第23話 撒けぬなら 逃げるしかないよね ホトトギス

 結局、後ろのミカミを撒くことができずに門のところまで来てしまった。


 門のところには、検査員という役割の騎士がおり、クエストに出かける冒険者や商売に来た商人や、様々な国を渡り歩いている旅人などの持ち物チェックをしたり、犯罪を犯したかどうかを確認したりしている。そのため、国から出るときは犯罪を犯していないかどうかと、本人確認をするため、入国するときよりはすんなりと出ることができる。

 だけど、今ここで説明した本人確認が一番面倒くさい。


 冒険者ならばギルドカードを提示すれば良いのだが、犯罪確認と本人確認の際に嘘発見器を使用されるため、嘘をつくことができないのだそうだ。

 先輩冒険者に聞いたのだから間違いではない。

 その情報が嘘だったら、先輩冒険者をぶっとばせばいいだけだし。


 そういえば、俺たちはちょっと前に、国の外に住んでいる貴族に手紙を出しに行ったな。

 その時は審査をしなかったのかどうかだが、一言で言うと、しなかった。


 別に犯罪を犯したからだとか、そういうわけではない。


 ただ単に面倒くさかったからだ。

 それに、ギルマスからは『誰にも見つかるな』と言われていたわけだし、門にいる騎士にも見つかっちゃいけないと思ったからな。


 ということはだ。

 俺たちは無意識に、無断出国と無断入国をしているわけだ。


 あれ?犯罪、犯してない?


 まぁバレても仕方ないよね。責任はギルマスにある。


 もしギルマスが責任を放棄したら?そん時はもう、どうにでもなぁれ、という魔法の呪文を唱えるしかないと思う。


 閑話休題


 門にいる騎士に会う前に、俺とフシミの姿を元に戻さなければいけない。

 俺は黒髪の学生に、フシミは茶髪の学生に。


 というのを後ろのミカミの前でやると色々と面倒くさいから、ここはひとつ煙幕で隠させてもらおう。


「ということで、煙幕を出すから、その間に姿と職業を元に戻すぞ」

「りょーかい」


 俺は右手を地面に向け、白い煙が軽く噴き出すようなイメージをし、魔力を放出した。

 すると、俺たちの足元から白い煙が立ち上り、あっという間に俺たちの姿を隠してしまった。


 よし。今だ。


 俺は元の黒髪男子へ、ミカミは茶髪イケメン男子へ。


「今の説明、いるかな?」


 なぜ俺のモノローグへ突っ込みができているのか理解に苦しんだが、そのことに関して文句を言ってもどうしようもない。もう諦めた。


 元の姿に戻っても、白い煙は晴れなかった。


「火事!?こんな道から!?」

「衛兵を呼べ!もしくは冒険者だ!!」

「その前に水持ってこい!!」


 そのせいで、火事と勘違いされてしまった。


「いや、明らかにレイヤの魔法選択ミスだと思う」

「自覚はしているが、どうしようもない時には責任転嫁せきにんてんかぐらいしたくなるだろう」

「なんか水の音がするんだけど」


 ミカミはキョロキョロとしながら俺に何か訴えかけているが、よく思い出してみよう。

 水を持ってこいと言った奴がいたことを。


「いいから逃げるぞ」


 せっかく門の目前まで来ていたというのに、どっかの誰かさんのせいで冒険者ギルドへ転移することとなった。

 まったく、誰のせいだよ本当に!


 俺だわ。

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