第302話 ミユキとミナミが手を合わせる
「こわっ!こわっ!!こんだけ離れても音で鼓膜が破れそうなんだけど!! どんだけ激しいのさ!!」
「あのバカ女、胃袋だけがバカだと思ったら、こんな馬鹿デカい音出しながら戦って……戦闘バカかよ!!」
セイとユリナの戦いから逃げるように、必死にミナミとミユキは走っていく。
ビリビリと肌で感じる戦闘の激しさに、寒気を覚えながら、ミユキの悪態は止まらない。
「くそ……冗談じゃねーぞ。あんなヤツを相手に、どうやって明星さんを……」
「え、何か言ったミユキン?」
「何も言ってねーよ!」
戦いの音で聞こえなかったのか、ミナミがミユキに顔を近づける。
「あんな強い子たちから、小さくて可愛くなった明星さんを守るなんてどうしたらいいんだろう。いや、絶対守ってみせる。だって、私は明星さんのことが好きだから!!って言ったの?」
「そこまで言ってねーよ! このバカ!!」
ミユキの反論を聞き、ミナミは楽しそうにニヤニヤと顔をゆがませる。
「へー……そこまで、ねぇ。へー……」
「くそっ……コイツ……」
「まぁ、あのショタ明星さんはヤバかったよね。手の届く範囲にいたらギュッて抱きしめたくなるくらいに」
ぎゅーと抱きしめる動作をしながら、ミナミは語る。
「……いや、まぁ……そうだな」
「おっ? 認めたねミユキン。認めたねミユキン!!」
「うるせーぞ! 二回も言うな!!」
「そりゃ大切な事だから……って、ミユキンストップ!」
「へ? うおっ!?」
突然かけられた静止の声に、ミユキは慌てて立ち止まる。
ミユキの眼前にあったのは、人間の体。
「……えっと、これ、昨日来た子、だよね。確か百合野ちゃんだっけ」
マドカが、逆さ吊りの状態で、木に引っかかっていた。
「び、びっくりした」
突然人の体が目の前にあって、驚いたミユキは涙目になっていた。
一方、ミナミは逆さ吊りになっているマドカをマジマジと見つめる。
「……うわぁ。白目向いてるよ。スカートもめくれてパンツ丸出しだし。さっきの爆発で飛んできたのかな? この子、私たちのクラスにもファンがいるくらい可愛いって評判だったけど……なんでこんな悲惨なことに」
つんつんと、ミナミはマドカの頬をつつく。
完全に気を失っているようで、反応がない。
「……と、とりあえず下ろしてやろうか。なんか可哀想だし」
驚きからなんとか落ち着いてきたミユキは、ミナミに提案する。
「そうだねー。あ、でもちょっと待って。パンツを脱がせるから……」
「なんでだよ! そして何をしようとしているんだよ!!」
マドカのピンク色のパンツに手をかけているミナミを、ミユキが静止する。
「え? いや、こんな可愛い子のパンツの中身ってどうなっているのかなーって。ミユキンは気にならない?」
「ならねーよ! どういう思考をしているんだよ!! いいから下ろすぞ!」
「えーもったいないなぁ。こんな機会めったにないのに……」
ぶつぶつと文句を言いながら、二人で協力してマドカを木から下ろす。
そして、マドカを横たえると、二人は自然と手を合わせていた。
「どうか、安らかに……」
「……いや、いや、コイツ死んでねーからな!? なんか私も自然と手を合わせていたけど、傷一つないから」
慌ててミユキは、合わせていた手を離す。
「でも、この子。ヒロイン枠としては死んだというか、完全にギャグ枠になっているんじゃ……」
「よく分からんけど、なんだよギャグ枠って」
「ほら、ギャグ補正で、傷一つないし」
「傷がないのはギャグ補正とかじゃなくて、明星さんからもらったプレゼントの効果だろ、多分。というか、服を脱がせるな!!」
うえっへっへ……脱ぎ脱ぎしましょうねーとか言いながらマドカの服を脱がせようとしていたミナミの頭をミユキがスパーンと叩く。
「おまえ、どんだけコイツの服を脱がせたいんだよ……」
「痛い……」
ミナミはミユキに叩かれた頭をなでる。
「ったく。お前、そんな変態だったか? 学校じゃそんな素振り一回も見たことないぞ」
ミユキは呆れたようにミナミを叩いた手をさすりながら言う。
「そんなミユキンも、ここまでツッコミ力が高いなんて……そのツッコミ力、どこに隠していたのか……」
「隠してねーし、ツッコミ力も持ってねーよ。でも、お前、彼氏がいたよな? 彼氏にもそんな変態見せていたのか?」
ミユキの質問に、ミナミはきょとんとした顔を見せた。
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