第14話 煽り耐性っていうスキル無いかなぁ

「フィン師匠」

「だから!フィンって!呼ぶなっ!!」

「いいじゃ無いですかフィン師匠。可愛いと思いますよ」

「かわっ!?」


 川じゃなくて、可愛い。

 一体何を言っているんだこの師匠。


 俺は今、フェインスター師匠、略してフィン師匠に魔法を教わろうとしているのだが、先ほどフィン師匠が完全に怒ってしまったため、なかなか授業が始まらなくて困っている。

 いや、原因は俺にあるんだけど、こうなんていうか、いじりがいがあって楽しくなってしまった。


 反省と後悔をする前に、反応が面白い。


 しかし、受け答えをするたびに魔法が無詠唱で飛んでくるもんだから、俺はなんとか避け続けている。


 嘘つきました。余裕で避けまくってます。


「当たらねえ!どうなってやがるんだコイツ!!」


 黒色の禍々しい球や、紫色の毒々しい球。さらに赤色の燃えている球や、水色の凍った球など、様々な球が飛んでくるが、俺は余裕のよっちゃんで避け続けている。


 無理もない。俺の今の職業は『村人』。スキルレベルが上がったため、スキルが三つ取れるようになったんだが、今回は『偽装』『動体視力』『神回避』というものを取ってみた。

 『偽装』は王城から抜け出す時にも使ったアレ。ステータスを偽装できるスキル。

 『動体視力』ってのは名前の通り、どんなに早いものでも目で追いかけることができるスキルだ。

 そして『神回避』ってのは、回避スキルの上位互換で、どんなにスレスレでも一瞬だけなら当たり判定に入らないっていうスキル。つまり、避けきれなくて一瞬だけ当たる攻撃はダメージにはならないってことだ。まあ『動体視力』のおかげで避けられているけどな。


 っていうか、この世界の村人って本当にすげえよな。勇者の仲間になんで村人がいないんだろう。不思議だ。


「しかも!本当にコイツ村人か!?職業は村人なのに、この動きはおかしいだろ!!」

「フィ……フェインスター。相手を見た目や職業で判断しちゃいけないんだ」

「うるせえ!いくらギルマスでも、その言葉は無理があるだろ……目を逸らすんじゃねぇ!!」

「仕方ないだろ。攻撃系のスキルを持っていないだろうコイツのランクは、例外の黒ランクなんだから」

「攻撃系のスキル持ってないのに黒ランクとかおかしいだろ!なんで灰ランクにしなかった!?」

「実力がわからんからだ!」


 なんか言い合っているけど、休まずこちらに魔法を飛ばしてくるフィン師匠。魔力ってどれくらいあるんだろうか……いや、むしろ普通の冒険者って大体どのくらいの魔力を持ってんだ?

 そもそも、俺とフシミのステータスには、体力と魔力が表示されていないから、一般人が持っている魔力の量はわからないんだよな。


 とりあえず、煽っておこう。


「ヘイヘーイ、疲れてきているんじゃないかー?」

「ヤロウ、ぶっ殺してやる!」

「フェインスター!落ち着け!!訓練場が壊れる!!」

「放せギルマス!アイツ殺せない!!」

「殺すな!」


 ギルマスに抑えられているのに、球系統だけでなく、ビーム系統の魔法まで撃ってきた。いやー、煽るって面白いな。相手を煽れるほどのスキルがあるとき限定だけど。


「ところでギルマス、煽り耐性ってスキル無いの?」

「あったらこんな状況にはならんだろ!?」


 何言ってんのコイツって顔された。解せぬ。

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