第60話 望月家

「望月家は、代々城主を務めた家柄でかなりの資産家だ。

 当主の望月勝巳氏は、今は引退しているが地元で長年

 弁護士をしていた。

 職業柄、人の恨みを買いやすいんじゃねぇかと思ったんだが

 扱っていたのは主に民事事件で、特に大きなトラブルはなかったらしいな。

 性格も温厚で、人望も厚い。

 来年の県会議員選挙に出馬するって話もあるようだが

 まだ後援会も立ち上げちゃいねぇし、ライバル候補の嫌がらせって事も

 ないだろう。

 ――――8年前に病気で他界した妻の百合子さんも、生前は地元の婦人会の

 会長を務めたり、ボランティア活動を行ったり、かなり評判は良かったようだ。

 一人娘のいずみさんが聖ニコルに通うようになると、都内にマンションを買い

 二人暮らしを始めたそうだが、週末には必ず静岡に戻り、地域の行事にも

 積極的に参加していた。

 まぁ、非の打ち所の無い奥様だったみたいだな。

 その百合子さんが亡くなって、現夫人の早苗さんと再婚。

 早苗さん、勝巳氏と結婚する前は、ホステスをしてたって事は知ってるか?

 二人は20数年来の知り合いだったらしいぜ。

 弁護士会の会合で、東京に出張する事が多かった勝巳氏は銀座のクラブで

 早苗さんと出会った。

 …その店ってのが、おれも良く知っている処でな。

 明日の夜行ってみるつもりだが…」

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