第20話 死ぬかと思った

 結果から言って、フィン師匠の魔法ラッシュから無事生還した。


 いやいや、余裕で避けていたわけじゃないんだぜ?ギルマスからの尋問(?)中ずっと正座だったせいで、足は痺れるわ全然動けないわ走れないわで大変だったんだ。

 日本人ならわかるだろ?え、慣れてるからわからない?


 くっ……召喚されるまで実家で正座をサボっていた俺に文句を言ってやりたい。


 ところで、この世界にも曲芸師っているんだな。なに、職業にあったからさ。


 それで、俺がこの魔法ラッシュから逃れた職業が曲芸師なんだ。

 スキルは、膝立ち移動、神回避、逆立ち移動の三つだった。


 いや、神回避はいいとして、膝立ち移動と逆立ち移動は名前の通り、膝立ちのまま移動するスキルで、逆立ち移動は逆立ちしたまま移動するスキルだよ。

 まあ、それを使ってうまく逃げることができたわけだ。


 魔法は使わなかった。


 いや、何のために使えるようにしたんだ!とか言わないでくれ。

 戦闘経験のない俺が、隙がなく確実にキレている銀ランクの冒険者(戦闘経験あり)に魔法が打ち込めるわけがないだろうが。


 フシミ?

 ああ、あいつは何もお咎めなしだってさ。俺と違って、相手を煽ることはなかったらしいから。俺?ええ、避けている間も煽ってましたよ。おかげで、魔法が飛んでくる間隔が短くなって焦ったけど。


 とりあえず、魔力切れで倒れているフィン師匠に、疲れを取るような魔法をかけて戻って来た。

 詠唱?いや、名前も知らないのに叫べないでしょ。

 魔法は想像力が大事。これ重要。


 でだ。俺たちは今、やっと昼食……いや、もう夜だから夕食をとっている。ギルドじゃないぞ、宿でだぞ。


 そして、部屋に戻ってステータスの確認をした。


 フシミは『剣術』のレベルが5になっていた。しかし、他にも『槍術Lv.3』『斧術Lv.2』『槌術Lv.1』『鎌術Lv.1』なんてものが増えていた。

 フシミよ。お前に何があった?


 俺は『魔力操作Lv.MAX』だけだった。


 ねえ、俺だけおかしくない?

 なんでフィン師匠に魔法を教授してもらったのに、スキルが一つしか増えてないのかな……?

 文句言ってやる!!


 そう思い、フシミの制止を振り払ってギルドに行って、丁度いたフィン師匠に文句を言うその直前、俺の危険察知に反応があった。


 急いで足を止めると、目の前のフィン師匠に舌打ちされた。


 何事かと思って下を見ると、俺の足の一ミリ先に何か魔法陣が設置してあった。

 そう、丁度俺の足の大きさくらいの魔法陣である。


「ようレイヤ……後もう少しでれたのに、なぁ?」


 顔を赤くして酔っているであろうその言葉に、俺は彼女へ酔い冷ましの魔法をかけてから『背景同化』を使って宿へと逃げ帰ったのだった。


 うん。はっきり言おう。


 死ぬかと思った。


 相手を煽るの、ちょっと控えようかな。

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