第2話
弓を固定しているレシーヴァーは先端部分、
だがそれよりも特徴的なのは、レシーヴァーが後方へ長く伸び、同時に縦に広がって――ちょうど肩に押しつけて照準を安定させる、
彼らは周囲を警戒しているのか薄く油を塗った上から粉末状に砕いた炭をなすりつけて光の反射を抑えた鏃をほうぼうに向けながら、一メートル間隔の一列縦隊で森の中を進軍していた。
「ゼィルミィ、フィール・サオ――」 愚痴をこぼす様に隣の仲間と会話を交わしている兵士たちに、先頭を歩いていた男が小さな吐息を漏らす。
彼は一度足を止めて背後を振り返り、
「ズルガァ、ディ・ジ」 余人には意味のわからぬ言葉でそう言うと、彼は片手で頭上を指差した――否、枝葉に遮られて姿は視認出来ないが、今まさに頭上に浮かんでいるであろうみっつの満月を示したのだろう。
遠くの山脈の稜線からその姿を現したばかりの月と中天に浮かぶ月、そしてあと数日かけてじきに沈んでゆくであろう、砕けてふたつに割れた月。
「ジ・ドゥ・ザード・シ・リィ・ザーラ」 彼はパッパッと掌を開いたり閉じたりするのを三度繰り返し、
「ズーシ・ザイ、ジェ・ディーディ」
彼がなにを言ったのかは、知るよしも無いが――
兵士たちはそれで納得した様だった。兵士としての威厳の象徴たる甲冑や外套をみずから泥で汚すという行いに対する嫌悪感も棄てることにしたらしく、たがいに視線を交わして口元を引き締める。
彼らは一度姿勢を糺し、それまで両手で保持していた
「ジ。シー・ダッカ、シーヴァ・リュー・ライ」
相手に対する敬意を込めたその呼びかけに、その敬礼を向けられた男はかぶりを振った。
「ナン、イレ・サンクティオ」
その返事に、ふたりの兵士たちは敬礼の姿勢を保ったまま答えようとはしなかった。
「ライ」 先頭を歩いていた彼の後ろを歩いていた人物が、彼の肩を軽く叩く。ほかの兵士の様な敬意と畏怖を込めた呼びかけではなくごく身近な相手に対する親しみを込めて彼を呼ぶその声は、まぎれもなく若い女性のものだった。
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