分からない。俺たちは雰囲気だけで小説を書いている(再確認)


大澤:もう失礼を承知でぶっちゃけて言うんだけれど、なんていうのかな。ロッキンは毎回、雰囲気でどんどん書いていって、ふと気付いたら右手と左手に残っていたものをその場でン~~!! ってアッポーペンして片付けている感じがあって、いや完全にマグレでしょって思うんだけど、でも結果的にキマっちゃったのならマグレでも計算づくでも同じ話なんだよね。


ロッキン:再現性がないので毎度神頼みしてます。降ってこ〜いって思いながら生活してると寝起きとかに玄関に届いてる。


大澤:でもさ~。わりと降ってくるときって実際に降ってくる前から「降ってくるだろう」って確信しているところない? これも言語化しづらいんだけれど、自分で書いたキャラクターを信じるみたいな。


ロッキン:ああ、わかります。


大澤:自分にはまだ分からないけれど、このまま進んでいけばきっとなにかを見つけてくれるはずだ、みたいな感じで、自分のキャラクターを信じて無策で書き進めるの。そうすると、やっぱりちゃんと見つけてくれる。


ロッキン:土に種を埋めて水を撒いてる時みたいなワクワクありますね。僕の場合、途中で投げちゃった作品も結構あるんですけど、そんな時は見切り発車すぎてキャラクターの人生観? があやふやで、序盤から書いて読んでるこっちが心配になってます。で、結局どん詰まっちゃって「あーあ」って。「ノリだけでカッコいい行動しようとするからだぞ?」って、キャラクターと一緒に反省会です。


大澤:ウケる。なんか、小説を書くのに一番似てるのって潜水だと思うんだよね。息をとめてなるべく深く深く潜っていくの。


ロッキン:ああ。


大澤:キャラクターの深いところにまで潜れると自然とその子の中からテーマが立ち上がってくるんだけれど、でもどうやってキャラクターの深いところに潜っていくかっていえば、やっぱり書くしかないんだよね。それも設定じゃなくて本文を。設定をいくら書き連ねても全然その子の顔なんか見えてこないの。


ロッキン:わかりて。


大澤:とりあえずなんでもいいから本文を書き始めて、なにかの出来事に遭遇させて、リアクションさせて、誰かと会話させてってやっていくと、だんだんその子のことが自分にも見えてくる。


ロッキン:作者の手から離れていきますね。想定以上に勝手に成長していく。よくキャラをうちの子っていう人いますけど、まさしくうちの子。大きくなって親を離れていく。


大澤:で、わたしは毎回そういう感じだから、書き始めた本文がそのまま完成原稿になることなんかまずなくて、一周目はまず自分がキャラクターを掴むための試運転みたいなものなの。だから、最低でも一回はまるまる書き直す。周回前提なの。


ロッキン:(激しく頷く) これ、丸々書き直すって考えられない作業な気もするけど、やってみたら分かる、その作品のポテンシャルはまだ無限にある。本当におすすめです。


大澤:「限界集落オブ・ザ・デッド」は間違いなく、書き直すたびに進化して深化していったからね。


ロッキン:オールユーニードイズキル式創作法として全ての小説書きに勧めたい。キャラが居るんだからそこで完結させるのは勿体無い。


大澤:あと、旧作だろうとなんだろうと自分の身から出てきたものはひとつの作品に全部盛れって思いますね。たかだか数百PVしかないような君のカクヨムの小説なんか誰も覚えてないから、既に書いた小説からも使えそうな部分はどんどんサルベージしてめちゃくちゃハイカロリーな一本に組み直したほうがいい。なんかわりとみんな「これはもう他で書いちゃったから」って、使い捨てにしちゃうよね。新作とはすべて新たに書き起こさねばならないみたいに思ってそう。


ロッキン:正直、僕も小説ってそう言うもんだと思ってたんですけど。考えてみればそんなの、ごく少数の天才アイデアマンじゃないと無理な話だって冷静なってみたらやっと気づけた。案外盲点だと思う。


大澤:ね。ありったけのすべてを寄せ集めないと全然届かないから。


ロッキン:小説を書く時点で自惚れてるんだと思う(暴言)。みんな天才でありたいんです。


大澤:わたしはわりと「せや!(天啓)」って思い付いて、その勢いだけで短編を書いてはカクヨムに投げ捨てたりしてるんですけど、その短編たちがアイデアメモのかわりみたいに機能していて、いったんすべて砕いて、イケてるパーツだけを集めて再構成して長編に仕立ててるんです。だから、全部読んでいる人は書籍の中にわたしのカクヨムの破片をたくさん見つけられると思う。まあでも、わたしのカクヨムなんか誰も読んでないから全然バレないよ。


ロッキン:それ、真似します。計画が立てられない人は書いて切って繋げていくしかないのかも。


大澤:自分から盗作するのは合法だから。なんかよく「メモをたくさんとる」みたいな創作法あるじゃないですか? わたしはアレ全然ダメで、なにって、メモなんか見ても自分で意味分からないの。


ロッキン:ああ~。


大澤:『エンデのお前だよお前!(伝われ)』とか書いてある。伝わらない。


ロッキン:僕はまず映像が浮かんで、箇条書きやメモじゃ消えてしまいそうなので、もうそのシーンを書き始めちゃいます。どうやってそこまで行くのかはわからないけど、そうやって頭で遊ばせておいて背景を想像していく。


大澤:小説って文章なんですけど、でもやっぱり、最終的に表現したいことって文章では書き表せないことじゃないですか。言葉で書けないものを言葉で書こうとしているんだから、やっぱ短いメモとかじゃエッセンスが残らないんだよね。書き残せないものを書き残しておこうとするなら、ある程度の分量と展開はどうしても必要。


ロッキン:そこらへん皆さんはどうしてるんでしょうね。メモをフックにして頭の中に留めているのかな。


大澤:分からない。俺たちは雰囲気だけで小説を書いている。


ロッキン:分からない同士だから何もわからないぞこれ!

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