 とうとう、疎遠になってしまった。

 それ以来、賭け麻雀はやらなくなった。

 

 ポーカーのほうは、昔、父親とやっていた名残だ。

 日本ではメジャーではない、ルールがテキサスホールデムなので、友達を誘っても、断られるだけなので、リアルでは最近やっていない。

 

 麻雀とかは、いつも勇太の家でやっているので、招かざる人間にも耳に入ることがある。

 それが癇に障ったのか、昭夫は、勇太の嫌がらせをするようになった。

 ただ、やられたら、やり返すという性格の勇太は、真っ向から、受けることをしたが、力ではかなわないので、今回のように獲物(ナイフ)を使用したのだ。

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