第12話 急展開
なんなの、この展開は?
あたしは、電話番号を調べてあげると言っただけで…
「その男が、お姉様を拉致したんだと思うの」
はぁ?訳が分からない。
「だったら、最初から、彼氏に電話して聞けばいいじゃない」
花菜子が、もっともな事を言う。
急に、忍がしょぼんとした。
「それが…前に、お姉様から写メ見せてもらっただけで
会った事もないのよ…だから連絡先も分からなくって…」
「何それ…」
「あ、でも勤め先は知ってるの。だから今から会いに行って
直接聞き出そうかと…」
もう、付き合い切れないわ。
あたしは、忍の手を振り払うと、帰り仕度を始めた。
「会社の場所も調べたから、うちの車で行きましょう」
花菜子も呆れ切った顔をしている。
この場の空気が読めていない忍が、ひとりしゃべり続ける。
「真柴建設って知ってる?そこの営業やってる人みたいなの」
あたしの手が止まった。
真柴って…あいつの会社だ。
たしか、『副社長』って言ってた。
あたしが口を開く前に、花菜子が返事をしていた。
「行きましょう!」
「花菜子!」
あたしは、忍に「ちょっと待ってて」と言うと、花菜子の
手を引っ張って、部屋の隅に移動する。
「今の話、どう考えたっておかしいでしょ?何で彼氏が自分の恋人を
拉致するのよ」
「さあね」
さして興味なさげだ。
「百歩譲って、忍の言う事が本当だとしてもそんな男が普通に
会社に来てると思う?」
花菜子は、いきなり忍の方を振り返ると
「忍さぁん。その男、会社に来てるのかしら?」
と声をあげた。
忍は胸を張るようにして答える。
「それなら抜かりないわ!さっき電話で問い合わせたら夕方には
外回りから戻るそうよ」
花菜子が、にやりと笑った。
「あたしは、行かないわよ」
そっぽを向くあたしに、そっと耳打ちする。
「別にいいのよ。私と忍の二人で行ってもね。
でもねぇ、私おしゃべりだから、あんたの婚約者にある事ない事
いろいろ吹き込んじゃうかもぉ」
「単に、真柴が見たいだけなんじゃないの!」
人の弱みにつけ込んで…悪魔!!
「で?行くの?行かないの?」
「分かったわよ。行けばいいんでしょ、行けば!」
精一杯の抵抗として、涼しげな顔をして澄ましている花菜子を睨みつけた。
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