第2話 カレーライスに何入れる?

 異世界に来て驚いたことが、親友の職業が自分と同じ『モブ』だったことと、カレーライスの具が同じだったことだろう。え、二つ目は関係ないって?そんなことはない。俺とフシミは心が通じ合っているのか、カレーの具はキノコだった。これが親友だからこそなせる技だろう。


 冗談はさておき、フシミとステータスを見せ合っていたら、スキルも固有スキルも職業も全て同じだということが判明した。モブとはなんぞや?脇役みたいなものか?


「いや、正確には主役の背後にある背景みたいなものでしょ」


 背景、はいけい……拝啓?


「手紙でも書くの?」

「なぜ俺の思考が読めたんだ」


 親友のこのような謎の行動に疑問を持つが、やはり理解できない。どうやって他人の思考を読んでいるのかもわからない。


「いや、背景って言って自分でも思ったから言っただけなんだけど……まさか本当に考えているとは思わず」

「つまり、俺とお前は同類ってことか。ってことは、クラスでも目立たないようにしてるんだろ?」

「もちろん!面倒だからね!」


 目立たないようにすることの方が面倒だということに、こいつは気づいているのだろうか。俺は気づいてもやるが。


 なんか周りがざわついている。何かあったのだろうか?


「あ、代表のマコトの職業が勇者だったみたいだよ」

「何でそんなことがわかる?」

「だってほら、あれ見て」


 親友の指さした方を見ると、何やら白く濁ったような水晶玉が、何やら豪華な台の上に乗せてあり、マトコだかマコトだかが手をかざしていた。そしてその上には、トマトだかマトマだかのステータスらしきものが浮かんでいた。


 *****

 マコト

 種族:人族

 Lv.1

 職業:勇者

 体力:500

 魔力:500

 <魔法>

 火玉・水玉・風玉・光玉

 <スキル>

 詠唱省略・魔法無効(10)・状態異常無効(10)

 <固有スキル>

 聖なる波動

 *****


 何だろうか、あれに手をかざせば、相手にスキルや職業を見せることができるのだろうか?


 しかし、やはり王様一人しかいないためか、何か迫力に欠けるな……他の人はいないのだろうか?


「いるよ、ほらあそこ」


 親友が次に指さした方向は、召喚された場所の後方。壁だと思っていたが、どうやら隠し扉だったらしい。隙間が空いている。誰か覗いているのだろうか?

 フシミを見るが、その行動に不思議に思った。


「指さしてたら気付かれるんじゃないか?」

「大丈夫だよレイヤ。スキルを使ってるからね」


 スキル?『背景同化』とかいうやつか?いや、多分『スキル巻き込み』ってのも使ってるな。俺自身、スキルを使うって事を意識してないからな。

 でも迂闊に近寄らん方がいいな。スキルの範囲がわからんし、とにかく相手がどんな能力を持っているかもわからん。それに、異世界だから、何があってもおかしくない。


「そういえば、さっきから王様って無表情だよな」

「ほんとそれ、僕もそう思った」

「こういうのって、絶対に何かあるよな」

「ほんとそれ」

「食事に毒盛られたり、洗脳されたり、暗殺やら催眠やら」

「うんうん」


 異世界……いや、何か偉い身分になった人間に起こる事件の候補を挙げていると、何か絶対起こるかもしれないという予感がしてきた。何でかって?異世界だし、あってもおかしくないよね。


「ねえレイヤ、何か怖くなってきたよね」

「そうだなフシミ、俺も怖くなってきたぜ」


 とりあえず、王様とか誰かにスキルが判明する前に、どうにかしてここから出て行く、いや追い出されるようにしなければと思い、スキルの効果を調べてみたら面白いことが書かれていた。


 *****

 職業変更Lv.1


 自身の職業を変更することができる。また、その職業に関係するスキルを取得することができる。最大で24時間だが、途中で解除することもできる。

 ただし、職業を解除した際、同じ職業とスキルは24時間取得することができなくなる。

 レベルに応じて、選択した職業のクールタイムが短縮されたり、取得スキルの数が増えたりする。


 Lv.1…24時間・2つ

 *****

 スキル巻き込みLv.1


 スキル使用時、相手もスキルの効果を発生させることができる。

 レベルに応じて巻き込める人数が増える。


 Lv.1…一人

 *****

 背景同化


 背景と同化することで、相手に気付かれなくなる。

 気配を消すだけでなく、魔道具や魔法にも認識されなくなる。

 任意で効果発動・解除可能。

 *****


 これを見た瞬間の俺たちの思考。


「「(これはいける!!)」」


 知ってるか?カレーライスとキノコ類は相性がいいんだぜ?

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