第三話 心臓と情熱
第三話 心臓と情熱
その日、アツシは訓練施設の教官室にいた。
一般的な家具や調度類のほか、武具やモンスターの体の一部が飾られているこの部屋に呼ばれるとき、先任勇者であり、アツシをこの三年に亘って鍛え上げた男は、いつも机に両肘をついて眼光鋭くアツシを見上げてきたものだ。だが今日は違う。彼は今、机を背にして立ち、アツシを見ながらしみじみと云った。
「見違えたな。初めて会ったときとは別人のようだ」
「そりゃあ三年間、毎日しごかれて食わされていれば、見た目も変わりますよ」
召喚当初十六歳だったアツシも、もう十九歳になっていた。勇者は不老だが成長が老化に変わるまで肉体は変化し続ける。そのためアツシも背丈が伸び、一七二センチだった身長は一八〇センチの大台に乗っていた。筋肉がついたことで体重も大きく増え、腕は太く、胸板は分厚く、すっかり逞しい男になっている。それが黒髪を短く刈って額に白い鉢巻きをつけ、軽装の革鎧を装備していた。腕は剥き出しだが下肢には長ズボンを穿き、爪先に鉄板の入った頑丈なブーツを履いている。腰の左右には長剣と短剣が
「通常三ヶ月で卒業するところ、三年もかかった出来損ないは貴様が初めてだ。おめでとう! 壁の外で死ぬなよ!」
教官の目にきらりと光るものがあり、アツシは鬼の目にも涙かと思った。
そう、つまりアツシは先日、十二度目の挑戦でようやく卒業試験に合格した。その後の進路の決定権はもちろんアツシにあったが、結局レナの信じる瞳を裏切れず、壁の外でマイティ・ブレイブの覚醒を試みる、という回答をしてしまったわけである。それで壁外だ。
――とうとうこの日が来てしまった。俺は今日、壁の外へ行く。
その後、教官室を退室したアツシは、建物を出て施設の庭を厩舎へ向かって歩きながら思った。三年かけて養ったこの逞しい肉体は、しかしモンスターと戦う上では最低限でしかない。それはあのテイマーの勇者がたびたび訓練施設にやってきてはモンスターとの模擬戦の機会を与えてくれていたので、もう骨身に沁みていた。
いくら鍛えても人間ではモンスターに勝てない。モンスターが相手では剣も槍も爪楊枝と大して変わらないし、銃があっても恐らく駄目だろう。生物兵器でもあれば話は違ったのかもしれないが、そんな高等技術の再現は夢のまた夢である。
――勝つためにはマイティ・ブレイブがいる。
そこでアツシはつと足を止め、俯いて自分の爪先を見た。
「……三年もあったのに、結局マイティ・ブレイブに覚醒しなかったな」
勇者のなかには訓練中にひょんなことから自分のマイティ・ブレイブに覚醒する者がいる。実際、アツシは訓練をともにした後輩勇者がそういう例になるのを目撃していた。だがアツシは違ったのだ。だから三年前にトロイが云っていた通り、彼の指揮下で壁の外に行って、マイティ・ブレイブを覚醒させるために手頃なモンスターと戦わねばならない。
――やるしかない。やるしかないよな。
アツシはそう自分を奮い立たせると、顔を上げて歩き出した。すでに地球での日々は遠い思い出となり、家族や友達のことを思い返すと少し悲しいが、今やアツシが今日を生きていくのはこの世界だ。三年という月日は、アツシをこの世界の住人に作り替えていた。
厩舎の前では、レナが二頭の馬とともに佇み、槍を持って待っていた。馬にはもう馬具が取りつけられている。
レナはアツシを見ると笑って手を振ってきた。
「アツシ様」
「レナ!」
少女だったレナもまた、この三年で美しい女性に成長していた。それが今は男のようにズボンを穿き、旅装している。
その姿を見てアツシは眉宇を曇らせながらレナの前まで行くと、いなないて頭を寄せてきた栗毛の愛馬の首筋を軽く撫でてやってから、改めてレナに視線をあてた。
「わかっていると思うけど、今日だ。俺は今日訓練生を卒業して、トロイさんの指揮下で壁の外へ行く。云うまでもなく危険だ。本当に君も来る気か?」
「もちろんです。それが従者の務めですから、私も壁の外へお供します」
その澄み切った答えにアツシは思わず唇を噛んだ。
数日前、アツシが卒業後の進路を回答すると、教官からトロイに連絡が行き、アツシのマイティ・ブレイブを覚醒させるためのチームが編成されることになった。以前の話通り、指揮官はトロイで、二十名の勇者が編成され、その従者も随行することから、合計四十名ほどの集団で壁の外へ向かうことになる。
そう、原則的に従者は勇者の行くところどこへでも同行する。たとえそれが壁外であってもだ。戦闘時は後方支援を担当し、平時は見張りや天幕の設営、調理、傷の手当てなどを行う。そしていざというときは自ら囮になったり殿を務めたりして、勇者を逃がすこともあるという。命を落とすことも珍しくない。それがアツシは厭だった。自分が死ぬのはもちろん厭だが、レナが死ぬのはそれにまして厭だ。
――今ならまだ引き返せるんだぞ。
アツシがそう云おうとしたときだった。
「この人間世界は勇者様たちによって守られています。その勇者様のために身命を賭すのが従者の使命。まさか私を置いていくなんて云いませんよね?」
レナが緑の瞳でアツシを真っ直ぐに見つめながら、胸を張ってそう云った。それを断れるアツシではない。アツシはレナを愛しげに見てしんみりと云う。
「壁なんかなくても安心して暮らせる、自由にどこへでも行ける、そういう世界になったらいいって云ってたよな」
「はい。憶えていて下さったんですね」
「当たり前だろう。あのとき二人で同じ夢を見ると云った」
そしてそれはレナの前で格好をつけたいという見栄でしかなかったが、その見栄を三年も張り続けたため、嘘から出た真になってしまった。ただ世界平和だの魔王打倒だのには相変わらず興味がない。今日、アツシが命の危険を顧みず壁の外へ行くのはレナの夢のため。レナの夢を叶えて彼女を喜ばせてやりたいという、ただその一心であった。
「……行こう、レナ」
「はい!」
そしてアツシは馬に跨り、レナから槍を受け取った。地球にいたころ好きだったファンタジー作品の主人公は剣を使っていたけれど、実戦では長柄の獲物の方が頼もしく、今ではアツシは剣より槍の方が好きだった。荷物はもう纏めてある。これから壁の外へ出発だ。
アツシはレナが彼女の愛馬である月毛に跨るのを見ると、馬の腹を軽く蹴った。二騎は
広場にはもう勇者とおぼしき面々が従者と愛馬を従えて集結していた。だが肝心のトロイの姿は見えない。まだ遅刻と云うわけでもないけれど、リーダーなら誰より早く来ていてほしいものである――アツシがそう思っていると、横合いから声がかかった。
「よお、先輩。やっと卒業できたんだな」
「ジュリアン……!」
アツシがジュリアンと呼んだのは、明るい茶色の髪を短く刈った、緑の瞳のハンサムな若者だった。背はアツシより少し高く、引き締まった剽悍な体つきをしている。それが武装した旅装束で、広場に立ち、馬上のアツシを見上げていた。
アツシはレナとともにジュリアンの前で馬を止めると、馬から下りて云った。
「おまえも同行するのか?」
「そういうことさ。新勇者のマイティ・ブレイブ覚醒に付き合うのは先任勇者の務めだからな。ただまあ、先任勇者と云っても俺はおまえの後輩なんだが……」
そう、ジュリアンはアツシの次に召喚された八六八番目の勇者である。落ちこぼれのアツシと違って訓練過程を規定通りの三ヶ月で修了し、壁の外へ行ってマイティ・ブレイブに覚醒して生還、その後も壁を守る任務にはつかず、壁外での任務に貪欲だという。アツシにしてみれば、優秀な命知らずといったところだった。
「すっかり先を越されてしまったな」
「ははっ、まったくだ。おまえの才能のなさには呆れるぜ。たかだか訓練を終えるのに三年もかかるとは思わなかった。よく途中で投げ出さなかったな、先輩」
「自分でも驚いてるよ。ところでその先輩ってのはやめてくれないか。今やおまえの方がずっと先を行っているわけだし、俺たち同い年だろう?」
「召喚元の年代は違うがな。俺は二〇〇九年、おまえは二〇一一年。どっちも十六歳のときに召喚されたが、地球にいたころに出会っていれば俺の方が二つ歳上だ」
笑ってそう語るジュリアンを、アツシは困ったような顔で見ていた。と、ジュリアンはそんなアツシの視線に気づいて笑みの種類を変える。
「わかったよ、アツシ」
そう云ってジュリアンが握手を求めてきたので、アツシもそれに応じて手を差し出した。
握手のあと、傍から恐る恐る話しかけてきた者がある。先ほどから馬のくつわを握って、ジュリアンの傍に控えていた小太りの少年だ。もじゃもじゃの黒髪をしており、丸っこいシルエットをしているが、意外に俊敏で手先が器用なことをアツシは知っていた。
「ジュリアン様、トロイ様はまだいらっしゃいません。今のうちにアツシ様と他の勇者様たちの顔合わせをしておいた方がいいのでは?」
「ああ、そうだな」
少年にそう答えたジュリアンは、アツシに目を戻すと親指でその少年を指差して云った。
「こいつのこと、憶えてるか?」
「ポールだろ。おまえの従者の」
「そうだ。おまえのところの従者に比べれば使えないデブだが、多少は鍛えられてきた。壁外へ行っても最低限は出来るだろうさ」
ジュリアンはポールをせいぜいが猟犬くらいにしか思っていないようである。その乱暴な言葉をぶつけられたポールが苦笑いしていると、そんな彼を励まそうというのか、このときアツシの傍に控えていたレナがひらひらと手を振った。
「ポール君、久しぶり」
するとポールもまたその言葉を待っていたようにぱっと顔を輝かせた。
「レナちゃん、元気だった?」
以前、アツシとジュリアンが訓練を共にしていた三ヶ月のあいだ、レナとポールも行動を共にすることが多かったのだが、二人はそのあいだに友人になっていた。ジュリアンが卒業していくと会う機会もなかったわけだが、ここに来て懐かしさが押し寄せているようだ。二人は自分と主、二頭の馬の轡を持ったまま歩み寄り、互いの近況を話し始めた。ポールははしゃいでいると云ってもいいくらいの勢いで、それをレナは楽しそうに聞いている。ジュリアンは舌打ちをしたが、二人にはなにも云わずにアツシを見た。
「こいつらはほっといて、トロイの旦那が来る前に他の勇者たちと顔合わせしちまおう」
「了解。レナ、ちょっと行ってくるから馬のこと頼むよ」
そういう次第でアツシはジュリアンとともに広場を回り、先任の勇者たちに挨拶をした。名前だけ交わした素っ気ない者もいれば、どの時代のどの国から来たのかといった話にまで及ぶ場合もあった。勇者たちは場合によっては敵対していた国同士から召喚されてくることもあり、召喚元の民族や宗教によって派閥を作っていることもあるのだが、壁外任務に就くような勇者たちにとっては、地球でのことはもう関係なかった。一致団結しなければ生き残れないからだ。
そうして一通りの顔合わせも済んだところで、後ろから肩を叩かれた。振り返ると、肥満した丸顔の白人が満面の笑顔で立っていた。
「やあアツシ」
「ハリーさん!」
彼はエアリアルハンマーのハリー。アツシが召喚されて最初に接した地球人であり、右も左もわからぬアツシによくしてくれた恩人である。気さくな人柄ということもあって、たびたび一緒に食事をするくらいの仲ではあった。
「どうしてハリーさんがここに? 砲台役として色々な場所に人や荷物を送り込んだり、新しく召喚された勇者を案内するのがハリーさんの仕事でしょう? 壁の外に出てもし万が一のことがあったら……」
「気分転換だよ。僕だってたまには王都を出て冒険したいの。それでトロイに頼み込んだんだ。もちろん死ぬ可能性もないわけじゃないけど、基本的にトロイの指揮下じゃ生還率も高いから、そんなに心配することもないだろうと思ってね。ハハハ!」
ハリーはそう笑うと、アツシの背中を勢いよく叩いてきた。
そのあとジュリアンとともにレナのところへ戻り、お互いの従者を傍に控えさせたところで、広場の空気が変わった。
「お出ましだ」
ジュリアンがそう云ったとき、人垣が二つに割れて、騎乗したトロイが広場の中央へ進み出てきた。
「トロイさん……」
アツシがトロイと会うのは三年ぶりになる。ハリーと違って、彼とはこの三年間、一度も交流がなかった。将の立場にある彼と、新米の訓練生でしかない自分のあいだは隔絶としており、例の予言がなければ知遇を得る機会自体がなかったはずだ。
トロイが馬の足を止め、その周りに勇者たちが輪を描いて集うと、トロイは鞍上から彼らを見回して云った。
「皆、集まっているな。今日は例によって新米勇者のお守りだ。なかにはもう過去に何度も同じ任務をこなしている者もいるだろうが、初めて壁の外に行くような心構えで事にあたってほしい。そしてアツシ」
「はい」
アツシはレナをその場に残し、一人輪の中央へ進み出てそこにいるトロイの前まで歩いていった。
「お久しぶりです、トロイさん」
「ああ。三ヶ月で終わる訓練を三年も続けていた予言の勇者。憶えているとも。ずいぶん遅くなってしまったが、約束通り、おまえのお守りは俺が引き受けよう」
「よろしくお願いします」
命がかかっているのだ。アツシは殊勝に頭を下げた。
トロイは一つ頷くと、声を張り上げてなおも云う。
「では今後の段取りを説明しよう。この大地を囲む壁の門は全部で十二あるが、慣例通り、新人のお守りをするときは東の門……東龍門から出る。この王都から東龍門までの道のりは、東へ向かって一〇〇キロ、馬の足で無理をせずに進めば明後日の日中には着く距離だ。東龍門に着いたらそこで休息を取り、改めて全員の顔合わせ、互いのマイティ・ブレイブ、陣形と連携、地図とルートを確認し、東龍門を守っているゲオルグの部隊から補給を受けた上で壁外へ出る。目的はここにいるアツシのマイティ・ブレイブの覚醒を促すこと。つまり彼を適当なモンスターにぶつけ、我々はそれを援護する班と周囲を警戒する班に分かれて動く。アツシがマイティ・ブレイブに覚醒すれば任務完了で帰投となる。なにか質問は?」
そう問われて、真っ先に手を挙げたのはアツシだった。
「俺がいつまで経ってもマイティ・ブレイブに目醒める気配を見せなかったらどうするんですか?」
「目醒めるまでやるんだ」
その身も蓋もない答えに、アツシはちょっと口元を引きつらせた。
「つ、つまり、俺がマイティ・ブレイブに覚醒するまで終わらないと?」
「そうだ。だが補給の問題もあるから、五日で覚醒しないようならいったん引き上げる。傷病者が出た場合も当然ただちに帰投する。その後、休息を挟み、必要に応じて人員を再編成して再出発する。長引くようなら、後続の新米勇者が合流することもあるだろう。つまり訓練時代と同じだ。おまえがギブアップして逃げるか、マイティ・ブレイブ覚醒という合格を掴むかするまで、何度でも繰り返すぞ」
そこで言葉を切ったトロイが、馬上から鋭い目でアツシを睨んでくる。
「どんな勇者にも云えることだが、マイティ・ブレイブは覚醒してみないと判らない。もしかしたらそれが世界を変えるような強力なマイティ・ブレイブであるかもしれん。だからこれほどの人員を投入してまでおまえ一人を支援するのだ。おまえも全力で取り組め。いいな?」
「は、はい……」
アツシは震えそうな声でそう返事をした。
「よし。他に質問のある者は?」
そうトロイが問うと、別の勇者が挙手をして云う。
「だいたい了解しました。あとは緊急時の対応ですが、誰の心臓を使うんです?」
「それは問うまでもないだろう」
質問をした者とは別の勇者がそう云い、それに周りの勇者たちが相槌を打っている。だがアツシにはなんのことか判らない。そこへトロイが淡々と訊ねてきた。
「アツシ、俺のマイティ・ブレイブのことは憶えているか?」
「はい。テレポーテーションですよね。ただし代償に血がいるって物騒な……」
「そうだ。転移の距離と質量によって必要な血の絶対量は変わってくる。ゆえにあらかじめ血を準備しておかねばならない」
アツシはちょっと眉をひそめた。
「一応確認しておきたいんですけど、血の準備って、どうやるんですか? 輸血パックみたいなものを用意する? それとも樽かなんかに詰めておく? でもそれだと固まってしまいますよね。固まった血でも使えるんですか?」
「いいや。必要になったら、その場で新鮮な血液を提供してもらう」
その場で新鮮な血液を提供してもらう。その言葉の意味を理解したアツシは、叫び出しそうになりながらも、どうにか理性の糸をたぐってトロイに詰め寄った。
「おい、待てよ。まさかそれって……」
「そのまさかだ」
トロイの冷たい言葉に彼の本気を感じたアツシは、いよいよ焦り出してトロイに
「だ、誰かを殺すのか! そんな無法な――」
「無法ではない。必要な犠牲だ。事前に本人にも通知し、了承を取っている」
「本人って――」
「私です」
その声にアツシは一気に血の気が引く思いがした。見たくなかったけれど呼ばれているような気がして、恐る恐る声のした方を振り返ると、ちょうど馬の轡をポールに預けたレナが、アツシの前までやってきたところだった。
「レナ……」
レナはぎこちない微笑みを浮かべていたものの、顔色は優れなかった。
そこへトロイがうっそりと云う。
「勇者のために身命を賭す。それが従者の務めだ。従者になった時点で勇者のために死ぬ覚悟はできているはずだ。そうだろう、レナ」
「はい」
レナが神妙にそう答えるのを目の当たりにして、アツシは愕然と呻いた。
「馬鹿な……」
そんなアツシの肩に、ハリーが慰めるようにぽんと手を置いた。
トロイは馬上からアツシを見下ろして淡々と云う。
「俺のマイティ・ブレイブの代償は血だが、マイティ・ブレイブは勇者の命綱だからこれについてはずっと以前にあらゆる角度から十分な検証をした。それで判ったことは、まず人間以外の血は代償として使えない。そして現に流血を伴う新鮮な血であればあるほど、少量で大質量かつ長距離を転移できる。流されてから時間が経てば経つほど必要な血液量が増大していき、三日がリミットだ。それ以上の日にちが経った古い血では代償として機能しない。また凝固しているかどうかは関係なく――」
「そんなことはどうでもいい!」
アツシはハリーの手を振り払うと、トロイを親の仇であるかのように睨みつけた。
「なぜレナなんだ!」
するとそれには、トロイではなくレナが云った。
「今回の壁外遠征はアツシ様のマイティ・ブレイブの覚醒が目的だからです。私の勇者様のために他の勇者様が身を擲って下さる。それなのに他の誰かの心臓を使えとおっしゃるのですか。ありえません。これはアツシ様の従者である私の務めです」
アツシは咄嗟に返す言葉が見つからず、ほとんど恐怖してレナを見た。レナは竦むような気持ちで立っている。元よりアツシに心を読む術などないのだが、それは顔を見ただけでわかった。それなのに、なぜなのか。
「君だって、怖いんだろう」
「はい。でも、使命ですから」
なにが使命か。これは本当に命を懸けるほどのことなのか。アツシがそんな想いを燻らせながら無言でレナと見つめ合っていると、そんな二人を気の毒がったのか、周りを囲んでいた勇者の一人が励ますように云った。
「まあトロイさんのマイティ・ブレイブを使って撤退するような状況になってるってことは、その時点でもう誰か死んでるかもしれねえな。だから必ずしもそのお嬢ちゃんの心臓を使うことになるってわけじゃねえぜ」
「そりゃそうだ。おまえが真っ先に死にそうだ」
「ああん?」
「他には司法取引をして、減刑と引き替えに死刑囚に同行を頼むって手もある。生きて戻れれば罪一等を減じるってやつだ」
「だが、そういう奴は土壇場で逃げようとするから信用できない。自ら犠牲になる覚悟のある者が望ましい」
その覚悟がレナにはあるのだろう。三年に及ぶ彼女の献身を肌で感じてきたアツシには、それがわかっている。だがわかっているからこそ、受け止めきれなかった。
「……俺のせいで死んだらどうする?」
「アツシ様のために死ぬのであれば本望です」
「そうか……」
アツシは目を伏せ、次の瞬間に覚悟を決めて叫ぶ。
「じゃあ俺は壁の外になんか行かない! やめだ、やめ! 中止!」
「なっ――」
レナが胸を衝かれたように仰のいた。周囲にもざわめきが走る。場に動揺の波紋を広げたアツシは、トロイに眼差しを据え、彼に指を突きつけて云う。
「俺が壁の外へ行く決心をした理由の一つは、あんたを信じたからだ!」
「その信頼に全力で応えよう。生還させてみせるさ。おまえも俺も他の者たちも」
「だがそのためにレナが死ぬんじゃ駄目だな! 事前にあんたのマイティ・ブレイブのからくりを知っていれば、俺は壁の外へなんて行こうとは思わなかった! 知った以上は、この話はなかったことにさせてもらう! 壁の外へは行かない!」
「アツシ様!」
そのとき後ろからレナが取りすがってきた。乱暴に振り払うようなことはできず、優しく見ると、レナは涙ぐんでいた。その涙を見た瞬間、アツシは自分の心が想像以上の打撃を受けたのを感じたが、今さらあとには引けない。
「俺はもう君の家族とも仲良くなっちまったんだよ! もし俺のせいで君が死んだら、君のお父さんや、お母さんや、弟に、俺はどんな顔して会えばいいんだ!」
「でも……」
と、レナが顔を曇らせたときだった。
「なっさけねえなあ」
その揶揄に憤激を覚えながら睨みつけると、まるで挑戦に応じるように、ジュリアンがアツシをまともに睨み返してきた。
「なんだと?」
「情けねえって云ったんだよ。そんなにレナが心配ならてめえが守ってやればいいだろ」
「なに!」
「だいたい今回の遠征はてめえの覚醒が目的なんだから、てめえがさっさとマイティ・ブレイブに目醒めちまえば終わる話だろうが。それこそ今この場でマイティ・ブレイブを使えるようになったら遠征の必要もなくなるんだぜ?」
「それが出来たら……」
アツシは拳を握りしめ、腕をわななかせた。どうやったって覚醒しないものはしないのだ。そこへジュリアンはなおも云う。
「レナの心臓を使うってのは、あくまで最終手段だ。そういう状況にならないための工夫と努力はみんなしてる。だが、おまえは俺たちを信じられないらしいな。なんの実績もないおまえが、壁の外で何度も任務をこなしてる俺たちを」
「それは……」
アツシはジュリアンとの睨み合いを演じながら考えた。実際、彼らはベテランだ。壁の外では頼りになるだろう。しかしその一方で、Bランク以上のモンスターに遭遇した場合はどんな勇者でも逃げるしかないと云う。そのとき彼らは躊躇なくレナの心臓を使うのではないか。無論、そうした手に負えないモンスターとの戦闘状況にならないよう警戒してくれてはいるのだろうが、結局のところそれは運ではないか。
「……人間のやることに絶対なんてないんだぞ?」
「そりゃそうだが、最悪の事態ばかり考えていたらなんにもできないだろう。おまえはあれか? 飛行機が落ちることばかり考えて旅行も出来ないタイプなのか?」
「くっ……!」
ジュリアンの云う通りだった。失敗することばかり考えていたら身動きが取れなくなる。生きていくことさえ難しくなる。だがしかし、君子危うきに近寄らずと云う言葉もあるではないか。アツシはそう思って、レナに苦悩の眼差しを据えた。
「レナ。君は、そんなに壁の外に行きたいのか」
「もちろん、あの壁がなくなっても人が安心して自由に暮らせる世界が来たらそれが理想です。でも今はそれ以上に、あなたに一人前の勇者になってほしい」
そこでいきなり、レナの目から涙が溢れた。アツシはぎょっとしてレナに手を伸ばそうとし、しかし不躾に触れるのもためらわれて、手を前に出した中途半端な格好で固まってしまった。
レナは涙をなかったことにするように急いで拭うと早口で云った。
「ごめんなさい。でも、ずっと悔しかったです。アツシ様があの訓練施設で三年間も手こずっていて、あとからきた勇者様があなたを追い抜いていくのがとても悔しかった。だから、やっとこの日が来て、私は……」
「……わかったよ」
アツシはレナの言葉を途中で引き取っていた。皆まで云わせたくなかったし、そこまで云われては逃げられない。
「わかったよ、レナ。なってやるさ、一人前の勇者に」
「アツシ様……」
レナは鼻を赧くし、涙にきらめく目でアツシを見つめてきた。そんな彼女に笑いかけたアツシは、次にトロイを見、それから今日自分のために集まってくれた勇者たちを見回して云った。
「お騒がせしてすみません。動揺してしまいました。でもやっぱり行くので、皆さん、よろしくお願いします」
果たしてこれでいいのだろうか。都合のいいことをと思われるかもしれない。だが真っ先にジュリアンが笑って云った。
「最初からそう云っておけばいいんだよ、手こずらせやがって」
それを皮切りに、他の勇者たちもやいのやいのとアツシを囃し立ててきたので、アツシはちょっと面映ゆかったがほっとした。
そこへトロイが場を引き締めるように云う。
「では決まりだな。全員騎乗! 出発するぞ!」
その命令が下るや否や、勇者も従者もおしゃべりをやめて一斉に馬に跨った。アツシたちのところには、両手で四頭の馬の轡を取ったポールがやってきた。アツシはポールから自分の馬を受け取ると、鐙に足をかけ、颯爽と馬に跨った。
そこへトロイが馬で近づいてきて云う。
「とりあえず二列縦隊で王都の外まで出る。その先は東龍門まで、壁外での予行練習も兼ねて陣形を組んで進む。きちんと勉強していれば知っているはずだが、荷馬車と従者たちを中央にし、それを勇者たちが囲んで進むのが基本だ。おまえは俺とともに先頭を進む」
「俺を適当なモンスターにぶつけるのが目的ですもんね」
「そうだ。おまえがマイティ・ブレイブに覚醒すれば終わる遠征だ。せいぜい楽をさせてくれ」
トロイはそう云うと手綱を捌き、馬を軽快に駆って広場をぐるりと回り始めた。それに皆が騎馬で続く。ほどなくしてトロイを先頭にした騎馬の列の流れが出来ると、トロイはいよいよ広場を出て、勇者特区の外へ出た。さらに王都の市街地を通り抜け、市門から追城壁の外へ出る。その先はもう広野だった。
◇
王都を出発したアツシたちは東龍門を目指して広野を東へ向かった。壁の外に出たときの予行演習も兼ねて、陣形を組んでの大移動である。さらに日が暮れると野営をして一晩を過ごし、明くる日も騎馬で大地を駆け抜けた。
そして三日目の昼、アツシたちはとうとうラストガーデンの東の
ここまで来るとトロイの命令で陣形が解かれ、一行はふたたび二列縦隊になっていた。先頭を進むのがトロイで、二番目がアツシとレナだ。
馬に揺られているアツシは、自分の視界いっぱいを埋め尽くす門と壁のあまりの威容に度肝を抜かれていた。
「で、でかい……すごい……」
元より、一〇〇キロ離れた王都からでも見ることのできる高い壁だった。しかしこの距離から見上げてみると、いくら見上げても壁の果てが見えないのである。
あんまり見上げすぎて、アツシは鞍上でバランスを崩しかかったところを、轡を並べて進んでいたレナに支えられた。
「ご、ごめん」
「いえ、お気持ちはわかります。私もため息しか出ないくらい……」
レナもまた、壁のあまりのスケールに圧倒されているようだった。
高さ三〇〇〇メートル、総延長六二八キロメートルの壁はミルク色をしており、装飾もものすごく、キリスト教の大聖堂を思わせる。たとえば巨大な騎士の石像が壁を守るようにいくつも建ち並んでいたりするのだ。また壁には一定の高さごとに通路が造りつけられており、歩哨と思われる兵士が五階くらいの高さの通路から欄干に身を乗り出して、こちらに手を振ってくれていた。そしてなにより、東龍門である。これは見たところ両開きの門だが、片方の扉の幅だけで三〇〇メートルはある。高さは計り知れない。恐らく壁のてっぺんまで伸びているのではないか。とても人間の力では開けられまい。
「トロイさん、これ、どうやって開閉するんですか?」
「むろん、オヴェリアの力だ。彼女はこの壁の主であると同時に管理者でもある。彼女が扉よ開けと念じれば、それだけで門は開く」
おお、とアツシは嘆声を漏らしたが、まだわからないことがあった。
「でもオヴェリアさんは、王都にいるんでしょう?」
「それは関係ない。オヴェリアは王都にいながらにして、この壁で起きていることをすべて感知できるからな」
目を丸くしたアツシとレナに、トロイはゆるりと馬を進めながら語ってくれた。
「この壁は見ての通り、高く、長く、分厚く、途方もなく巨大だ。内部には無数の階段と通路と部屋とエレヴェーターがあり、見張りのための覗き窓がある。壁の内壁と外壁、そして頂部には通路があって、人が歩けるようにもなっている。総延長六二八キロメートルに及ぶこの長城は、もはや迷宮と云っても過言ではない。その壁の、どこに誰がいるか、何人いるか、なにが起こっているかなどを、オヴェリアはすべて知覚することができるのだ。まるでこの壁自体がオヴェリアの肉体であるかのように、彼女は壁と常時リンクしている。だから壁のどこかに攻撃が仕掛けられたらすぐにわかるし、壁のなかにいる者に王都から呼びかけ、防衛に向かわせることもできる」
壁に圧倒されていたアツシは、その話にも圧倒されていたのだが、最後の部分にはより強い興味を覚えた。
「呼びかけ?」
「そうだ。壁のなかで、あるいは壁に手を触れて話したことは、すべてオヴェリアに聞こえるし、その逆もまた然り。つまりこの壁を介して、王都のオヴェリアと長距離通信ができるわけだ」
「マジっすか……」
「それが彼女のマイティ・ブレイブなのだ。それだけではないぞ。壁には防衛レベルのようなものがあってな、何者かが不正に壁に侵入しようとしたり、壁を越えようとした場合、オヴェリアはそのレベルを上げることができる。たとえば俺のマイティ・ブレイブはテレポーテーションだが、テレポートでこの壁を越えようとしたとき、オヴェリアはそれが空間転移であっても瞬時に感知して俺のテレポートをキャンセルし、壁の外へ弾き出すことも可能だ」
もう驚くことはあるまいと思っていたアツシだったが、今の話には驚愕を通り越して無表情になってしまった。
「……いや、それ凄すぎでしょ」
「そうだ、凄すぎる。結界系能力者として、オヴェリアはまさしく神のような力を持つ勇者だ。だからこそ、二百年にわたって人類を守護する、このラストガーデンという世界を創ることができたのだ。あの魔王でさえも、オヴェリアの壁を越えることはできない」
トロイはそう云うと、これで話は終わりだとばかりに馬の脚を速めた。東龍門はもうすぐそこに迫っていた。
東龍門の門扉の両脇には巨大な柱がそびえており、その柱の隣に、壁の内部へ通ずる入り口が口を開けていた。そこから馬ごと中に入ると、内部は一〇〇メートル四方はありそうな巨大な部屋になっていた。足元は土だが、壁や天井があり、二階へ上っていく階段や、奥へ続く通路が見える。そしてなにより明るかった。
「これって、照明は……」
アツシは天井に視線をやったが、それらしいものはない。そこへトロイが云う。
「壁の内部の建材が光りを放ち、人間の目にちょうどよい明るさを保っている」
「それもオヴェリアさんのマイティ・ブレイブですか?」
「そうだ。いい加減、頭を切り替えろ。この壁は無機質な建築物ではなく、オヴェリアの血の通った生きた要塞だ。俺たちは彼女の体内に入ったに等しい」
そしてトロイが部屋の中央で馬を止めると、たちまち階段から、あるいは奥の通路から大勢の人が姿を現し、小走りに近づいてきた。
「壁で働いている者たちだ。これだけ巨大な施設だからな。壁内の大半は隔壁を下ろして封鎖しているが、門の近くには後方支援を含めた防衛部隊が配置されている」
そのあとアツシたちは彼らに馬を預けた。通路の奥が厩舎になっていて、そこで馬の面倒を見てくれるらしい。そして階段を上り、二階へ上がると、廊下の真ん中で
「ようこそ、東龍門へ! 吾輩がこの東龍門、ひいては東方防壁軍総司令官の勇者ゲオルグである!」
「ゲオルグ?」
その名前には聞き覚えがあった。小さく呟いたアツシに、レナが囁いてくる。
「アツシ様、ゲオルグ様と云えば……」
「ああ、座学の時間に習ったよ。トロイさんと同じく十二将の一人。そして壁の東西南北を守護する四将の一人だ」
そのゲオルグはトロイと固い握手を交わしていた。ゲオルグはにこにこ笑いながらトロイの肩を叩き、背中を叩き、あれこれ話を聞いている。心なしか、トロイは少し迷惑そうにしていた。
その後、アツシたちはゲオルグの部下の案内でそれぞれの部屋に通された。壁の内部には通路があって部屋もあり、部屋には寝具一式がそろっている。相部屋になったジュリアンによると、家具の類はオヴェリアのマイティ・ブレイブによって作られたものではなく、あとから運び込んだものらしい。ここで一泊してから壁の外へ向かうのが当初の予定だ。荷をほどいたアツシは、ベッドに腰かけてため息をついた。
「すごいところに来てしまった……」
「ああ。総延長六二八キロメートルの壁のなかが丸ごと迷宮になってるからな。だが平時は隔壁が下りてて移動範囲が大幅に制限されてる。迷子になる心配はないさ」
「そりゃよかった」
正直なところアツシは探検にでも行きたいくらいだったが、そんなことをしている時間は恐らくないだろう。案の定、ほどなくして勇者の一人がアツシたちを呼びにきた。このあと、明日からの作戦行動についての打ち合わせをするらしい。
その後、中央に大きな机が陣取っている部屋に入ったアツシたちは、そこで改めて全員の顔合わせをした。さらには陣形や連携、そして地図を囲んで行軍ルートを確認していく。
今回の遠征における陣容は指揮官トロイ以下、勇者二十名、従者十六名、合計三十六名である。従者の数が勇者のそれに比して少ないのは、なんらかの理由で従者を失った勇者が新たな従者を取らなかったからだ。
アツシは作戦に関する説明を真面目に聞いていた。人外魔境と呼ばれる壁の外への恐れはもちろんある。緊張しているし不安も大きい。
だがその一方でレナのために一人前の勇者にならねばという気持ちもあるし、もう一つ、自分のマイティ・ブレイブを発掘してみたいという本能的な欲求があった。オヴェリアはこの壁に囲まれた箱庭の世界を創造し、ハリーはエアリアルハンマー、トロイはテレポーテーションが出来る。では自分には、いったいどんなマイティ・ブレイブが眠っているのだろう?
……。
翌朝、アツシたちは全員騎乗して東龍門前に勢揃いしていた。太陽はもう昇っているはずだが、東の壁際にいるため巨大な影のなかにおり、辺りは夜のように暗く、見送りに出てくれたゲオルグの部下たちが松明を掲げてくれている。
アツシはトロイとともに陣の先頭にいた。レナは従者隊の一員として中央の荷馬車付近に配置されているので、アツシの傍にはいない。アツシがレナのいる方を気にしたように振り返ったとき、騎乗しているトロイにゲオルグが云った。
「おまえのことだから俺がなにも云わずとも油断などしないだろうが、しかし壁の外ではなにが起こるかわからん。武運を祈るぞ」
「ああ、おまえも門の守りを怠るな」
トロイはそう云うと馬で門に近づき、手を伸ばして門扉にそっと触れた。
「聞こえているか、オヴェリア。開門だ」
すると音もなく、アツシの目の前に縦一文字の光りがたばしった。それを見て、誰かが畏れを含んだ声で云う。
「門が、開く……!」
そう、両開きの門が音もなく、壁の外側に向かって開いていく。それにつれて、縦一文字の光りが左右に広がっていく。騎乗しているアツシたちに朝の光りが降り注ぐ。
ここに前途は開かれた。
その曙光の一閃を浴びて、この先に待ち受けているなにかにアツシが身震いしたとき、先頭のトロイが英雄のように腕を突き上げ、声を張り上げた。
「進発!」
それが他の勇者たちに伝わり、彼らが口々に進発と唱え、それが消える前にトロイは馬を駆けさせ始めていた。最初一つだった蹄の音が、二つ三つと増えていき、あっという間に馬蹄の轟きへと変わる。
濛々と上がる土煙のなか、ゲオルグが見送る者の目をしてそれを見つめ、ゲオルグの部下たちの持つ松明の炎が、馬体の巻き起こす風に揺れた。
こうして、トロイを先頭に勇者の一団は門から壁の外へと飛び出していく。
異世界に召喚されて三年、アツシにとっては初めて見る壁の外の世界であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます