第21話 quatre raisans(2)

キャトル・レザンは<四粒のぶどう>という意味のフランス語で

創立者の四人にちなんでつけられた名前だと聞いている。

岩井のおじ様、おやじ様、かあ様…そしてもう一人は―――――

大学卒業後、別の企業に就職してしまったと…

それが、真柴涼の父親、司だったなんて。

おじ様に背中を押されて、またゆっくりと歩き始めた。

「真柴建設は、司の曾爺さんから代々続いてたからな。

 長男のあいつが跡を取らざるを得なかったんだよ」

「あの、もうひとつのお仕事の方は…」

ん?という顔をした後、ああと頷いた。

「そっちはもっと歴史があるね。司で7代目だったかな?

 抗争事件とか起こすような組じゃないし、『善良なやくざ屋さん』

 てところだな。まあ。安心しなさい」

そう言って、ウインクをした。

おじ様らしい、茶目っ気たっぷりの言い回しとぎこちないウインクに

思わず吹きだしてしまった。

「涼くんには、私も会った事があるが、若いのになかなかしっかりしている。

美月ちゃんとも、お似合いだと思うがね」

「おじ様。あたしはまだ17歳ですよ!結婚なんて考えられません!」

あたしが、わざとふくれっ面で睨むと、大きな体を揺らしながら笑った。




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