第64話 ヒント
真柴の瞳が薄闇の中でも判るほど、熱を帯びて輝き出した。
「お嬢、いずみさんの実家に電話をした時、ワンコの名前を名乗ったのか?」
「な、何でそんな事判るの?」
あたしは、真柴の言葉に息を吞んだ。
確かにあの時、あたしは咄嗟に忍の名前を口にしていた。
真柴は唇の端をきゅっと吊り上げると、自信に満ちた微笑を形作った。
「これで繋がった」
その微笑を呆然と見つめながら必死に考える。
あたしの言葉が、真柴に何かしらのヒントを与えたらしい。
一体あたしは何を言ったの?
非通知の電話?
そのキーワードにあたしは、はっとした。
佐々木さんの電話は非通知設定だった。
間違い電話も、脅迫電話も…
答えを求めるように瞳を覗き込む。
「誰がいずみさんを連れ去ったのか判ったの?
…やっぱり、佐々木さんが…?」
真柴は黙ったまま、さりげなく目を逸らした。
「あたしにも教えてよ。約束したじゃない」
しつっこく食い下がると、困ったように眉を下げる。
「判ったなんて一言も言ってねぇだろ」
「でも…」
真柴は大袈裟にため息を吐くと
「まさか、そいつの所に乗り込んで行く気じゃないだろうな」
「当然!相手が判れば、乗り込んで行く気よ!」
あたしが鼻息荒く答えると、あきれたような顔をして髪を掻きあげた。
「…まったく、とんだじゃじゃ馬だ…」
そう言うと、息を吞むほどに魅惑的な微笑をあたしに向けた。
「危なっかしくって、目が離せねぇよ」
とくん…胸の奥で鼓動が高鳴る。
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