第3話 縁は切れない
翌日――
行く気はなかったのだが、教室にいるよりはマシだと思いお気に入りの場所に行くことにした。
「なんでいるんすか……」
予想通りと言うか、やはり亜麻色の髪の少女はそこにいた。
俺のお気に入りの場所だったのになぁ。
少女は少しムッとしたような顔で俺を見てくる。
「なんでって昨日『また明日』って言いましたよね?覚えてないんですか?」
「いや、それは覚えてますけど……そうではなくてですね」
「もしかしてお邪魔でしたか?」
はっきりしない俺の受け答えを遮ると泣きそうな顔で聞いてきた。
反則だ。
そんな顔をされたら邪魔なんて言えるわけない。女の子の涙に弱いで有名などうも俺です。
「いえ、そんなことは……」
僕がこう言うと、少女はにこりと心底嬉しそうな顔で笑うのだ。
「だと思いました。邪魔だったらわざわざ来ないですもんねー」
「…………。早く食べないと時間なくなりますよ」
別に期待していた訳ではない。ただイラっとしただけだ。それが見透かされたからなのか、はたまた他に理由があるのかは自分でも分からない。
これも人付き合いをしてこなかったからなのだろうか。
「あ!そうだった!早く食べましょう!」
少女は慌てて弁当を取り出すともぐもぐ食べ始めた。
食べながら少女は空いている自分の横をトントンと叩く。どうやらここに座れということらしい。
勧められたら断るわけにはいかないので仕方なく少女の横に座った。
「美味しいですねー」
「いや、あなたの食べてないんで知らないですけど」
少女は少し考えると、
「じゃあ食べてみますか?」
と言ったのだ。
「……いや、遠慮しときます」
「私の弁当が食べれないというのか!」
「えぇ……それパワハラで訴えられるやつですよ」
少女はあははーと笑っていたが大丈夫なのだろうか。正直やりそうで怖いぞ。
俺はビクビクしながら弁当を食べ進める。あの目は本気だった。ヤバい目だった。
また退屈な授業が始まる。
五限の一番眠たい時に数学なんてやるものじゃないだろうと内心で文句を言いながらノートを取る。
何も理解はしていないが取らないよりはいいだろう。
今にも意識が飛びそうだがなんとか耐えるしかない。
――――。
気づくと授業は終わっていた。なんなら六限も終わっていた。
いつの間に終わったんだ……六限が何の授業だったかも覚えていない。ノートには何か書いてあるが読めたものではない。
まあ、いいか。
帰りのホームルームも終わり、帰ろうと教室を出ると担任に声を掛けられた。
「少しいいか?」
「別にいいですけど……労働だったら帰りますよ」
「労働じゃないから安心しろ」
担任は苦笑しながら歩き出す。
「ついてこい」
そう言われ「へーい」と適当な返事をしながら担任について行く。
授業が行われている本校舎を出てしばらく歩くと、小さな建物が見えてきた。
小さいと言っても本校舎より小さいだけで普通にデカい。ビルを横倒しにしたような横長の建物である。
「ここだ。入るぞ」
担任は迷いなく建物の中に入って行く。
俺は担任に続いて足を踏み入れると世界がガラリと変わった。
音がしないのだ。静寂に包まれるとはこういうことかと思ってしまうような静けさだった。
階段で三階まで上がりさらに奥へと進むと扉が見え、担任はそこで止まった。
「ここは?」
「まあ入れ」
聞いても答えてくれないのは謎だが言われた通り扉を開け、その部屋の中に入った。
部屋の中には目を見開いた亜麻色の髪の少女がいた。
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