第15話
「しょせん連中の皮算用だからはっきりしたことは言えないが、人員をあまり増強してこれ以上食い扶持を増やすことはしないだろう――それをするなら、王女襲撃の段階で出せるだけ人を出したほうが成功率が上がる。不必要なほどの人間が固まって行動してたら不審を招くし、騒ぎを起こさないために一般人に紛れて宿場町に投宿しながら合流場所へ向かってるんだろう。今この瞬間もな――何十人も投宿してたら費用がかさむから、人数はそれほど多くないはずだ。つまり連中に仲間が合流するとしても、商隊とその護衛を装って食糧なり消耗品なりの補給物資を運ぶ、多くても十人程度だろう――そしておそらく荒事にも長けてない、後方支援が役割の連中だ。腕の立つ連中ならなおのこと、最初から参加させるべきだからな」
ライはそう続けてから、まとまらない考えをまとめようとするかの様に考え込んだ。
「つまり、連中の追加人員は荒事慣れしてない素人が十人程度――実際に砦に到達して状況を確認したとき、追撃を選択する可能性は低い。アーランド国内における連中の手駒は、追加人員しかいないはずだから」 ライはそう言ったところで舌先で唇を湿らせると、
「だから味方の全滅と人質の喪失、そして大きな戦力差があることを理解すれば、撤退を選択する可能性は高い――人数で劣るうえに、向こうは素人集団でこっちは戦闘訓練を受けた兵隊だ。仮に様子見に砦に人を遣ったとして、正確に状況分析が出来るとも思えない――砦の周囲は乾燥して足跡が残らないから、そこから人数を推測することも出来ない。荒事に慣れた連中が王女拉致に参加し、鉄火場に慣れてない連中が補給物資を運んでるというこの考えが正しければ、こちらの戦力を過大に見積もる可能性は高い」
ライはそこで言葉を切ってちょっと考え込むと、
「――それに砦にいた連中の食糧の残量から考えるに、連中が移動を始める予定だったのは朝食後、つまりちょうど今頃だ。ネイルムーシュに到着予定だった連中が実際に現地に到着するのは、例の手帳の通りならおそらく今日の昼頃――そこから実行部隊の連中と合流するまでにはネイルムーシュの連中も移動するなら二日、移動せずにネイルムーシュで仲間の到着を待つなら四日――仲間が合流地点に姿を見せないことで砦に
「その手段が川下りか」 ゲイルが引き継ぐと、ライはああとうなずいた。
「さっきも言ったとおり、川底の足跡を消していく――川を下ったことを確信出来ない状況で、連中が躊躇無く川下りをしてくるとは思えん。普通の状況なら何度か川から上がって敵を撹乱するところだが、その必要も無いだろう――足跡をきちんと消しながら進めば、五日もあれば完全に痕跡は消える」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます