二、消えない歯型

ーーー

 ──ぐにゃり。

 視界が歪む。

 景色が曲がる。

 世界が捻れていく。


 ……あぁ、またか。

 あの日以来、私はこの景色を何度も見る。

 これは夢。

 これは私の世界。

 全てが捻転し、歪んだ──私の世界。

 いくら私が人の世で生きようとも、いくら私が人と関わっても、いくら人のふりをしようとも……何も変わらない、変われないと、そう言うみたいに私が見せる、私への戒めであり、私の罪そのもの。

 昔は、なんとも思わなかった。

 なんとも、思えなかった。

 ただ、今は、酷く──息苦しい。

 苦しくて、苦しくて──逃げるように目を覚ましてしまう。


 私は、化け物だった。

 化け物だった、人なんだ。

 そうなりたいと、思ったんだ。

 でも、私が、許してくれない。

 私だけじゃない。

 私が傷つけた彼らも、私を傷つけた彼らも、私を許してくれはしないだろう。

 けれど、許して欲しいだなんて、思ってもない。

 これは、私が背負うものだから。

 私が背負わなければいけないものだから。

 罪も、罰も、傷跡も、この身体も全部、全部、全部──


 私の、ものだから。


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