第310話 ユリナが強い
「どうするも何も……シンジはこの程度の氷柱にどうにかなるような人間じゃないですからね」
「……うわー、信頼されているね、シンジ君」
「もちろん、エリーさんも」
ユリナが手を広げると、巨大な氷柱がゆっくりと集まり始めた。
10 20 すぐに何本あるのか数え切れない量の氷柱が、まるで城のように、空を覆う。
「……マジで? そんなの用意していたの? えっと、流石に多くない?」
「時間はあったので。エリーさんが地上に罠を仕掛けていたように……空に氷柱を仕込んでいました」
エリーは、呆れたように乾いた笑みを浮かべると、全力で逃げ出す。
氷柱が落ちてこない場所を探す方が難しい量だ。
普通に、命に関わる。
「ちょっと、ちょっと! 本当にこの量の氷柱を、小さくなったシンジ君も避けられると思っているのかな!?」
「……まぁ、少々ムカついていることもあるので、多少は怪我をしてもしょうがないかなとは思っていますよ?」
「シンジ君! ユリナちゃんに何をしたのかな?」
「何もしていないと思いますけど……」
とぼけた顔で、シンジが答える。
シンジの回答に、ユリナは笑顔を浮かべる。
「そういうところです」
ユリナが指を軽くならすと、氷柱が一斉に落ちてくる。
「ぎゃーーーー!?」
エリーの悲鳴と共に、氷柱が地面に触れた瞬間、至る所で爆発が発生した。
爆発は、エリーが仕掛けていた罠が誘爆したのだろう。
「……さてと……」
全ての爆発が終わったあと、ユリナは、ゆっくりと自分が落とした氷柱の上に立った。
「時間は残り10分を切っています。逃がすつもりはないので、出てきてください」
「……ちえー。さすがにこのまま時間切れは難しいか」
ばさりと布を翻す音と共に、エリーが姿を現す。
両手には、大きめの自動小銃が握られていた。
「……シンジはどこに?」
エリーが抱きしめていたはずのシンジがいない。
そのことを問いただすと、エリーは笑顔で答えた。
「姿を消せるマフラーで全身を巻いて、近くに放置しているよ。危ないから」
「……つまり、人質ですか。私が、さっきのような広範囲の攻撃をしてこないように」
「おお、話が早いね、ユリナちゃん。さすが火洞さんの娘さん」
自分の意図を、説明しなくても理解を示したユリナに、エリーは素直に賞賛を送る。
「……でも、勝てるつもりですか? 私の広範囲の攻撃を潰しても、そちらも用意していた罠を潰されたはずですよ? この氷柱で」
「そうだね。正直、用意していたモノは全部台無しにされたけど……それで勝てると思われるのは心外……だね!」
エリーは、大型の自動小銃を構えると、引き金を引いた。
同時に、ユリナも杖を前に出していた。
親指の先ほどの大きさの氷の球が発射され、無数に発射されたエリーの銃弾を難なく落としていく。
「……これ、普通なら一丁で戦車を解体が出来るんだけど。そんな杖一本で処理しちゃうのか」
ユリナの強さに、エリーは呆れたように笑っていた。
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