第7話 セイシュン
放課後、約束通り部室へと向かう。
折角なので途中で購買に寄り、お菓子を買った。
あくびをしながら部室への道を歩く。
楽器を持った人やランニングしている人、歩きながらおしゃべりしている人達。いろいろな人達が俺の横を通り過ぎて行った。
通り過ぎて行ったどの人も今を楽しんでいる様に見え、その場で俺の心だけが死んでいた。
そんなことを考えながら歩いていたらいつの間にか部室棟(部室がある建物なのでそう呼ぶことにした)に着いていた。
「よし」
部室のドアをノックすると「どうぞ」と声が返ってきたのでゆっくりとドアを開ける。
「あ、四葉くんか。こんにちは」
「うっす。……誰か来る予定でもあったんですか?」
「ん?ああ、違います違います。ノックなんてするからお客さんかと思ったんですよ」
「ああ、なるほど。じゃあ次からはノックせずに入りますね」
春宮さんは顎に手を置き一瞬何か考えていたようだが、すぐに答えに辿り着いたようだった。
うんうん頷きながら
「そうしてください」
と言った。すごく嬉しそうにしているのは気のせいだろうか。
俺には何のことか分からないので首を捻っていると「気にしないで」と言われてしまった。
とりあえずイスに座ることにした。
「ねえ、四葉くんは青春って何だと思いますか?」
「と、唐突ですね」
唐突にして何の脈絡もなく――いやここは一応青春部だから何の脈絡もないってわけではないけれど――春宮さんはいつになく真剣な顔でそう聞いてきた。
『青春』とは何かと聞かれると正直分からない。
例えば恋愛。まあ、確かに青春っぽいけれどここで言うのはなんか恥ずかしいな。
例えば部活。これも一応部活のはずだが……青春感がゼロである。そもそも青春を謳歌しようって部活だからなぁ。
そうだなぁ……
「友達とかですかね。よく分からないですけど」
と言ってみたもののなんだかこそばゆい。
「友達……ですか。なるほど」
「いや、俺の個人的な意見なんでそんな鵜呑みにしないでくださいね」
「いえ、四葉くんの意見だからいいんです」
「はい?」
春宮さんはコホンと咳払いすると勢いよく立ち上がった。
「今日から私と友達になりましょう!」
部屋に春宮さんの声が反響していた。
もっとふわふわしている人かと思っていたが熱血タイプだったのだろうか。
よくわからないが友達という響きは悪くない。
が、俺の口から出たのは
「は?」
の一言だった。
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