第5話 技能が買えた

 シンジは次に『総合販売ウルトラ』を起動する。

 ここでは、ポイントを様々な物と交換出来る様だ。

 たとえば、『一日分の食料』は50Pで売っているし、先ほどとは逆に、一万円札を100Pで交換出来た。


 他にも、武器や、薬から日用雑貨、玩具まで色々な物をジャンルごとに選べたが、そんな中、気になるのはやはり『技能』の項目である。


 技能は、さらに分類されていた。


 『魔法』『戦闘技術』『生活技術』『その他』である。

 シンジは、『その他』の項目を見てみる。


(レベルが上がって、ステータスが上がるなら、まず探しておくべきなのは……)


獲得経験値増加  3000P

必要経験値減少  3000P

レベルアップ適正 5000P

…………


(……あった)


麒麟児 10000P 

効果 レベルアップ時、HP MP SP 筋力 瞬発力 集中力 魔力 の増加率上昇。


(レベルアップ時のステータス上昇技能。こういったのはレベルが低い今のうちに取っておくべきだよな)

 

 シンジは麒麟児を購入する。


 残りは1010P


 (……魔法は習得出来ない、か。というか技能はレベルアップ関係以外ほとんど習得出来ないみたいだな。出来ても精々剣の技能とか槍の技能、空手とかで、面白そうな竜化術や闘気術とかはまだ出来ない……レベルが低いからか?)


 一通り技能をチェックしたシンジは、次にアイテムの購入ページを見た。


 (武器とか食料品はネット通販で買えるような物がほとんどか。でも、やっぱり薬は違うな)


 薬だけ、回復薬や解毒薬、蘇生薬やMP回復薬なんてゲームのような物が真っ先に出てくる。


 (……薬、ね)


 その項目をじっと見た後、シンジはタブレットの電源を落とした。




 シンジは、5階の見回りをすることにした。

 扉による封鎖は全て4階から行ったので、どれだけ5階に死鬼化した人間がいるか分からないためだ。

 それに、レベル上げをする必要もある。


 おそらく、購入出来ない技能の購入条件はレベルと職業だろうとシンジは予想している。

 一般人の熟練度が5になれば他の職業になれるようなのでそれまでレベルを上げたいところだ。


 5階には、教室が9個ある。

 音楽室 家庭科室 科学実験室 美術室 視聴覚室 そして、様々な授業が行われる臨時の教室が4つ。そのなかに世界史も含まれる。


 それが東側の校舎と西側の校舎に分かれていて、シンジはいま西側にいる。

 西側の教室は音楽室 家庭科室 科学実験室 臨時教室のうちの一つだ。


 シンジは、まず家庭科室を調べるために家庭科室の扉を開けた。


 すぐに閉めた。


 家庭科室には額から角を生やして死鬼になった生徒がいたが、それが女子生徒だったからだ。

 エプロンをつけた眼鏡をかけた女子生徒。

 損傷もそこまでひどくない。

 まるで生きているような可憐な少女。

 そんな女の子を惨殺する気になれなかったのだ。


(いや、そんな事を言っていられないんだろうけどさ)


 扉からエプロンをつけた死鬼化した女子生徒の様子をうかがうも家庭科室から出てくる様子もない。

 ただ、ずっと家庭科室の隣にある家庭科準備室の扉をひっかいている。


(……見てられないな)


 生前は、本当に可愛い容姿をしていたのだろう。

 今は、形相がそれこそ鬼のように変わってしまっているが。

 シンジは家庭科を後にした。


 科学実験室に向かう途中、シンジは男子生徒を発見した。

 額には角。右太股が半分くらいの太さになっている。

 どう見ても、死鬼化している。


(……やるか)


 先ほどの女子生徒と違い、男子生徒は廊下にいる。

 どうあがいてもこのまま放置はしておけないし、レベルアップもしなくてはいけない。

 シンジは男子生徒に向かって走った。


(体、軽っ!)


 強風を背中で浴びているかのような加速に、シンジは驚いた。

 レベルが上がって、身体能力が向上しているのだろう。

 シンジの接近に気づかず、男子生徒は鼻の位置から上下に顔を半分に切り取られて倒れた。


「……すげーなぁ」


 シンジは、自分の身体能力に驚いた。

 同時に、高揚感が溢れてくる。

 何でも出来るような、万能感。


(……っと。それどころじゃないな。素材の回収をしないと……)


 取り憑かれたかのような感覚を頭を振って払い、シンジは男子生徒の角を切り取った

 すると、男子生徒の肉体が灰のように崩れていく。


「……素材を取ると、肉体は無くなるのか」


 少し引っかかりを感じたシンジだが、気にせずに、気にしようとせずに、採取した角をポケットに入れた。

 その後、シンジは西側の各教室。

 それと、男子トイレを調べ4体の死鬼を倒した。

 最初の家庭科室の眼鏡の女子以外、男子だったのは助かったとシンジは思っている。

 ちなみに、女子トイレは調べなかった。

 女子を見つけても戦える気がしなかったし、そもそも女子トイレに入るという行為が、この状況でもちょっと良い気分ではなかったからだ。


 そして、シンジは、レベルが3になった。


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Lv  3

職業  一般人☆4


HP  170

MP  130

SP  100

筋力  20

瞬発力 17

集中力 28

魔力  13

運   10

技能  麒麟児

所有P 1050P

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 強くなっている。実感できるぐらい体が軽い。

 シンジは、悠々と渡り廊下を歩いていた。

 iGODで自分のステータスを見ながら、である。

 歩きスマホなど通常の生活でも危険な行為であるが、シンジは余裕でそれを行っていた。

 今なら複数の死鬼を相手にしても片手で倒せる。

 その自負がそうさせていた。


 シンジは、視聴覚室の扉を開ける。

 何も考えず、気楽に。


(……)


 シンジは固まった。

 先ほどは複数相手でも、勝てるとは思った。


 ただ、それは2体や3体の場合だ。


 視聴覚室の中には、大勢の死鬼がいた。

 10、20、おそらく一クラス丸ごとだ。

 一番近くの死鬼となった男子生徒が、シンジに襲いかかってきた。

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