第58話
特に王女襲撃があった直後の現在の状況では、近衛騎士用の剣など持ち歩いているのが発見されようものなら否も応も無く襲撃犯と関連づけられるだろう――つまりこの先ずっと持ち歩くのを前提に奪ってきたものではない。戦利品を眺めて悦に入るか、リーシャ・エルフィの護衛部隊との戦闘中に失った武装の代わりとして奪ってきたのだろう。
弓が大量にあるのは、彼らが王女を拉致するための最初の攻撃に弓を使ったからだ――彼らは王女を護衛する騎歩混成部隊百数十人を待ち伏せして煙幕を張り、動きを封じてから毒を塗った矢を数十人がかりで撃ち込んで護衛部隊の兵士をひとりを残して皆殺しにしてしまった。煙幕にはおそらく高濃度の
毒は麻痺毒などではなく致死性のもので、人はもちろん馬でも掠り傷さえつけばものの十数秒で即死する猛毒だった。王へ身代金要求の手紙を届けるために生かされたひとりは毒矢に馬をやられて落馬した騎兵で、利き腕と右足を骨折し抵抗がままならない状態だったことから、袋叩きにされたあと手紙を持たされて見逃されたのだ――そんな思いきった攻撃手段を用いられたのは王女が乗っている馬車が装甲馬車、遠距離からの狙撃を防ぐための強固な外装を備えた馬車で、幌馬車の様に流れ弾ならぬ流れ矢で乗員を殺傷する恐れが無かったからだろう。
王女とともに装甲馬車に同乗していた年老いた侍女は抵抗を試みて殺害され、結果生き残ったのは王女ひとりだけ。
だがそれだけ派手に使った以上、毒はもうそんなに残っていないだろう――剣や棍棒などの手持ちの武器にも毒を塗っているかはわからないが、その可能性が排除出来ない以上武器の始末を
広場はそこそこ広いので、ずいぶんと武器を遠くに離していることになる――その点もまた、彼らが追跡を警戒していないことを裏づけている。今組み立てている
軽装甲冑が集積されているのも大きな材料だった――救出部隊の到着に時間的余裕があるという目算に基づいて行動しているのもあるだろうが、ほとんどの者は武装解除している。つまり彼らは防具無しの剥き身に加えて、武器を焼却することで丸腰になる。
まあいい――メルヴィアに持たせているものも含めて、財布の中身と相談して決めるとしよう。最悪近くにあるライの個人的な拠点から持ってくるのでもいい。
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