第59話
「――しかし、アーランドの兵を殺すってのは気分がよかったな」
「あの王女ってのも
風上にいることに加えて距離も離れているために聞き取りづらかったが――賊たちが会話する声が聞こえてきて、ライは眉をひそめた。
広場の北側で集まったガラの悪そうな連中が、げはげは大笑いしながら飲んだくれる手を止めて会話を始めたのだ。フランシスコ・ザビエルの様に頭頂部だけ毛が無かったり、モヒカンだったり、なんというかこれぞ盗賊!という感じの、オープンワールド系ファンタジーRPGで主人公の金策のために狩られていそうなおっさんたちだ。
なんてったって王族だ、どんな顔して泣き叫ぶのか見てみたい――そう続ける賊に、別な男が返事をする。
「金を受け取ってからだ――金を持ってきた奴らを殺して、女はぼろぼろにしてからエルディアに送りつけるのさ。それで婚約も無くなって、関係強化と安全保障同盟の相談も立ち消えになる」
ふむ――
ずいぶんと
まあ、ある程度予想はついていたが――政治犯の釈放などを要求するならともかく、単なる金銭要求で誘拐するには一国の王女というのはリスクが高すぎる。
「だが、俺たちがアーランド軍に追われるだろう」
「大丈夫だ――ちゃんとケニーリッヒさんがそのへんの計画は立ててる」
どうやら、この
そんなことを考えながら、男たちの会話に耳をそばだてる。断片的に聞き取れたものも含めて彼らの会話内容を総合すると、どうやら金だけ奪って人質は返さないつもりらしい。金を運んできた人間を――何人いたとしても――王女の身辺警護兵同様一斉射で皆殺しにして、リーシャ・エルフィに手をつけるのはそのあとにする予定の様だ。
……というか、ケニーリッヒ? 前に聞いた名前だな。さて、誰のことだったか。
そんなことを考えている間にも、賊たちの会話は続いている。
酒が入っているせいで、普通にしゃべっているつもりなのだろうがかなり声が大きく聞き取りやすいのはありがたい――せいぜいべらべらとしゃべるがいい、あとですんなり殺されるためにな。
「あの女が
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