第304話 コタロウがヒロカとネネコと話す2
「おっ。予想通り豊橋ちゃんと飾堂ちゃんは手を組むのか」
ミユキとミナミのやりとりを見ていたコタロウは満足そうにうなづく。
ちなみに、手を組むのはルール的にアリだし、二人で抱きついていれば二人が勝者になる。
そのことを想定していたからこそ、コタロウは勝者の条件をかなり大ざっぱに規定していたのだ。
「二人で手を組んでも、常春ちゃんや水橋ちゃんには勝てないだろうけど……一時間、逃げ切るだけなら可能性はある。シンジが渡したプレゼントもあるしね。二人はどう思う?」
コタロウは、ごく自然に、隣に座っている二人の小学生に話を振った。
ヒロカとネネコは、コタロウに声をかけられた瞬間、ビクリと震えた。
「えっと、その……」
「いや、あの……」
完全に、コタロウに対して苦手意識が植え付けられた二人は、急なコタロウからの質問に、うまく答えられないでいた。
そんな二人に、なぜか満足そうにうなづいて、コタロウはまた目線を下に向ける。
「そろそろ15分……常春ちゃんと水橋ちゃんもシンジを探しに行かないといけない時間だけど……思ったよりも膠着しているね」
激しい戦闘音を出しながら、セイとユリナの戦いは続いていた。
セイは花びらの形をした半透明の物体と共に突撃し、ユリナが飴の形をした杖を振ると、飴のような透明な物体が、セイが出した花びらを打ち落としていく。
突撃したセイの拳と、ユリナの飴の形をした杖ぶつかり、爆発のような衝撃が起こる。
こんな攻防が、15分続いているのだ。
「これじゃあ千日手……いや、ああ、なるほど」
二人の戦いを見ながら、コタロウはあることに気がつく。
「なるほど、もう二人とも仕掛けているのか。ちょっと目を離した隙に。やるね」
コタロウは実にうれしそうに顔をにやけさせる。
そんなコタロウに、おずおずと申し訳なさそうにしながら、ネネコが質問した。
「……あ、あの」
「ネネコ?」
「ん? どうしたのかな?」
コタロウが振り向いた瞬間、再びびくりと縮み上がった後に、息を整えコタロウに向かってネネコは言う。
「どうして……その、明星さんは、こんなにモテるんでしょうか?」
「ネネコ!?」
ネネコの唐突な質問に、コタロウは一度目を見開いたあと、大きく笑った。
「あははは……!シンジがモテる理由か。シンジがモテるって、シンジが聞いたら全力で否定するだろうな。学校では同学年の女子に害虫や寄生虫みたいな扱いをされていたからね」
「え? なんで?」
「明星さんが? どうして?」
昔、シンジが女子から嫌われていたという事に、ヒロカとネネコは驚く。
「ある一人の低脳な女が、シンジに、自分の大切な人たちが奪われたって勘違いしてねぇ。それで、そいつが色々したんだよ。もっとも、シンジ自身は、そのことを気にもしてないけどね」
コタロウは終わった話だと軽く流す。
「で、シンジがモテる……今、この場にいる女の子達の興味や好感度を一身に集めている理由だけど……二人はなんでシンジが好きなの?」
「はいっ!?」
「……へ?」
ヒロカは顔を真っ赤にし、ネネコはきょとんと顔を固める。
「わた、わたしは別に、明星さんのことを好きとじゃ……いや、スゴい人だと思うし、尊敬……? うん、尊敬しているけど……」
「私も、別に好きとかじゃないんですけど……」
「それでも、例えば今生きているって分かっている男性と行動を一緒にするなら誰がいいか、って聞かれたらシンジって答えるでしょ?」
コタロウの質問に、ヒロカは顔を赤くしたままだまり、ネネコは真面目な顔で思案する。
「……そうですね。というか、男性なら、明星さん以外と一緒にいるなら一人がいいくらいですね」
「……私は、いや、私もそうだ、な」
ヒロカは、ポツリポツリと答えた後に、小さくつぶやく。
「明星さん以外の男は殺しそうだし」
二人の答えにうんうんと軽くうなづきながら、コタロウは続いて聞いた。
「じゃあ、二人はなんで、シンジのことをそう思うのかな?」
この質問に、ヒロカとネネコは目を合わせた。
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