第21話
背後から駆け寄って背中から斬りつけた賊のひとりが、攻撃の空振りに舌打ちを漏らす――振るった剣の鋒が格子に衝突して火花を散らし、それに驚いたのか若者が格子を掴む手を離した。
「――アトデキイテヤルヨ」
異界の衣装を身に着けた若者たちへの返事の続きなのか、そんな言葉を口にしながら――
上体を捩る様にして転身していたために、その蹴りを脇腹に受けることになり――蹴り足に押される様にして吹き飛んだ賊が正面の格子にこめかみをぶつけて小さなうめきを漏らした次の瞬間、
格子を肘で押す様にして体を離し、ふたたび背後を振り返ろうとした賊の頭部を
からぁん――取り落とした長剣が床の上で音を立て、肺を貫かれた賊が弓形に背中を仰け反らせて水音の混じった悲鳴をあげる。
次の瞬間、水音の混じった賊の悲鳴がごぼごぼという嗽の様な音に変わった――ライが突き刺さった
幅広の刃を備えた
薄情な子供が壊れたおもちゃを投げ棄てる様に――適当に放り棄てられて床の上に俯臥せに倒れ込んだ断末魔の痙攣を繰り返す賊の背中、傷口のそばに踵を叩きつける様にしてかがみ込んだ
もはや悲鳴をあげることもかなわないまま賊の体がびくりと大きく痙攣し、その血糊がべっとりとこびりついた
「わ、わあああああああっ!」 右肩を矢で貫かれた賊が、牢獄につながる斜面を駆け降りてくる――肩口から飛び出した血のついた鏃は木の葉の様な形状の小ぶりなもので、アーランド王国軍の弓兵部隊が制式装備品として採用しているものだ。
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