第3話 死体が動く
「……ついにエンカウントか」
4階に向かって登ろうとしたとき、シンジは廊下の先で、ゾンビっぽい男子生徒を発見した。
右腕がちぎれかけていて、フラフラと歩いている。明らかにマトモではない。
見たところ、緑の校章をつけているので2年生のようだ。
ちなみに、1年生が赤で黄色が3年生である。
距離があるので、充分に逃げられるだろうが、シンジはあえて男子生徒を狩ることにする。
なるべく早めにゾンビとの戦いに慣れたいと思ったのが理由の一つだが、それ以外に、男子生徒の体格が小さいというのもあった。
見たところ、シンジより10センチほど背が小さいようだ。
さらに、線も細い。
透明の盾を構えて、男子生徒に近づいていく。
20メートル 10メートル……距離が近づくに連れて、シンジは男子生徒のおかしい点に気が付いた。
(角?)
シンジは、この異常事態をゾンビ物のような物だと考えていた。
実際、男子生徒は全身血まみれで目はうつろで焦点が合ってなく口からは呻き声が漏れている。
ここまでは、映画などで見るゾンビなのだ。
しかし、男子生徒にはさらに額に鉛筆の先のようなこぶが一つ出来ているのだ。
これでは、まるで鬼である。
(まぁ、鬼だろうと関係ないか)
5……5メートル。この距離が気づかれる距離の様だ。
「おおおおああああああ!」
鬼の様な男子生徒が口を大きく開けて飛びかかってきた。
シンジは、その噛みつきを盾で受ける。
(……思ったより遅いし、弱いな)
こういったゾンビ物では、ゾンビになった者は肉体のリミッターが外れてものすごい力を出せたりするが、シンジに噛みついてきた鬼のような男子生徒にはシンジを押し倒すような力は無いようだ。
シンジは、そのまま盾をズラして男子生徒の背後に回ると、脳天に鉈を切りつけた。
ズチャリと、頭の半分ほどまで鉈が食い込む。
「んっ……しょっと」
シンジは、男子生徒を蹴って、頭から鉈を抜く。
「……これで、倒したかな?」
ツンツンと足で男子生徒をつつくが、男子生徒は動かない。
やはり、脳を破壊すると動きを止められるようである。
ふうと一息ついたシンジは、鉈に付いた血糊を男子生徒の制服で拭う。
思ったより、罪悪感や嫌悪感は無かった。
前もってイメージしていたし、明らかに相手の様子がおかしかったのもプラスだったのだろう。
死体を切るだけなら、問題ないようだ。
山籠もりで捕えた獲物を解体するのと大差ない。
『テレレッレテッテーン』
いきなり、どこかで聞いたような効果音が流れた。
「……え? 何?」
シンジは、音の出所を探す。
先ほどの音は、シンジも好きな国民的RPGのレベルが上がった時の音だった。
思わず、シンジは「え、レベルアップ?」と言いそうになった。
キョロキョロとあたりを見渡すと、ネット通販で頼んだ物が入っていそうな段ボールがポツンと置いてあった。
「段ボール?」
先ほどまで無かったはずだ。
段ボールに表記されている名前を見てみると、有名なネット通販サイトの名前ではなくGODZONとなっていた。
とりあえず段ボールを開けてみる。
中には、7型サイズのタブレット端末が入っていた。
名前は iGOD
(……)
シンジは、今まで積み重ねてきたサブカルチャー的知識を総動員して、現状を理解しようとした。
そして、まずは落ち着いて検討する事が大切だと判断する。
(とりあえず、安全な場所と寝床を確保しよう)
シンジは、タブレット端末が入っていた段ボールごと持って5階へ向かった。
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