第18話 反撃

驚いて振り返ると、真柴が険しい顔であたしを見下ろしている。

バンと大きな音を立て、あたしの体を挟むように、両手をドアに付いた。

「どういうつもりで、ここに来た?」

「あの、ごめんなさ…」

あたしが、謝罪の言葉を口にしかけた時

「まったく、探偵ごっこなら他所でやってくれ。面白半分に

 騒ぎ立てられちゃ、迷惑だ」

その言葉にカチンときてあたしは、真柴を睨みつけた。

「面白半分なんて失礼だわ!忍は本当にいずみさんの事を心配しているのよ」

「お嬢様のお遊びに付き合ってる暇はねぇんだよ。

 少し痛い目みないと、分かんねぇか?お嬢ちゃん」

そう言うと、目を細め、意地の悪い笑みを浮かべた。

男にしては繊細な指先が、あたしの頬から首筋を伝いなぞる。

嫌な奴!

あたしは思い切り、真柴の足を踏みつけた。

「つっ…」小さな声が漏れる。

体が離れた隙に、細く開けたドアをすり抜けるように

いきおいよく廊下へ飛び出した。


「美月、大丈夫?」

ドアの前に立っていた花菜子が、よろめいたあたしを支えてくれた。

「帰ろう。こんなトコにいたって時間の無駄だから」

あたしが、強張った顔で言うと、駆け寄ってきた忍が項垂れた。

「お嬢ちゃん」

ドアの間から体を半分のぞかせ、真柴が苛立たしげな声を上げる。

「これ以上、余計な首を突っ込むなよ」

「行こう」

あたしは、その言葉を無視して二人の背中を押した。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る