第2話 九天市

 ※前回のあらすじ


 公にできない事件を秘密裏に請け負って解決することを生業とするひさかた請負事務所に所属する少年――なぎかいは、情報屋のあられいから依頼を受ける。『森の王』と呼ばれる禁術資料の盗難。事件の真相を探るために彼らは行動を開始する。


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 九凪皆は新谷零士が運転するセダンの助手席に座って、流れゆく外の景色を眺めていた。

 平日の午後という時間帯のためか片道三車線の国道はそこそこの混雑具合である。あちこちでビルや道路の工事をしているせいもあって車の進みはあまり良くなかった。 

 

 禁術――『森の王』の術式資料の盗難。


 二人は事件の情報を集めるために資料が保管されていたあけみねの施設へ向かうことにした。九凪皆の師匠――ひさかたは愛車の大型二輪で先に現場に向かっている。


「……ごめんね、皆くん。みさきちゃんの事を勝手に喋っちゃって」


 赤信号で止まったのを見計らって、新谷が話しかけてきた。九凪は表情を柔らかくしてから答える。


「大丈夫ですよ、いつかはバレると思ってましたし」

「そうだよね、仕方ないよね」

「でも勝手に喋ったのは良いことじゃないですよ?」

「……一つ、借りってことで許してくれない?」

「それで手を打ちましょう」


 苦笑いを浮かべる新谷に気付かれないように、九凪はふっと視線を窓の方へ逃がした。


 前川みさき。


 半年くらい前に出会ってからつい先日まで九凪の家に半居候状態だった少女だ。基本的には毎日帰ってきて、数日離れる時は必ず連絡をくれた。だがもう2週間以上も帰ってきていないし連絡もない。


 原因は分かっている。


 脳裏に過ぎるのは、あの時の後悔。

 あんな答えを出してしまった自分への怒り。


 もやもやとした感情が胸に流れ込み、針となってチクチク突き刺さる。悄然とした表情を見せないためにも景色を眺めている振りをし続けた。


 てん

 人口28万人の地方中心都市。関東地方の某県に位置し、都市部までの交通の便が良くベッドタウンとして栄えている。またこの街に本社を置く企業も多く、活気に満ち溢れた都市として有名だった。


 別名、『カイじゅつの街』と呼ばれている。


 この十数年で九天市も大きく発展してきた。

 中心部は高層ビルが建ち並び、企業や商業施設が誘致された。有名私立大学のキャンパスが移設された事もあり、九天駅の近くに行けば様々な年齢の人が数え切れないほど行き交っている。


 中でも一際目立っている建物が約1ヶ月後にしゅんこうしきを迎える『桐生グランドクテン』だ。地上255メートルの52階建て。商業店舗や高級オフィス、ホテルにスパなど様々な施設を詰め込んだ九天市の新しいランドマークである。周りにも高層ビルは存在するが、やはり高さと現代的なデザインで一線を画していた。


「桐生ビルが気になるのかい?」


 ちらりと桐生ビルに視線をやった新谷が運転しながら続ける。


「あのビルね、じゅつ的に見ても面白い立地に建てられているんだ。土地の力を利用するちん西ぜいの『結界術式』。その観点から見ると、桐生ビルはりょう――莫大な大地のエネルギーの奔流が交わる場所なんだ。強力なパワースポット。桐生ビルの建設は十年前からあけみねの主導で行われているんだけど、それはパワースポットを管理したいという六家連盟ろっけれんめいの思惑が絡んでるって話だよ。いざという時に二家同盟にけどうめいに切り札として使われたら困るからね」


 ろっカイじゅつれんめいと呼ばれる組織が存在する。

 界力術の基礎を解明した『始まりの八家』の内の六家――たつおかあけみねてらじまなつごえとしもりかいどうが創立した独立行政法人で、界術師関連における最高意志決定機関である。


 実際に行政の処理をしたり国会で発言をするのはしょうだが、界術師にとっての重要事項や方針を決めるのは六家連盟というのが現在の主流だった。


 また『始まりの八家』の内の残り二家――あまちん西ぜいは思想の違いから六家連盟には属していない。彼らは独自に『カイじゅつどうめい』を結成して六家連盟と対抗している。だがその差は圧倒的で、政治的な面でも、界術師の戦闘力的な面でも、二家同盟が後塵を拝しているという状況が続いていた。


 また対立が浮き彫りになった十数年前に、当時も優勢だった六家連盟が二家同盟を差別するような印象操作を行った。二家同盟も対抗して過激な行為に走ったという経緯もあり、界術師への差別をなくそうという気運が高まった現在でも、二家同盟――天城家と鎮西家の界術師は危険な連中という印象が根強く残っている。


 界力術というのは非常な危険な力だ。

 使い方によってはどれだけでも残酷に人の命を奪うことができる。


 ひどい差別があった。界術師を悪魔の遣いと罵る人もいた。

 だがそれも十数年前までの話。現在は六家連盟の努力の成果もあって界術師の印象はかなり改善されてきていた。


「確認なんですけど、今回の依頼って新谷さん個人のものなんですよね? 『めいおう』ではなくて」

「そうだよ。めいおうの名前を借りるならこんな雑な契約は結ばないからね。それに僕一人じゃ行動させてくれないよ。今日だって、プライベートな約束だって組織には報告してるし」


 新谷零士は『名桜』と呼ばれる組織の幹部でもある。

 裏社会――一般社会における常識や法律が適用されない世界には、暴れたいだけの若者が集まっただけの界術師集団から、企業や著名人の後ろ盾に保護された機関まで、大小様々な組織が存在する。


 名桜はそんな混迷を極めた裏社会でも指折りの組織だった。


 組織の強さを決める要素は二つある。一つは後ろ盾の大きさで、もう一つは所属している界術師の戦力だ。名桜の後ろ盾は『始まりの八家』の一つである明峰家であり、所属する界術師も裏社会では名の通った猛者だ。他の裏組織と比べると様々な面で破格の力を持っていた。


 九凪は取り出したメモ帳に新谷から聞いた事を書き込んでいく。


「……いつも思うけど、皆くんはよくメモを取るよね」

「癖みたいなものですよ。僕は何かを考えるときはまず紙とペンからって決めてますから」


 新谷のセダンは、高架上の幹線道路を通って九天市の都市部を抜けていく。

 界術師の街として有名な九天市だが、これは六家界術師連盟本部が置かれているという土地的な意味だけではない。界術師と一般人が共生していくために様々な施策を行う実験都市でもあるのだ。


 例えば、道路の端には真新しい街灯が並んでいる。


 これらの街灯は先日導入されたばかりの『を用いた灯り』が利用されている。界力という資源を戦闘ではなく実生活に活かすための第一歩として大きな注目を集めていた。

 

「あの街灯、どれくらい実用性があるんでしょうね」

「まだ開発途中だからね、実用性は皆無だって話だよ。明かりを付けたり消したりするのは界術師しかできないし、何より燃料であるせきを数時間に一度のペースで交換しなくちゃいけない。まだ電気やガスの代わりにはなれないかな」


 他にも界力を実生活に生かそうという試みはいくつも存在する。

 しかし思うような成果を上げられていないというのが現状だ。技術的な問題は山積みだが、十数年後には界力が電気やガスのように身の回りで当たり前に使われる時代が来ると予想されていた。


「つい最近だったけど、六家連盟と開発企業があの街灯を『とう』って名前で商標登録したってニュースを見たよ。上からすれば本気で実用化して利益を上げるつもりなんだろうね」

「宣伝効果はありそうですよね。目に見えて分かりますし」

「近頃は界術師のメディアへの露出が一気に増えてきたからね、国民が界術師に対して良い印象を持っている内にプロジェクトを進めたいのかも」


 界力が生かされているのは、実生活にだけではない。


 九天市では界力術を娯楽の面でも活用させようという動きがある。界力術を使った派手な演出が有名な劇団が人気だったり、界術師だけで構成されたご当地アイドルグループまで存在したりしている。それらほとんどが九天市の住民に受け入れられているという事情からも、九天市は他の都市とは比べものにならない程に界術師との共生が進んでいる事が分かる。


 界術師のメディア露出には六家連盟も肯定的で、現在では全国放送の番組で界術師の芸能人を見ることも当たり前になってきた。まだ界術師への偏見が色濃く残っていた十数年前からは想像もできないような進展である。


「九天市は実験都市だ。これからもっと成功事例を積み重ねていけば、他の都市や町でも界術師が生活しやすくなるんだろうね」

「界術師は加入できないって自治体とか、界術師は入場できない施設とか、このご時世になってもまだ色々とありますからね」


 現在、日本には約32万人の界術師がいるとされる。言い換えれば0.25%。一割に満たないほどの少数だ。

 

 界術師への差別がほとんど解消されて一般人との共生が国の方針となった今でも、やはり界術師を受け入れられない人はいる。九天市での成功例を元にして一人でも多くの人に界術師を受け入れてもらう事こそ六家連盟の狙いだった。


「今の内に禁術『森の王』について話しておこうか」


 運転を続けながら、新谷零士が口を開いた。


「さっきも言ったけど、本来は机上の空論でしかなかった術式だよ。十年前にてらやましんいちという研究者が論文を書いたのを最後に、六家連盟によって禁術として封印されてきた。方式はあけみねの『儀式術式』」


 界力術は基礎となる『方式』を使って『術式』を構築する事で発動する。この方式を生み出したのが『始まりの八家はっけ』と呼ばれる八つの家である。


 この世界は三つの次元が重なり合うような構造になっている。


 最も中央にあるのが『げんじつげん』。人間が生活するとも呼べる次元だ。


 それを覆うように存在しているのが『げん』。粒子状の界力が無数に存在している次元であり、人体に備わった知覚能力や機械等あらゆる方法を持ってしても観測することができない。


 そして最も果てに存在するのが『おくげん』。世界の根底を為し、その在り方を決定付けてしまうような重大な出来事――『世界の記憶メモリア』を保管する次元である。ある学者は『神秘の保管庫』とも表現し、その全容が把握できればこの世の全てを理解できるとさえ断言した。


 この人間や機械では観測できない次元を利用して超常現象を起こす人間をカイじゅつと呼ぶ。


 世界の記憶メモリアとは、界力術のもととなる概念である。界術師は界力を使って術式を構築し、記憶次元の世界の記憶メモリアを現実次元まで引き落とし、現象として再現するのだ。


 明峰家――生み出した方式は『儀式術式』。

 記憶次元に保管された世界の記憶メモリアの中には、神話や伝承といった形式のものもある。儀式術式では『条件』を整えて神話や伝承の状況を再現することで、現実次元にてその神話や伝承に応じた超常現象を引き起こす。


「『森の王』のベースになっているのは一つの神話。この術式で厄介なのは、人間が、あろう事か神様と同等の存在になろうとしているんだよ。少し逸れるけど、皆くんはバベルの塔の話は知っているかい?」

「神に届くような高い塔を建設したら、神様の怒りに触れて塔が崩れ去ったって話でしたよね」

「そう。人間は神にはなれない。神に近づこうとしたモノは例外なく神の怒りに触れている。そして、『森の王』の神話では同じような結末を迎えるんだ。広大な森の中に一本の大樹があってね、その木の先は雲の向こう――つまりは天上カレティスに届いていると信じられていた。森の民は樹を登って神に謁見しようと試みた。ここまではまだ良かったんだ。だけど森の民は傲慢だった」


 新谷は滑らかな挙動で交差点を曲がる。いつの間にか、周囲の景色は都市部や住宅街の活気づいたものから、自然が多いものへと変わっていた。


りゅうひとみ。正しくはその森を根城にしていた巨大な蛇の瞳なんだけどね。森の民は自分たちの力を示すために、その大蛇の瞳を神への献上品として持って行った。力を認めてもらって、自分たちも人間ではなく『神』の仲間に入れてもらうために。これは許されざる行為だった。大樹の先端は天上カレティスへと届いていた。そこで森の民は神――『フィーム』に会い、そして逆鱗に触れた。フィームは天上カレティスへとやって来た彼らだけではなく、傲慢な森の民を森ごと全て燃やし尽くした」

「……その神話が儀式術式で再現されるなら、どうなるんです?」

「一つは単純な破壊。森を焼き尽くしたように、術者を中心として広大な範囲が炎の海に沈む。フィームはの六大要素における『火』に分類される神だ。炎による被害は避けられない。二つ目は森の民の殲滅を利用した『特定の集団への攻撃』だ。最悪、『日本人』という集団だけを殺すなんて設定もできるだろうね」


 無茶苦茶な予想だった。

 特に後者が凶悪だろう。前者はまだ対策を講じられるが、後者は呪いのようなもので防ぎようがない。術式の裏を掻くか、発動自体を阻止しなければ、逃れようのない暴力に襲われるはずだ。


「だけどそこまで悲観的じゃないんだ。龍の瞳。森の民がフィームに差し出した献上品があっただろ? 儀式術式は『条件』を整えて神話や伝承を再現する方式。つまり術式を発動するためには、絶対にこの『龍の瞳』が供物として必要となる」


 当然、本物のドラゴンの眼が必要という訳ではない。術式的に定義できればいいため、今回の場合であれば、界力によって精製された宝石――せきが使われるだろうか。


「神話の完全再現だからね、森の王を発動させるためには国宝級の貴重な界力石を使う必要がある。界力石は何百年もの時間を掛けて生み出された大地の結晶。ほいほいと気軽に用意できるものじゃない。何より天文学的な量の界力を使わないと術が発動すらしないんだ。貴重な界力石は全て界力省が管理していて持ち出される心配はない。だから術式を盗み出した黒幕は、神話通りの大破壊を撒き散らすような規模の術式を構築できない」

「……疑問に思うんですけど、今回の事件って結構大きなものですよね? 連盟が動くのは分かるんですけど、警察……『あん』は動いていないんですか?」


 テロ行為や違法組織の武力闘争などを専門に取り締まるのが、警察組織の中にある警備警察――通称公安である。そして、界術師による犯罪を専門的に取り締まる部署が日本の警察には存在する。


 警視庁公安部界力犯罪対策課。通称、あん


 年々増発傾向にある界術師による犯罪を抑制し、界術師と一般人が安心して共生できる社会を目的として、50年ほど前に設置された部門である。所属している警察官は全て超難関と名高い試験に合格した『国家界術師』であり、精鋭揃いだと絶大な信頼を集めていた。


「大きい事件だからこそ警察は動けないだろうね。連盟や界力省の圧力が掛かる」


 六家連盟は、世間における界術師の評価を非常に気にしている。

 数十年前のような極端な差別はなくなったとは言え、界術師への偏見はまだ残っている。特に過激な排斥思想を持つ連中は『界術師排斥派』と呼ばれていた。


 排斥派は、危険な存在である界術師は隔離して国の管理下に置くべきだと主張している。人間の皮を被った悪魔になど人権は必要ない。我々の安寧を侵す脅威は即刻排除するべき、というのが彼らの考え方だ。


「連盟からすれば、現在は少数でしかない排斥派の主張が世論を巻き込むことは絶対に避けたいんだよ。それが追い風になれば、界術師にとって差別的な発言をする議員や著名人が出てくるだろ? 一度燃え広がった火は中々消えてくれない。弱みを見せればメディアだけじゃなくて匿名の個人までもが好き勝手にわめき始めるよ」

「日本人は弱い者を苛めるのが好きですからね。ワイドショーやニュースでこてんぱんに叩かれている芸能人や議員の代わりに界術師がなるって訳か……考えたくないですね」

「その先に待つのは、界術師の人権が規制された僕らにとってのディストピアさ。正義の名の下に行われる人種差別だよ」

「そうならない為に連盟は公になる前に事件を解決して、存在自体を揉み消すってことですか?」

「そう。禁術の資料の盗難なんて、発覚すれば世間を揺るがすような大事件だ。危険な化学兵器が盗まれたようなものと考えてくれればいい。界術師が批難を浴びるのは避けられないだろ? だから連盟はこの事件を隠蔽したいんだろうね。実際に、どのメディアでも報道はされていないし。別にこの事件に限らずに、僕が知っているだけでも無数に隠蔽されてきた事件はあるよ」


 もちろん、全ての事件が六家連盟や界力省の思惑通りに隠蔽される訳ではない。ただ隠蔽される事が多いという事実から、界力省と警察の癒着が噂されている。それは日本という一つの国のシステムに対し、政治的に介入できるほどの影響力を、界術師が得ているという証拠でもあった。


「そろそろ着くから、降りる準備をしておいてね」


 新谷のセダンは国道を外れて、木々が生い茂る山道を上っていく。かなり標高が高くなってきた。車窓からは遠くの景色が見渡せる。


 九天市の隣にあるきょう。西にあるくれみねやまにはあけみねの重要施設が多い。禁術の資料が保管してあったのも、この施設群の中の一つなのだろう。


 途中に頑丈そうな金属製の門があり、守衛にすいされた。彼らも界術師なのだろう。屈強な体格と強靱な佇まいから強者つわものであることが容易に察せられる。流石は始まりの八家が一つ『明峰家』の重要施設群の入り口といったところか。迂闊な行動はできないような緊張感を覚え、九凪は気を引き締め直した。


 新谷は許可証のような物を守衛に見せ、難なく門を通過する。その後、大きな図書館のような建物の駐車場で止まった。


 九凪は外に出て、後部座席に置いたコートを羽織る。

 十一月の冷たい風に煽られて、枯れ葉が道路の上を舞っている。山の斜面に生い茂る木々の葉はほとんどが枯れ落ち、剥き出しの梢が手持ち無沙汰に伸びていた。物寂しさを除けば先日事件が起きたとは思えないほど穏やかである。


「こっちだよ」


 新谷は勝手知ったる様子で施設へと歩き出した。ここは明峰家の施設であり、新谷も明峰家の方式を使う界術師だ。過去にもここに来たことがあるのだろう。


「あれ、師匠はどうしたんですか?」


 駐車場を見回しても、玖形の愛車である真っ赤な大型二輪が駐まっていない。


「由美にはこの地形を把握しておいてもらおうと思ってね、自由にこの暮峰山の中を走り回ってもらっているんだ。まだ、資料を盗んだ連中がどうやって逃走したのかも分かっていないしね」

「車が通れるような入り口は、さっきの門だけなんですか?」

「いや、あともう一つある。僕たちが入ったのが西門で、反対側に東門があるんだ。車を使って逃走するなら必ずこのどちらかを通る必要がある。だけど、守衛の記録や監視カメラを見ても犯人らしいものは映っていない」

「なら、この森を徒歩で抜けて行ったんですかね」

「それも考えにくいよ。森には儀式術式が掛けられていてね、正規の手順を踏まないと迎撃術式が発動するようになっている。解除方法を知ってる内部の人間か、由美のようなじゃなきゃ突破はできないよ。ここはあの明峰家の重要施設群なんだ。そんなに警備は優しくないはずなんだけど……」


 怪訝そうな顔で腕を組んだ新谷の後ろを歩いて自動ドアを通った。暖房の効いた室内だ。一息つきたくなる気持ちを抑えて二人は受付へと向かった。

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