第4話 笑顔満開
「どうしてここに?」
「君こそ……」
「なんだ、お前達知り合いだったのか。ならいいや説明は部長からしてもらえ。じゃあなー」
担任は手をひらひら振りながら部屋から出て行った。
「ちょ、ちょっと!待ってくださいよ先生!」
「なんだ?」
担任は面倒くさそうな顔で振り向くと、じろっと俺を見た。
「ちゃんと説明してください。全く意味が分からないんですけど」
「お前、部活もバイトもしてなかっただろ?このままつまらん青春を送るかと思うと可哀想になってな。それに友達も少ないようだし。だから部活に入れてやった」
「余計なお世話すぎる……」
「後悔するよりはいいだろうが……俺はしたからな」
懐かしそうに、寂しそうに話す担任に俺は呆気に取られてしまっていた。
「まあ、やめたくなったらやめればいい」
担任はそう言って去って行った。
一人廊下に取り残された俺は、そのまま廊下にいるわけにもいかないので、少女のいる部屋に戻ることにした。
戻ると少女は木製の振り子椅子に腕を組んで座っていた。
怒っているようには見えないが、感情を表に出さないという人もいるのでここは用心深く探っていこう。
「あの……」
「ようこそ青春部へ!」
少女は突然立ち上がると満開の笑顔でそう言った。
「は、はあ。……青春部?」
怒ってはないようなので一安心。
聞いたことがない名前だな。聞いた限りだと胡散臭い名前だが。
「青春部と言うのは青春を謳歌出来なさそうな人が集まって折角だから青春を謳歌しようって部活なんですけど……御崎(みさき)先生に認められた人じゃないと青春部には入部できないきまりになっているんです」
「つまり俺は認められたって事ですか」
「その通りです」
御崎先生というのはさっきまでいた俺の担任である。三十前後のおっさんだ。
なぜ担任――御崎先生がそんな権限を持っているのかは不明だが、青春部への加入が認められたのはおそらく不名誉なことだろう。
まあ、青春を謳歌出来ないのは薄々分かってたからいいんですけどね。
「具体的には何をするんですか?」
「え……?具体的?うーん……」
俺が質問をすると少女は腕を組んで唸り始めてしまった。
「決まってないんすか」
「い、いや!決まってますよ!そうだなぁ……遊びに行くとか?」
「なんで疑問形なんですか。絶対今考えましたよね」
俺が余計なことを言うと少女はまた悩み始めてしまった。
これでは埒が明かないので俺はわざとらしく咳払いをして続ける。
「先生もやめたくなったらやめればいいって言っていたのでとりあえず入部してみますよ」
「ほんとですか?やったー!」
少女は心底嬉しそうに喜んでいた。
この笑顔が見れただけでも入部してよかったと思ってしまう自分がいて、少し体温が上がった。
誰が見ても可愛い女の子の笑顔を見れるだけでも幸せだ。御崎先生、今日だけは感謝しとくぜ!
少女は突然何かを思い出したように「そうだ」と口にして、微笑みながら俺を見る。
「一年の
「一年の
俺達は互いの名前を知り――握手を交わしたのだった。
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