第22話 クラスメイトがドナドナされるのは見たくない
一度ギルドから退散し、職業を変えてもう一度ギルドから戻った俺たち。とりあえず、『怪盗』という職業になって、『認識阻害』『偽装』『変声』というスキルを使用しながら依頼を受けることにした。
『認識阻害』というのは、他者からの認識を阻害するというスキル。効果はそのままだけど、どんな姿か、そんな顔かという記憶は曖昧になるため、非常に便利なスキルだ。
『変声』というのは、声を変えるスキル。高い声から低い声までなんでもござれ。同じクラスだったから、ミカミという女子はフシミの声を覚えているのではないか?という心配から、このスキルを選んだのだ。
『偽装』の効果は実は、ステータスを偽るだけではない。姿さえも偽ることができるのだ。俺たちはそれを知らずに偽装スキルを取っていたのだが、ちょっと髪の色を変えてみようかなーと思い、スキルを使用したら変えることができたため、今は姿を変えている。
さすがに男二人だとバレる可能性があるため、俺は白髪のおじいさんに。フシミは金髪で長髪の女性に見た目を変えた。
どっちが女性に変装するか最初は揉めたのだが、平等にじゃんけんをしたところ、フシミが負けたためにフシミが女性役をやっているのである。
俺が負けなくてよかったぜ。
しかし、いざ偽装で姿を変えてみたところ、フシミが全くの別人になった。
何を言っているのかわからんと思うが、俺も何を言っているのかわからん。
だが、素材の良いフシミの顔は、女性の姿になっても違和感が出ず、逆に町の人に声をかけられるのではないかと思わされるような、そんな容姿になったのだ。
だが、実際に歩いてみても声はかけられないどころか、逆に微笑ましい雰囲気の視線をもらった。
よく思い返してみれば、俺は白髪の爺さん、そしてフシミが女性。
どっからどう見ても、年老いた父と若い娘が散歩をしているようにしか見えない。
ミカミにバレないよう、あえて見た目と年齢を離れさせたのだが、それが結果としてよかったのかもしれない。
その結果、一応バレなかった。バレはしなかったけど、なぜか俺たち二人の後を尾けてくるミカミ。え、何、何なの?
俺たちが受けた依頼は『薬草の採取』。
だが、依頼を受けたのが俺たちだとわからないように、依頼を受けた瞬間に『背景同化』を使用して、ギルドから出た。
そう、スキルを使用しながらギルドから出たのだ。
そしてそのあと、明らかに同一人物だと言えない姿になったのだ。
しかしだ。
なぜか俺たちの後をついてくるのだ。
おかしいねぇ。このまま国の外に出て採取をしたいのだけど、後ろをついてくるミカミ……ストーカー女を撒かなければ、国の外にすら出ることができない。
何か良い方法はないだろうか?
「シュミィ、何か良い方法は無いかねぇ」
「背景同化もダメ、偽装も意味をなさない。ならば後は、気配しか無いでしょう」
シュミィとは、女性の姿をしたフシミのことだ。
万が一を思って偽名を作り、呼ぶことで同一人物だとバレないように工夫したのだ。
しかし、気配か……。
ファンタジーで気配に関係する職業といえば、暗殺者だと俺は思っている。フシミは
それらの職業に変え、気配を消すことでミカ……ストーカーを撒く作戦で行こうかと思ったが、一つ重大な点に気がついた。
職業を変える場所がない。
いや、あるといえばあるのだが、個室のような他人の目が入らない場所がないのだ。
「認識阻害があるとはいえ、路地裏に見た目が親子の二人が入っていったらどうなると思う?」
フシミが神妙な顔つきで俺に訊いてきた。
「そりゃぁ……」
と答えようとして、ふと考えてみた。
若い女性と年老いた爺さんが二人して人気のない路地裏に……散歩だと思う人ならまだしも勘違いする人間だったら……うん。色々な意味で誤解されるね。
どんなこととは言わないけど。
「そりゃぁ……大変なことになるね」
「でしょう?」
チラッと後ろを見ると、ミカミは一定の距離を保ちながらついてくる。
そう、一定の距離だ。
俺たちが左へ移動しようものなら彼女も左へ移動し、俺たちが右へ移動しようものなら彼女も右へ移動する。
何か気配に関するスキルを使用しているのではないか、と勘ぐってしまうほど、正確なのだ。
「いっそこのまま憲兵にでも、ストーカーとして訴えてしまおうか?」
「いや、さすがにクラスメイトがドナドナされるのは見たくない」
俺の妙案を、フシミは首を振りながら却下した。
じゃあどうしろっていうのさ!?
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