第19話
それはともかく、この考えが正しければ、なるほど
ライの住んでいた世界には空に動かない星――彼はホッキョクセイと呼んだが――があるらしく、その方位と高度を正確に計測することで自分が今いる位置が正確にわかるのだそうだ。
この世界――エルンと彼女たちは呼んでいるが――にはそれが無いので少々勝手が違う様だが、空に浮かぶみっつの月や二個の太陽を利用して似た様なことは出来るらしい。以前直接会ったときに、エルンに飛ばされてきてすぐ、十数日間かけて必要な情報をすべて集めたのだと話してくれたことがある。なるほど、いきなり樹海に放り出された彼が右も左もわからない状況で自分の拠点と現在位置を把握するのは、生き延びるために絶対に必要だっただろう。
それはつまり空に月や星、太陽が出てさえいれば自分の居場所がわかるし、正確な地図を作製することが出来るということだ――当然、自分の現在位置と目標地点の位置関係も正確に把握出来る。
以前王城に招待された彼と話をしたときに、国土南側の樹海には高台があって、朽ちた防壁の痕跡があるという話を聞いたことがある――高台や防壁の存在自体は王国でも知られているものの、実際のところは伝説にその存在が出てくる程度の認識でしかなく自分の目でその実在を確かめた者はいない。
つまりそれがここなのだろう――
左手の斜面を登った先の砦の広場で酒盛りをしていた賊たちが、悲鳴をあげながら次々と撃ち斃されてゆく――リーシャ・エルフィがそう目算を立てていたのと同様、彼らも王国側は明後日にならないと動かないと判断していたのだろう。ことによると、駐屯軍は動かないと考えていたのかもしれない――彼らはすっかり油断して、ほぼ全員で酒盛りに興じていた。
見張りすら立てていなかったのが、彼らの失策だったと言えるだろう――あるいは立てていた見張りは遠距離射撃で排除されたのかもしれないが。
彼に先制攻撃を許してしまえば――あとはもう、一方的に蹂躪されるだけだ。
先の号令で攻撃を開始したのだろう、
金属音が聞こえないのは、酒盛りを始める前に武装を解いていたからだろう――彼らの目算から考えれば、あと一日二日は警戒の必要は無かったはずなのだ。腰帯に差しておける様な小型の
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