この先生きのこるために便利な外注業者になろう


大澤:わたしほら、VIPで「出会い厨釣(検閲済み)すスレ」とかやってたじゃない?


ロッキン:わらう。


大澤:基本がインターネット大道芸人なんだよね。タイムラインで目の前の通りすがりの人相手に芸をやって、ちょっと歓んでもらうみたいな。わりと目の前の人しか想定できないの。だから、何千人の読者とか巨大すぎてイメージできなくて。


ロッキン:あー、全国の本屋に並んでるってのはいまだに想像つかないですね。テキストサイトもブログも、アクセス数が1日に10人とかでもしこしこ書いてたんで尚更。そう考えてみると、自覚もせずに幸せすぎるな。


大澤:どうもカクヨムのPVを見てるとわたしの読者って固定でだいたい100人くらいなんだけど。まあ全然話にならないんだけどさ。でも、100人ってすごくない? マイミク100人って当時はすごいステータスだったんですよ!!!!!


ロッキン:小さい学校だったら1学年の規模ですよ。小説なんて、書くのも苦労するけど読むのも苦労するんです。100人が何十分もかけて、自分の脳内にしかなかったものを読んで理解してくれる。これはやばい。初めてそれに気づいた時は震えました。感想を読むと、どうやら本当に同じものが見えて居るらしくて、となるともう自分だけの妄想じゃないですから。これはやばい。天地創造だと。小説って超楽しいんです。


大澤:小説ってすごいよね。普段の生活で顔を合わせる会社の人とか友達とかには言ったことないような自分の一番深層にあるものを顔も知らないまったくの他人に大公開するわけじゃないですか。毎日顔を合わせている会社のあいつよりも、わたしの小説を読んでくれたどこの誰とも知らないあなたのほうがわたしのことをずっと深く知っている。


ロッキン:作者と読者、普通の人間関係よりも一歩踏み込んだ不思議な関係です。


大澤:顔とか名前とか年齢とかのパーソナリティーはいくらでも偽れるけれども、小説に関しては嘘はつけないからね。盛ったところですぐにバレちゃうし、より底の浅さが露呈するだけだから、全裸の自分をさらけ出すしかない。


ロッキン:読者は馬鹿じゃないですからね。こういうのが好きなんだろ? みたいな浅はかな展開とか、雰囲気でどうにかしようとしてる仕掛けが滑ってるのが本当に嫌で。読者を舐めんなと。


大澤:むしろ、いかに全裸になるかというところにテクニックがあると思うんだよね。とりあえず全裸だと凄みがあるじゃん。ただのオッサンが襲いかかってきても別にフーンだけど、全裸のオッサンが襲いかかってきたら凄みがあるもの。


ロッキン:そう、恥ずかしがってるより剥き出しで勃起してた方が面白いんです。


大澤:ロッキンはわりと恥知らずなところあるよね。いいと思う。フットワークの軽さと恥じらいのなさは武器。


ロッキン:なにか格好つけてる人がむず痒くて見てられなくて。積極的に道化になっちゃいますね。


大澤:地の性格てきな部分だとどうしようもないけれど、どうだろう? 恥ずかしがらずに尻を軽くしておくために心がけていることとか、そういうのがあれば参考になるかも。


ロッキン:うーん、面白そうと思ったアイデア、ピコンと点灯した最初の発想を大事にしたら良いと思います。最初の発想って誰でも思いつくけど、それを形にしようとする一歩を踏み出さない人がほとんどで、たとえば「先人がもうやっている」とか、「これはふざけすぎている」とか、色々理由を探して、結局書かない。でも、ほとんどみんなそうなんだから、やってみるだけで一歩抜きんでることができるはず。面白いことをやろうとするなら、普通の考えかたじゃダメで、でも普通の精神を持ったまま逸脱していければ絶対に面白くなる。


大澤:あ、そう。普通の精神を保ったままみたいなの、大事だよね。気の狂った小説を書く狂人はたぶん珍しくないんだろうけれど、でも、すくなくともライトノベルはね、お仕事だから。気の狂った小説だけ書いていればいい作家先生様ではないから。


ロッキン:あ、それ。わかります。


大澤:気の狂っている人とお仕事したくないもんね。


ロッキン:当たり前だけど、小説ってたくさんの真面目な社会人と企業のちからで世に出るんですよね。なんでもありの表現のゴミ捨て場じゃなくて、経済を回す商品の生産者であることは忘れないでいたい。


大澤:泥臭い話をすると、ライトノベルってとにかく毎月、各レーベルからn本新作を出さないといけないみたいなお仕事じゃない? 枠が先にあるわけ。で、ひとりの編集者が並行して何本も案件を抱えているから、クソほど忙しそうなんだよね。


ロッキン:ほんと、みなさん命を削って仕事してますよね。


大澤:だからね、もちろんそのn本の中には編集者が「これで天下を取りにいくぜ!」って思っているものもあるんだろうけれど、現実問題としてなにかでそのn本の枠を埋めなきゃいけない。でもリソースがない。手を掛けられない、みたいなこともあるわけよ。たぶんだけど。想像ですごい適当なこと言ってるから真に受けないでほしいんだけど。


ロッキン:まあ、そんな雰囲気はありますね。


大澤:あ~なんかひとつ枠埋めないとな~なんでもいいんだけど、ってなったときに、発注したら後は放っておけば期日までにとりあえず一定の水準をクリアしたものを返してくる人って、外注業者として便利だと思うんだよね。で、なんの話かっていうと、わたしはたぶんその枠なんじゃないかっていうことなんだけど。


ロッキン:でも、それって言葉にするほど簡単なことじゃないですけどね。凄まじい馬力を持ってないと。大澤さんの進捗速度を見ているとマジでビビります。


大澤:ロッキンも凄まじいでっちあげ力で便利な外注業者として生き残っていこう。


ロッキン:僕に同じやり方ができるかは分からないですけど、こだわりのなさを活かして細く長くでも続けていきたいです。




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