第12話
それとは別に逃がした近衛騎兵による報告を受けて
つまり最短でも丸二日半の余裕があるし、その前に離脱すればそれで問題無い。
「つまり?」
「別の拠点に移動するんだろう。国軍の追跡部隊がここにやってくる前にな」 ライはそう答えてから、ナイフの鋒についた苔の混じった土を
実のところ、
どのみち舗装されていない土の上では重い馬車の車輪が轍を残すから、地面が乾燥していてもさして変わらないだろうが――舗装路からはずれた時点で、痕跡が残るのは必然。
そして馬車を適当なところで棄てて徒歩でどこかへ移動するにしても、その徒歩の移動での痕跡が残ってしまう。
それを
逆に言えば、彼らは今夜のうちに移動する必要は無いのだ――移動するのは明日の朝で十分だし、なんなら翌朝と言わずぎりぎりまでしっかりした監禁場所があるあの砦にとどまるかもしれない。
移動を始める前に彼らの拠点にたどり着くことが出来れば、計画の
だが――胸中でつぶやいて、ライは頭上を見上げた。
「どうかした? 難しい顔して」 自分の眉間を指差して、かたわらのメルヴィアがそんな質問を口にする。
「否、なんでもない」 ライはそう返事をしてかぶりを振ると、そんなに眉間に皺が寄っていたかと自分の額に手を遣った。
そもそも彼らがどうやって道を見失わずにここまでやってこられたのかという、根本的な疑問の答えが見つからない。ライであれば方法は知っているのだが――彼らがそれを知っているはずもない。この世界には概念そのものが存在しないのだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます