第51話
燃え残りの薪が爪の先ほどの炭化した破片となって残っているのは、刃先を軽く木桶の内側に打ちつけて灰だけを落としてから炉の中へと戻す――さすがに前回来たときから一ヶ月以上経過しているので、助燃触媒もその役目を果たしきれなかったのだろう。木炭を残して灰の大部分を木桶に移してから、ライはいったん小屋の外に出た。
薪棚から数本の薪を引っ張り出し、それを小脇にかかえてふたたび小屋へと取って返す。
今回は丸太を玉切りする作業をする気は無い――ユーコン・ストーヴのそばでかがみこむと、ライは薪の一本を手に取った。玉切り用の鋸も薪割り用の斧や鉈も手元に無いので、わざわざ運び出す意味も無い――だからとりあえず積み上げた丸太はそのままだ。
基本的にこの樹海の中の野営地に刃物は置いていない――湿度が高いので、未塗装箇所のある金属製品を置いておいてもどうせすぐに錆びてしまうからだ。それは比較的錆に弱いATS-34などのステンレス鋼でも例外ではない――この世界には成分を調整して金属を作る技術が無いので、意図的に耐蝕性の高い鋼を作ることは出来ない。ライも
まあ、アレは耐蝕性なんて無いに等しいしな――そんなことを考えながら右脚に括りつけたシースからストライダーの大型ナイフを抜き放ち、
割り取った細い薪を拾い上げ、襷掛けにした雑嚢を探る――平べったいナイロン製のケースを取り出すと、ライはスリーブ状のケースから真鍮のグリップを持つ大型のフォールディングナイフを引っ張り出した。
使い込まれてすっかりくすんだ鞘と呼ばれるグリップには、竹林から顔を出した虎の刻印が施されている。
兵庫県三木市にたった一軒だけ残った工房で生産されている、
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