第386話 シシトが殺される

「駕篭獅子斗は俺には殺せない。シンジも、殺せないから殺される。俺たちじゃダメなんだろ。だったら、殺せるヤツに任せるしかない」


「もしかして、予言士でも呼びますか? それとも、武士? ああ、義賊も知り合いでしたっけ?」


 セラフィンが語るのは、世界最強の三人。


「無職はさすがに呼べないでしょうが……全員殺されますからねぇ」


「いや、あの人達よりも適任はいる」


 復活したシシトが、体を動かし、頭を動かし、コタロウの方を見る。


 そして、驚愕した。


 コタロウの隣に、二人の少女がいたからだ。


 一人はドラゴンの翼を生やした少女。今夏陽香(いまなつ ひろか)。


 そして、もう一人は、駕篭獅子斗の妹。


 駕篭猫々子(かご ねねこ)だ。


 ヒロカとネネコ……いや、ネネコを見て、シシトは呆けたように動かなくなり、すぐに感涙し始めた。


「ネネコ! ネネコ! よかった!生きていた!無事だったんだ! どこにいたんだ!! お兄ちゃんは、ネネコがいなくなって、心配で……そうだ、怪我はしていないか!? すぐに、ヤクマ先生に診てもらおう! おいで、ネネコ!!」


 本心から、ネネコを気遣い、ネネコのためを思い、シシトはおぞましい提案をする。


 そんなシシトの言葉にネネコの体は自然と震えた。

 歓喜ではない。


 恐怖だ。


 怖気だ。


 嫌悪感で、ネネコの目に涙が貯まる。


「……殺す」


 三文字で、ネネコは実の兄の処刑を決定する。


「私もいっしょにするよ」


「……ごめん」


「私も、許せないから」


 ネネコとヒロカは、二人で手をつないだ。


「……あ、君は、もしかしてヒロカちゃん? ネネコの友達の……君も、大丈夫? 具合が悪いなら、ヤクマ先生に……安心して、何があっても、僕が守るから」


 ヒロカを見て、シシトの顔がほころぶ。


 その顔には、はっきりと欲情が浮かんでいた。


「……『変身』」


 シシトを無視して、二人は言った。


 すると、彼女たちが着ていた制服が光となって消えていく。


 そして、あらわになったのは、彼女たちの一糸纏わぬ姿。


 その後、魔法少女と呼ぶべき可愛らしい衣装に身を包み、彼女たちの変身は完了する。


「あ……なな、何をしているんだ、二人とも」


 ネネコとヒロカの変身シーンを見て、シシトが顔を赤らめる。


 実の妹の、女子小学生の裸に反応したのだろう。


 注意はしているが、その目ははっきりと二人の事を見ていて、覆っている指の隙間は広く空いている。


 つまりは、性欲の対象として、シシトは二人を認識していた。


「そんな格好をして、おにぃいいいいいいいいいんんんんんん!????」


 ゆえに、シシトの頭部が膨れる。


 彼女たちが使用している変身道具、杖は、ネネコとヒロカ、二人に対する『性欲』に反応して攻撃する武器である。


 ネネコとヒロカは、女子小学生ではあるが、その容姿は美しく整っている。


 容姿が良ければ、男子児童の見た目をしていたコタロウや、男性の肉体で作られたマドカそっくりの『男の娘』でさえ『愛する対象』に入れるシシトである。


 彼女たちは、充分にシシトの『愛する対象』に……つまりは、性欲の対象に入っていた。


「おうぅおいいいいはぁあああああああああん!!」


 膨れた頭部が弾けて、シシトは絶命する。


 だが、すぐに弾けた頭部が集まり、またシシトの体を形成する。


「はぁ……何んんんんぐぅうううういいいいいいいいいいいいい!?」


 そして、また頭部が膨れ上がった。


「この杖は、私たちに対しての『性欲』に反応する。正確に言うと、『性欲』を武器にして攻撃している。つまり、私たちに発情している間は、永遠に頭部が破裂し続ける。死に続ける」


「ねぇええんねえええええええええこぉおおおおお」


 また、シシトの頭が弾けて消えた。


「……これ、やっぱり私の裸に反応したのかな?」


 ぽつりと、ネネコがつぶやく。


「私も一緒に変身したから、私かもしれない」


 そっと、ヒロカはネネコを抱きしめる。


「でも、どっちにしても、私たちの裸に反応するようなヤツは……ロリコンは、死ぬべきだよ」


「そうだね……ロリコンでも、シスコンでも……気持ち悪い」


 冷たくそう言い放つと、二人はシシトの姿を見ないようにして、コタロウの元へ向かう。


 また復活したシシトは、すぐに頭部を膨れさせ、はじけ飛んで死んだ。




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