第55話 警告
住宅街を抜けた先に、小さいけれど居心地の良いカフェがあった事を思い出し
繁華街とは逆方向へ歩き続けた。
なんだかすきっりしない気持ちを抱えたままで…
突然携帯が鳴った。
あわてて着信を見ると『非通知』の文字が。
「…もしもし?」
ちょっとの間のあと
「片桐さんですか?」
機械の様な、不快な声が問いかけてくる。
ボイスチェンジャー?訝しく思いながらも
「どなた?」
「これ以上、余計な詮索はやめろ」
冷たい”音”が続ける。
「命が惜しかったらな」
そして、唐突に電話が切られた。
なに?なんなの?
熱帯夜の、息の詰まるような空気に包まれているにも関わらず
全身に鳥肌がたった。
背筋を冷たい汗が伝う。
やっぱり今日はおとなしく帰ろう…
そう思い直し、踵を返そうとした瞬間―――――
キイッ、という急ブレーキの音に顔を上げると、さっきあたしを
追い抜いていった白いセダンが方向を変えて、こっちに近づいてくる。
いきなり、目も眩むような光に包まれた。
あまりの眩しさに顔を歪め翳した手の間から見ると、物凄いスピードで
光が迫ってくる。
危ない!
頭では分かっているのに、金縛りにあったように体が動かない。
嫌な汗が噴出し、口の中がからからに渇いた。
突っ込んでくる。
そう思った瞬間、強い力で腕を引かれ、そのまま地面に倒れこんだ。
あたしのスカートの裾を、セダンのボディーがかすめる。
車はそのままのスピードで走り去ってしまった。
何が起きたの…?あの車は、あたしを狙っていた!?
”命が惜しかったら”耳の奥に、機械音が鳴り響いた。
「怪我はないか?」
突然、傍らから聞こえてきた声に、飛び上がるほど驚いた。
見上げると、真柴があたしの横に立っていた。
「ほら」
差し出された手に掴まり、体を起こす。
足がガクガク震え、まともに立っていられなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます