第24話 継母

佐々木さんの声のトーンが落ちた。

「あれは、誰かの送別会だったか、社員旅行だったか‥

 はっきりとは覚えていないんですけど、一度だけ実家の

 話をしてくれた事があったんです。

 あの時は、珍しくいずみもお酒を飲んでいて、ちょっと

 酔っていたせいかしら?」

記憶を辿るように、ゆっくり話を続ける。

「実のお母さんは、いずみが高校生の時に病気で亡くなったそうです。

 それから半年もたたないうちにお父さんが再婚。

 あまりも早すぎるって反対したのに、強引に籍を入れてしまったって。

 いずみ、物凄く怒ってました」

父親の再婚。今まで考えてもみなかったけどあたしだったら、どうするだろう?

やっぱり…

おやじ様のためだと思っても、なかなか受け入れられそうにない。

いずみさんには、お母様との思い出があるのだから尚更だろう…

「それに…」

トーンはますます落とされた。

「その人、夜のお仕事をされていて、いずみのお父さんともお店で

 知り合ったらしいんですよ」

「―――――…」

あたしが黙り込むと、佐々木さんは少し決まり悪そうな顔をして

思い出したように

「そうそう、実家の電話番号でしたね。人事に行けば

すぐに分かると思いますので、ちょっとお待ち下さい」

そう言うと、足早に部屋を出て行った。

ひとり残されたあたしは、佐々木さんから聞かされた話を

思い返しながら、帰りを待った。

いずみさんとお母様は、いわゆるさぬなか

おまけに、あまり良好な関係とは云い難いらしい。

これじゃ、いずみさんが実家に戻っている可能性は

限りなく低いんじゃないのかしら…

知らず知らずに、ため息が零れた。



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